現実k-8

 家に着くと、出迎えたのは美弥子の罵声だった。


「おかえりっ! 二股あにぃ! あにぃはずるいよ。なんで2人も彼女作ってんの。アタシは彼氏いないのにさ」


 家でまで嫉妬の言葉を聞くことになるとは。俺は無視して風呂に向かう。美弥子も被害者なのだろう。ふと考える。そういえば父さんや母さんは巻き込まれていないのだろうか。アーマゲドンオンラインの情報は美弥子から聞いてるはずだし、父さんはともかく母さんは夢の世界で生き残れるとは思えないし、それにしては何の影響も受けて無いような気がする。この差は何なんだ? また疑問が増えそうだ。早すぎる風呂なので今日は入浴剤の入って無い風呂につかりながら考える。まるで両親だけ守られているようだ。なんとなくグリゴリさんの顔が浮かぶ。まさかな。風呂から上がると美弥子が待ち構えていた。また罵声を浴びせる気か。


「あにぃ、どうすれば彼氏できると思う? アタシも彼氏の2、3人欲しいよ」


 昨日はりょう君とやらの3股を非難してたのにこれか。影響は思ってたより深刻なようだ。なんとかしたいが手段が思いつかない。無視して部屋に入ると、気になることでネットで調べられることはなんでも調べてみよう。まず、自分の剣のことから、ジュワユーズと。ウィキペディアにも載ってる有名な剣だ。写真も載ってるが俺が持ってるのとは少し違うな。大きさが違う気がする。写真は片手剣だが、俺が持ってるのは両手剣だ。あの剣は俺専用だからという訳か。他にも来歴なども乗っていたが、特に気になる事は無いな。カール大帝がどうとかシャルル・マーニュ伝説とかは今はどうでもいいだろう。後は7つの大罪についてか。対応している化け物についてよく見ると気になることが出てくる。強欲はゴブリン、暴食はケルベロス、色欲はサキュバスか、どれも倒したモンスターだ。すると嫉妬はマーメイドになるのか? あんまりモンスターらしくないな。だが、いるのなら倒した方がいいのだろう。魔法陣のことも気になる。魔王の召喚と繋がっているなら、これも潰さなくては。もしかしたら暴食の魔王召喚の魔法陣は虹江の起こした爆発で吹き飛んだのかもしれない。流石に今からバルナウルに確認に行くのは厳しいだろう。恐らく丸1日はかかるに違いない。なら、今は嫉妬の魔王の魔法陣を潰した方が良さそうだ。嫉妬の魔王レヴィアタン。海の王か、なら、目指すは海方面だな。これは新堂に提案しても良さそうだ。

 そんな事を考えていると下から母さんの呼ぶ声が聞こえてくる。夕飯の準備が出来たようだ。食べておくのも重要だ。今日は豚の生姜焼きか。味はいつもより美味しく感じる。相変わらず美弥子はうるさいが、もうスルーしよう。大切なのは今夜だ。母さんと父さんの様子は変わったようには見えない。ここで下手にアーマゲドンオンラインって知ってる? などと聞いてしまうのは悪手だろう。手早く食事を終えると部屋にもどりベッドに入る。まだ眠くはないが、こうしてベッドに入るだけでも疲労は少しはマシになるだろう。新堂からメッセージが来た。9時に夢の中でか。虹江には連絡済みらしい。少し残念だが、万が一優さんにバレても女性同士なら、そうカドもたたないだろう。目を瞑ると色々なことが頭をよぎる。特に強いのは優さんとグリゴリさんのことだ。特にグリゴリさんは何かを知ってるだろう。今夜こそ会わなければ。向こうは姿を現してくれるだろうか。今度はこそ質問に答えてもらおう。気づけば、もう8時半だ。そろそろ夢の世界に入っておこう。そう考えると急に眠くなる。また落ちていく感覚。さあ、時間だ。夢の世界に向かおう。



―――今までは楽しむ為だった。これからは挑む為だ―――

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