現実h-2

「さあ、ホームルームの時間よ。みんな席に着きなさい」


 その声で皆渋々といったように席に戻っていく。俺はこれ以上不毛なやり取りをしないで済むと落ち着き、教師の入ってくる姿に安心する。今日は真面目に授業受けようかな。もっとも、物理は苦手なのだが。

 授業が終わり、一段落すると後ろから新堂の小声がかかる。


「アンタ、もうちょっと恋人らしくしなさいよ。こんな態度じゃバレるでしょうが」

「仕方ないだろう。今まで彼女いたことないんだから」

「私も彼氏なんていたことないわよ。いい、フリをしなさい。私を好きになってるフリよ」


 気が遠くなりそうだ。新堂に彼氏がいなかったのは来栖先輩の影響だろう。仮想彼氏がいた新堂とは訳が違う。


「とにかく、今日の学食は一緒ね。浩二さんからも話し聞かないと」


 バタバタして忘れるとこだった。鈴木先輩からこっちでの話しも聞かなければ。英語教師が入って来ると新堂は急いで席にもどる。そう言えば、あの世界では日本語が使われてたな。都合がいいが何故だろう? 考えても答えが出ないか。

 昼休みになり、新堂と共に学食へ向かう。柊はいつものように席を取っていたが、今日は別で食べると言っておく。新堂も俺も弁当派だ。しばらくすると、角刈りの体格のいい人が入って来た。いつも兜を被っていて分かりづらかったが、鈴木先輩のようだ。


「浩二さん、こっちこっち!」


 新堂が呼ぶ。鈴木先輩は購買部でパンを買ってきたのか、手には4つ程のパンを持っていた。


「おっ、香苗に達哉くんね。こっちで会うのは初めてだな」


 いつもあってるのに奇妙ば感覚、こっちで会うのはか……


「それで、急で申し訳ありませんが、鈴木先輩はアーマゲドンオンラインをやってないって本当ですか?」

「嘘つく必要も無いしな。部員はみんなちょこちょこやっってるみたいだけど、部長もハマってるからあんまり文句言えないしね」

「あっち行った時びっくりしませんでしたか?」

「俺は倒れてるとこ、来栖先輩に助けられたからな。そんなにでもなかったよ」


 かなり運が良かったんだな。


「ついでに言うと浩二さん、私達と同じ日に来たわ」


 24日前か。強欲の封印解除の時だ。鈴木先輩は美味そうに焼きそばパンを食べている。出来ればまだ聞きたいことがあるんだが……気にせずいっそ聞いてみるか。


「鈴木先輩、あっちの世界に入る前、こっちでなんかありませんでしたか?」

「現実でか。確か同じ部の奴がゲームがどうのって大騒ぎしてたくらいだな」

「それいつ頃ですか?」

「確か一ヶ月前くらいだったかな」


 妙なデジャブを感じる。新堂に聞く。


「新堂。お前の周りでゲームではしゃいでる奴いたか?」

「確か、みぃ子がなんか言ってたような。これも一ヶ月くらい、前ね」


 俺と柊の時はノリだ。だけど柊とタイムラグがあるのはおかしい。


「来栖先輩はどうだろう?」

「呼ぶ?」

「そこまでは迷惑だよ」

「気にする事無いわよ。どうせ学食来るし」


 そういえば見かけたことあるな。あんまり気にしてなかったが。

 新堂はSNSでメッセージを送ると、しならくして弁当箱を3つ持ってきた来栖先輩が入って来た。

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