夢g-13

 宿に戻りブルゾンをコートかけにかけるとベッドに入る。早めの就寝だが、今日は新装備も揃い、戦力も上がった。明日からが楽しみだ。明後日のダンスパーティーはちょっと不安だが、また着飾ったニジエを見れるのは嬉しくもある。プレゼント喜んでくれるといいな。


「大丈夫、きっと喜んでくれるの」


 ……またか、もう慣れた。グリゴリさんが来たか。見ると今日はブロンドのロングヘアーに黒いローブを身につけている。見た目は20歳前後の西洋人のような彫の深い美人姿だ。


「こんばんは。3つ目の封印が解けたから随分自由になってきたの、それを望むかどうかは別としてね」

「封印ってあのパリンッて音ですか?」

「随分解ってきたじゃない、上手くいかなければ、これからもっと頻繁に聞くことになるわよ」


 どういうことなんだ? 上手くいかなければとは?


「こっちの話よ。今は気にしないで、今夜はケルベロス退治おめでとうって伝えにきたの」

「本当にそれだけですか?」

「疑い深いのね、私とは踊ってくれそうにないわね」


 こんなわけのわからない存在と踊るなんてゴメンだ。


「あら、酷い、ちょっと傷ついちゃう。もっとも、まだ伝えることはあるんだけど」

「なら、手短にお願いします」

「貴方達が持ってるアレ、アレは危険な物よ。これから先、封印が解ける速度はもっと早くなるわ」


 アレってなんだよ。グリゴリさんの言うことはイマイチ要領をえない。


「またとにかく頑張れですか?」

「それもいいんだけど、それ以上に楽しみなさい。それが出来るうちにね」

「今度は楽しめですか。またよく解らないことを」

「そのままの意味よ。空っぽの人」


 グリゴリさんはクスクスと笑う。


「なんか企んでるんですか?」

「企んでるというより、ただ止めたいだけよ。それには力が必要なの。色々と」

「力なら来栖先輩のとこに行けばいいじゃないですか」

「それはちょっと無理かな。あの子は器が大きいけど底は見えてるもの、その程度じゃ到底無理ね」


 来栖先輩の器? 底が見えている? どういうことだ?


「貴方には幾つかの道がある、どれを選んでも良い、恐らく最も選択肢を選ぶ権利を与えられてるの。貴方は幸福な人だから」


 また意味深なことを言う。どういうことなんだ?


「では、おやすみなさい。束の間の安息に浸るといいの。幸福で、それでいて空っぽな人」


 それだけ言うと、また消えてしまった。何なんだろう今度は幸福な人と来た。せっかくいい気分で寝れそうだったのに、気分を切り替えよう。布団を抱き枕の代わりにして眠りにつこう。そう言えばアーマゲドンオンラインの封印解除も今夜だったか。どうも封印と言う言葉に縁があるようだ。明日の朝、美弥子か、昼にでもノリに聞いてみよう。この寝心地だけは幸福な気がする。意識が浮き上がっていく感触、現実に戻るのか。明日は少しは悩みが減ると信じて。



―――悩みなんて増えるばかりで減ることはあるのか?―――

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