夢g-12

「こ、こんなとこ男が入っていいもんなのか?」

「俺が知る訳ねーじゃん、待ってた方がいいんじゃね?」

「いや、お前は入らなきゃダメだろ。レベッカにドレス買う約束してんだし」

「なんか嫌な予感しかしないじゃん」


 入口でまごついても仕方ない。入ってしまえば案外何とかなるだろう。柊をつれて店に入るとマネキンに飾られたドレスと様々な布が飾られている。レベッカとニジエは赤いドレスの飾られたマネキンの前にいた。近づいて見ると首元だレース状になっており、肘までかかる白い手袋も光沢を放っているシルク製かな? 随分値段が張りそうだ。


「これこれ~、実はこのドレス仕立てる時、私がモデルやったんだよ~」


 なるほど、レベッカは最初からこのドレスを狙っていたのか。直しが必要無いなら多少は安くなるのかも。


「あと、シューズとね、あ、このドレスなら象牙のブローチもアクセントに欲しいかな~」


 レベッカはわがまま放題だ。柊は虚ろな目をしている。アイツ財布を空にされるんじゃないか? ふと気づき、ニジエを見る。ニジエは布を見ているようだ。


「ニジエはドレス見ないの?」

「私は家にたくさんありますから」


 買ってあげるの一言が言えないのが悲しい。よく見るとアクセサリーも売ってるようだ。銀製の百合をかたどったのブローチが目に入る。100オーロか、緻密な作りだしこれくらいはするのだろう。そうだ、これをプレゼントしよう。コッソリ店員に伝え代金を払いプレゼントラッピングをしてもらうと、俺はニジエに気づかれないように、道具袋にしまった。柊はバレッタを選ばされている。アイツ大丈夫か?

 結局、柊は700オーロと高級防具並みの金額を支払っていた。ギリギリ宿代くらいは残るだろう。ニジエは布を見ているだけでなにも買わなかった。どうやら気にいったドレスは無かったらしい。思えばドレスはどれも胸が大きめのサイズだった。ニジエにはサイズが合わなかったのだろう。それを口に出すほど野暮でもない。そう言えば気になることがある。


「ニジエ、家あけて大丈夫だったの?」

「どうも兄さんは帰って来なかったみたいなんです」


 城での魔術師というのはそんなに忙しいものなのだろうか? 少し不安だが、城内なら問題ないのだろう。もしかしたらダンスパーティーで会うことになるかもしれない。マナーには気をつけよう。現代とは違うだろうが、ネットで下調べしておけば幾分マシだと思う。今日はアマントの前で解散となった。今晩は金も無いし真っ直ぐ宿に向かう。青銅の蹄で新堂にあったら、たかられるのは間違い無いだろう。

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