現実b-2
「今日は20人はプレイヤーを増やしたぞ。これで歴史的瞬間を目にする人間が増えたな」
俺は話をさえぎられて思わず不機嫌になる。
「今、大事な話してんだから邪魔にしないでくれ」
「なんだと、ついに封印解除が見られるんだ。これが興奮せずにいられるか!」
「それより柊の夢のが大事だろう」
「たかだか夢よりネトゲのが大事だろうなんせこっちは現実なんだからな」
ネトゲを現実というのはどうなんだろう? 友人なだけに少し心配になってくる。しかしそんな事より、今は柊の話の方が重要だ。
「で、で、タラントでの依頼はどうなったんだ?」
「ああ、俺は蹴り倒してナイフで止めをさしたよ。なんとか毛皮3枚は達成したな。なんか犬殺すと光って毛皮に変わるんだよな」
間違いない、コイツは俺と同じ夢を見ている。そんな目線に気付いたように則夫は不機嫌そうに横から口をだす。
「なんだよお前らアーマゲドンオンラインはしないのに別のゲームをしてるのかよ」
どう説明したものだろうか? 柊と同じ夢を見た……というか、体験したというか、そんな説明できるものだろうか?
「ああ、気にしないでくれ、こっちの話だ。それよりそっちの話は?」
「そうそう、ついに暴食の封印の話だな。今日の午前1時についに封印が解かれるんだ。今夜は徹夜決定だ!」
「お前もか、ウチの妹も徹夜みたいだし、明日休みだからってほどほどにしとけよ」
「んん? お前の妹もやってるのか? 何職よ?」
則夫は大口でカツ丼を頬張りながら話す。
「確か、ネガなんとかいってたな」
「ああ、ネガヴァニティアかバランスいいんだよな。でも俺のイヴィルアベンジャーの無双っぷりに勝てるモンはいないぜ」
「昨日やり始めたばかりだから、そりゃ勝てないだろうよ」
「おお、歴史的瞬間を目にする仲間が増えたのか!」
大げさに立ち上がり則夫はカウンターに追加のラーメンを取りに行く、目の前には空っぽのカツ丼の丼ブリが置いてあった。悠紀夫はさっきからアーマゲドンオンラインの素晴らしさを説いている。柊は困った顔をしながらこっちに助けを求めている。悠紀夫はなんだか宣教師みたいだ。仕方ないので俺も悠紀夫の話を聞いてやることにする。
「で、そのゲームって結局どうなん?」
「昨日は則夫に影から助けられながらひたすらレベル上げしたり装備整えたりだな。同じパーティーになるとレベル差の制限あってレベル上がらなくなるからさ」
「なんだか面倒だな」
「でも適正レベルなら結構楽しめるぞ、まだ天使級には敵わないがな」
「天使と闘うのかよ。やっぱり悪役じゃん」
「まあ、魔王の封印を解くんだからそりゃ悪だろうよ」
俺は溜息をつきながら本音を漏らす。
「俺はせっかくだから勇者がいいな」
「それなんだよ。魔王の封印の前には勇者がいるんだ。それが超強いらしいんだよ」
どうやら随分ひねくれたゲームらしい。ゲームの話はこれくらいにしてA定食のコロッケをつつく柊に尋ねる。本来聞きたいのはこっちの話だ。
「なあ、柊は夢でどうなったんだ?」
「ん~、60オーロって銀貨60枚もらって宿行って寝たよ。夢だから気にしなかったけど革袋に毛皮や銀貨60枚入ったのはびっくりしたな」
「他には? 魔法とかは?」
「なんだよ随分食いつくな。魔法は見てないな、あるなら見てみたいが所詮夢だし、気にするほどでもないかな」
まあ、初日じゃ解らなくても2日連続で見れば流石に解るだろう。あれは特別な夢だと。
則夫がラーメンを持って来るとこちらの話は終わり、またゲームの話に戻った。ふと学食の窓側を見ると後姿だが長身に筋肉質の姿が目に入る。知らない人なのに何だか知ってる気がする。誰だったかな?そっちをボーっと見てると則夫に肩を叩かれる。
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