―――現実g
現実g-1
また早く起きすぎてしまった。スマホを見るとまだ6時前だ。日課の体操を終えると竹刀を持って庭にでる。今度の武器はファルシオンより竹刀に近いだろう。イメージしながら丁寧に素振りを行う。100本終えるともう6時半だシャワーを浴びてると母さんが弁当を作っていた。
「おはよう、美弥子もう起きてるかな?」
「まだね。あの子はゲームばっかりして、少しは達哉を見習えばいいのに」
やはり、まだ寝てるか。昨日の封印解除に参加して寝落ちコースだろう。色欲の封印だっけか。考えるのも面倒なので起こすことにする。
「おい、美弥子、朝だぞ起きろ!」
スマホを握りしめ、だらしない寝相の美弥子をゆすり起こす。中々起きないなコイツ。肩を持ち、強引に揺さぶるとようやく目を覚ましたようだ。
「うゆぅ、あにぃどうしたのこんなに早く……」
「お前に聞きたいことがあったから起こしたんだよ。夜の封印解除やったんだろ?」
「やったよぅ、またスマホの画面や周りが割れて、そんで寝ちゃったみたい」
また割れるか、確か、ノリが2時頃と言ってたし、昨日は昼をすぎてしばらく虹を見ていた頃だったから時間は合うな。
「もう、朝飯の準備出来てるから、早く顔洗ってこいよ」
伝えると美弥子はもぞもぞと起きだした。だらしなく感じるのは最近早起きが身に着いたせいか。食卓には豆腐の味噌汁に焼き鮭、ご飯に納豆、まさに日本の朝といった感じのメニューが並んでいた。父さんも席についている。ほどなくして美弥子が顔を洗って席に着いた。
「いただきます。ねぇ、あにぃ、彼女さんとはどこまでいったの?」
朝から何聞いてるんだコイツは。
「そんなの答える義務ないね」
「えぇ~、気になるよ~。まさかもう一緒のベッドに入っちゃったり……キャッ! ねえねえアレってどんな感じなの?」
その時父さんがテーブルを叩き怒った声で言った。
「美弥子! お前が興味を持つのは早すぎるぞ! 父さん許さんからな!」
父さんが美弥子を叱るなんて何年ぶりだろう。美弥子はしゅんとしている。相当答えたのだろうか?
「俺はやましいことは何もしてないぞ」
キッパリと拒否をする。父さんは大儀そうに堂々とコーヒーを啜り、母さんはやれやれといいたそうにこちらを見る。なんだか居づらい、さっさと朝食を平らげ学校に行こう。
電車内ではスマホをいじる人達がやたらと目立った。まさかこの人達全員アーマゲドンオンラインをやってるんじゃないか、と不安になる。いくら流行りのゲームでもそんな訳ないか。
学校に着くとなんだか違和感を感じる。やたらと男女が話しているのが目に付くのだ。ウチのクラスこんなに男女の仲良かったっけ? 考えていると後ろからドサリという重い音の後、声をかけられる。
「おはよう、今日は随分おかしなことになってるわね」
新堂か音はコンビニ袋に入った手紙の束だった。
「おはよ、それなんだ?」
「ああ、これね。今どきラブレターの束。下駄箱に詰まってたわ」
ラブレターなんて久しぶりに聞いた。SNSのメッセージで済ませればいいだろうに。
「お前意外にモテるんだな。そんなにもらうなんて」
「私、必要以上にSNSのID教えないからね。校門から教室入るまで2度もコクられたわ」
きっと新堂の見た目に騙された哀れな奴らだろう。
「来栖も随分告白メッセージが来たみたいよ。急にどうなってんのかしら」
「それ、今朝から? 来栖先輩がモテるのはわかるけどさ」
「なんか朝練中スマホ止まらないみたい。陽菜は無縁そうね」
流石だな来栖先輩、新堂を遠ざけてから、別れたって噂があったけど、その後釜を狙ってってことか?
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