―――現実h
現実h-1
朝起きると股間に見事なテントが張っていた。あんなこと考えて寝たからだろうか。スマホを確認するとアラームまで後少しの時間しかない。変な事はせずに毎朝の体操を行う。今日は素振りをする時間は無さそうだ。シャワーで軽く汗を流し、食卓に向かう。今朝はパンか。美弥子が席に着き一緒に朝食を採る。トーストをパクつきながら。美弥子は言う。
「あにぃ、結局彼女はどっちなの?」
「だから、どっちも彼女じゃないんだって」
「アタシは抱き合ってた女の子が本命なんじゃと睨んでるんだけどな~」
「あれはダンスの練習だって言ったろ? お前、話し聞けよ」
「そんなん嘘だよ~、あ~あ、いいなぁ。アタシも素敵な彼氏ほしいぃ~」
美弥子、その性格を直さないと彼氏は出来ないと思うぞ。今朝は父さんが早めに出社したのか、お叱りの言葉が無く、美弥子は言いたい放題だ。
「ねぇねぇ、あにぃ、恋人同士抱き合うってどんな感じ?」
答えられる訳無いだろう。今の美弥子には何を言っても無駄だ。無視して食事を済ませ、学校へと向かう。電車内にはいくつものカップルがくっつくように載っていた。
教室につくといきなり女子と男子が集まってきた。新堂の情報は一晩で随分回ってしまったようだ。皆から質問攻めにあう。
「いつから付き合い始めたの?」
「告白はどっちから?」
「オイ、どこまでいったんだよ」
この調子だ。俺はあたり触りのない返事でごまかしていると、新堂が教室に入って来た。
「おはよう、陽菜、昨日はいい夢見れた?」
しらじらしいセリフ。昨日夢で会ったじゃないか。しかし、否定する訳にもいかず誤魔化す。
「ああ、新堂が出てくる夢を見たよ」
嘘では無い。色っぽい夢ではなかったが。周りがざわめく、質問してた連中は新堂の方に雪崩れて行った。こういう受け答えは慣れているのか、巧みにかわしている。多分、来栖先輩と付き合ってる噂の時もこうだったんだろ。これならなんとかやっていけそうだな。そう思うのもつかの間、悠紀夫が凄い勢いで教室に入る。
「陽、お前、新堂と付き合ってるな! こちらには動かぬ証拠があるんだぞ!」
そう言ってダンスの練習の時の写メをみんなに見せる。周りからおおぉーと感嘆が漏れる。この誤解は放っといていいのか?新堂が告げる。
「私の彼氏なのにダンスも出来ないなんて情けないからね。その練習よ」
昨日は演劇部の練習だって言ってたのに、コロコロ話を変えるな。もっとも周りさえ納得させれば内容なんてどうでもいいのかも知れない。人は事実より解りやすい真実を求めるのだろう。悠紀夫は嘆くように話す。
「なんでモテ無さそうな陽に彼女が出来て俺にはできないんだ!」
余計なお世話だ。こっちもやりたくてやってる訳じゃ無い。
「お前はガッついてるから彼女出来ないんだよ。もっと余裕を持ちな」
「上から目線か? そう言えばあの盲目の子はどうなった? まさか二股か?」
コイツも面倒なことを思い出している。このままではいらない誤解が広まってしまう。すると新堂が助け船を出した。
「虹江のこと? あの子は共通の友達だから、妙な勘違いしないで」
ピシャリと言い張る。悠紀夫は納得するしか無いようだ。クラス中に質問攻めに合ってると、チャイムの音が聞こえてきた。新堂が屹然と言う。
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