夢と雨と貴方と共に
じゃっく
プロローグ
プロローグ
昼から降り始めた豪雨の音。
その音にかき消されつつも、食器の音が鳴る。
学校の平凡な食堂は異様な熱気を帯びていた。
眼前には、何かに憑りつかれたようにスマホをいじる生徒たちが満ち溢れていた。
俺はふと、あの子のことを思い出す。
雨の好きなあの子は今、何をしてるんだろうか。こんな雨でも、日課の散歩に傘をさして楽しんでいるのだろう。いや、この豪雨なら雨に打たれることを楽しんでいるんじゃないだろうか。
俺は食べ終えた弁当箱を片付け、スマホを見る。それは肉で書かれた六芒星の点の部分に眼が描かれている。
この学食で誰もが片手間に見ているソシャゲアプリのアイコン。
決して、俺がプレイできないソシャゲ。
ぼうっと、スマホを眺めていると、ポニーテールの美少女と、A定食のコロッケをつつく坊主頭の友人が一瞥して、
「また、確認? それ私達はやっちゃダメでしょう」
「俺達は俺達のできることをやるしかねーじゃん」
こちらに向けた目を、各々の食事に戻し、そう言うしかないといった感じでいる。
皆、これがどれだけ危険な物かも理解せず始めてしまったのだ。
雨脚の強弱の中で、流行という化け物がインフルエンザなんかより早い速度で被害は増していることに不安を覚える。最低でも1000万人を超えているのは確かだ。
個人で解決するのは不可能な規模だ。俺はスマホをポケットにしまうと、溜息を1つ漏らす。
人を待つ間、軽く目をつむり、あの時の事を思い出していた。
そうだ、全てはあの頃からもうすでに始まっていたんだ。
何も考えず楽しんでいたあの頃に……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます