―――現実b
現実b-1
ヴィーヴ―といういつもと同じスマホのアラームと共に目が覚め、今日も退屈な一日が始まる。部屋の外からはパタパタと、妹の足音が聞こえる。俺も急いで部屋を出て、顔を洗い、着替え食卓につくといただきますの挨拶と共に用意されているトーストをパクつく。対面に座った美弥子の目の下には隈ができていた。
「おい、お前徹夜しただろ?」
美弥子は眠たそうに答える。
「だって面白いんだもん。アタシ、ネガヴァニティアにしたんだけど、早くダークメテオ覚えたいし」
聞いてないことまで言い始める。こういう時は早めに退散するに限る。
「あっそ、じゃあいってきまーす」
そそくさと学校に向かうと、途中で悠紀夫に出会う。
「おはよう、ってお前もかよ」
目の下に隈を作った悠紀夫を見て声をかける。
「ああ、則夫が寝かせてくれなくてな。おかげで15レベルになったぜ」
15レベルがどれだけ凄いのか解らないが、睡眠時間を犠牲にしてまでたどりつける境地なんだろう。ふと気になるが美弥子は何レベルになったんだろう?
「そういやウチの美弥子も昨日始めたらしいぞ」
「マジか、ミヤちゃん始めたのか。一緒にプレイ出来れば良かったのに」
俺は少しムッとしながら、
「おまえ、ウチの美弥子を狙ったりしたら許さないからな!」
それを聞くと悠紀夫は肩をすくめ、
「それはねーよミヤちゃんは俺にとっても妹みたいなもんだからな。しかしお前のシスコンぶりも相変わらずだな」
「お前にお兄さん呼ばわりされたら鳥肌が立つってことだよ」
「おにいさま~、ほら呼んでやったぞ」
アホなことをいう悠紀夫をひっぱたき俺達は学校を目指す。
そこで気付いた。マスターからの宿題はクリアしたが学校の宿題には手を付けて無いことに……
案の定厳しいお叱りをうけ、真面目に勉強しようとしたが、このけだるい陽気には勝てずまどろんでしまう。二次関数ってなんの役にたつんだかと悩みながら。
そうこうしているうちにお昼のチャイムがなり、学食にダッシュする。
もう柊が4人分の席をとり、俺達を待っていた。
「おせーぞ、周りから睨まれちまったよ」
俺は、軽く頭を下げながら、
「わりーわりー、悠紀夫が爆睡してたからさ」
とかえすと、悠紀夫はすねながら、
「お前だって寝てただろ。人のせいにするんじゃねーよ。そういやノリは?」
そう言えば見かけない、いつも定食にラーメン食うほどの奴が。
「柊、お前同じクラスじゃねえの?」
「あいつなんかゲームの布教してたぞ。なんか今夜、封印が解かれるとかなんとかで」
「そうなんだよ。ついに今夜、暴食の封印が解かれるイベントが開かれるんだ。楽しみすぎるわ!!」
コイツはなんでこんなに興奮気味なんだ?
「なあ、世界が割れる瞬間ってのがそんなに楽しみなのか?」
「まあな、未体験のスリルっつーか是非味わってみたいね」
興奮気味の悠紀夫の隣で静かにしていた柊がぼそりと呟いた。
「そういえば、夢だと思うんだが、昨日の夢でおかしな目に合ったな」
どんな夢だ? 気になって聞いてみると、
「なんか草原で目が覚めて大きな犬に襲われたんだ。なんとかキックで追い払ったんだけど、噛まれた跡が超痛くてさ。近くの村までいって治療してもらったんだ。その後、身元とか聞かれて答えたんだけど、みんな全然知らなくてさ。冒険者ギルドに行けって言われてとりあえず登録したんだよ」
あれ? どこかで似たような感じがする。悠紀夫は興味深々といった具合に聞き続ける。
「でどうなったん? 剣とか貰ったん?」
「それがダガーナイフ1本もらっただけ。契約書は日本語で書いてあったし、最初の冒険者はハウンドの毛皮3枚取って来いってさ。動物虐待してこいってことかと思ったよ」
……支給されたダガーナイフ、ハウンドの毛皮3枚なんだかあまりに似すぎている。俺はもう少し突っ込んだ話をしてみた。
「なんて街のなんてギルド?」
「【タラント】村の【鋼の角】ってギルド。支部らしいけど」
ヒヤリと汗が流れる。もしかして俺と同じ世界に行ってるんじゃ無いだろうか?
そんな空気をぶち壊しに則夫がカツ丼を手にどかっと横に座りガハハと笑う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます