現実d-9
本条先輩の蹴りは想像と違い脇腹まで足を持ち上げ軽く真横にしならせるようなコンパクトな蹴りだったが、当たった瞬間軽い破裂音の後、柊がもんどりうって倒れた。とりあえず生きてはいるようだ。呼吸困難に陥いったのだろうか、まるでエビのように激しく痙攣する。大丈夫なのかアレ?
「ほう、かなり手加減したが吐かなかったか。多少は打たれ慣れてはいるようだな。少し待ってやる痛みが治まったら息吹で呼吸を整えろ」
本条先輩の容赦の無い一言が倒れてる柊に降り注ぐ。本条先輩の顔がこちらに向く。
「来い、達哉。貴様もついでに学んでいけ」
要約すると死ねってことか? 来栖先輩は肩を押し、軽くいう。
「キミも試してみたらいい。実戦なら剣士でも蹴ることはあるから無駄な経験にはならないよ」
来栖先輩の言うことはもっともだが、まだ地べたで痙攣している柊を見ていると相当ヤバそうだ。こんなことやる必要あるのか気にかかる。しかし押し切られ、本条先輩の前に立たされた。とりあえず息吹を行う。こちらを見る3組の視線が既に厳しい。
「む、言われる前に行うとは貴様解ってるな! これなら柊よりも強めでいいだろう」
勘弁してくれ。俺は柊のようにはなりたくない。逃げたい。だが目の前の大男はそれを許してはくれないだろう。
息を吐ききり腹筋に力を込める。尻に力が入り過ぎると屁が出そうなのでそちらにも力を入れる。自然と本条先輩を睨むようになっていたのか、いくぞといわれ瞬時にそれは襲った。
さっきの竹刀とは似て非なる一撃、当たった瞬間感じたのは鉄塊だった。打たれた箇所から爆発するように何かがせり上がってくる。破裂音は腹の中から感じ、空気の塊は肺から脳へとあがろうとし逃げ場を求めて口から吐き出される。肋骨に痛みが走ったのはその後だった。俺は前のめりに倒れる。息が吸えない。まるで痛みと苦しみが協奏曲でも奏でているよだ。何とか横を向き、必死で息を吸おうとするがやはり上手く吸えない。まるで溺れているかのようだ。
長い時間息が吸えなかったように感じる。俺は手を付き涙目でなんとか座る。隣では柊も座り息を荒げていた。
「動けるんならとっとと立って息吹を行わんか。呼吸を整える癖をつけろ」
鬼かこの人は。よろめきながら立ち上がると肋骨から鈍い痛みが襲う。こんな時でも俺の脳はさっきの不可解な一撃について考えてしまうようだ。息吹を行おうとするが、深く息を吸おうとすると痛みが走る。
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