現実h-3

「来栖、なにそれ?」

「いや、女の子達がお弁当作ってきてくれたみたいでさ。断るのも悪いし、貰って来たんだよ」


 半端ないモテっぷりだな。もはや嫉妬も沸かない。


「で、何の話?」

「来栖先輩の部でゲームの話ししてた人いませんでしたか?一ヶ月前くらいに」

「ああ、いたよ。アーマゲドンオンラインだろ? 世界が割れる感覚がしたってはしゃいでたな」

「来栖、それいつ?」

「スマホ版始まる前だから、20日は前だな」


 なんとなく見えてきた。後は柊か。俺は挨拶し、席を柊達の方に移る。


「柊はアーマゲドンオンラインの情報っていつ聞いたんだ?」

「あれは、ノリ達が騒いでた時だから、悠紀夫が始めた時と同じくらいかな」


 トリガーが見えてきた。しかしそれだともっと大勢向こうに行った人間がいてもいいはずだが。今のところ解っているのはアーマゲドンオンラインの情報を持ち、尚且つプレイしていないことか。あまりにザックリしすぎてるな。目の前のノリが牛丼を食べ終わり話す。


「そんなに気になるなら陽もやれよ。彼女といちゃついてばかりいないでさ」


 別にいちゃついてる訳じゃ無いんだが、言われてみればもっともな話しだ。


「気が向いたらやるさ」

「早く始めろよ。次の封印解除は今までより早めみたいだからな」


 もうか、グリゴリさんの話が頭をよぎる。これから先封印解除は早くなると。これも関係してるのだろうか? 一通り話し終えると昼の終わりを告げるチャイムがなる。さっさと帰るか。それにしても校内中カップルが目立つ。まるで見せつけるかのようだ。なんか急に増えたな。

 午後の授業は全く耳に入らなかった。鈴木先輩、来栖先輩、新堂、俺はは同じ頃アーマゲドンオンラインについて聞いている。柊はその後だ。そしてプレイはしていないということ。これはどういう事なんだろう? ニジエは多分誰よりも早く聞いて、1番初めに行ったのかも知れない。だが、最後のトリガーが解らない。これ以上は考えても無駄なのかも。放課後、新堂の前でプレイしてみるのもアリかも。それでわかることがあるなら御の字だ。

 気付くと授業は終わっていた。いつもの練習場に向かうか。

 着くと新堂はまだ来ていない。いいか、面倒なこと言われる前にアーマゲドンオンラインをプレイしてみよう。見た目は普通のソシャゲっぽいな。『汝、自らを贄とならんや』ここに名前を入れるのか。その瞬間、頭が割れそうに痛む。腹から吐き気がせりあってくる。なんだこれ? こういうもんなのか? そんなら誰もプレイしなさそうな気がするが。もう一度試す気にはなれず肩で息をしていると、新堂がきた。


「アンタどうしたのよ! 何があったの!」

「ちょっと気になって、アーマゲドンオンラインをやってみようと思ったんだ。でも、吐き気と頭痛がしてできなかったよ」

「そんな危険なゲームなんてあるの? みんな夢中なのに」


 問題はそこだ。美弥子なんて今の感覚、耐えられる訳ない。


「私が試してみる?」

「いや、やめとけよ。ぶっ倒れたら大変だぞ。それに、最悪、夢の世界に行けなくなるかもしれない」

「なにそれ? 関係ありそうなの?」

「分からない、だからこそ手を出しちゃいけないと思う」

「それはわかったけど、その状態で練習できるの?」

「しばらく休ませてくれ」


 床に腰を下ろし、休む。胸やけまでしているようだ。ゲームをプレイしようとしただけで、あんなになるなんて。明らかに異常だ。

 ようやく落ち着くとダンスの練習に入る。


「今日はシャッセの基本をやるわよ。もし、左足に立っているときに身体を左真横に移動させていくと、どうなると思う? 右足は左足に寄ってくわよね。そのまま胴体を左真横に移動させなさい。何もしなければ倒れちゃうでしょう。そうならない為には自然と右足に重心が移り、そして左足がステップするの。これがシャッセの元よ。ポイントは、真横に移動ってとこね。もし、胴体を斜め前に移動させていくのであれば、右足は左足を超えて前進するし、斜め後ろに移動させていれば、右足は斜め後ろに後退するでしょう。シャッセは、立っている足に反対の足がぶつかるよう、横に身体を運んでみなさい。自然にシャッセができるから」


 なんだかややこしいなシャッセ。


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