現実d-16
「遠慮はいらん。肉を食うがいい」
本条先輩の進めに従い、2人してステーキセットのプレートを頼む。新堂はカルボナーラとチョコレートパフェを頼んでいた。本条先輩はなんだか色々頼んでいるようで、ウェイトレスが注文を取るのに忙しそうだ。来栖先輩は冷しゃぶセットにうどんを頼んでいる。一通り注文が終わると本条先輩はスマホをいじりだした。
「本条がゲームにハマるとは意外だな。修行以外興味ないのかと思ったよ」
「自分でも不思議だが、これはやめられんのだ。最初に名前を打ち込んでから、常に気になってしまってな。気を抜くにはこれくらい丁度いいだろう」
「勝さんがゲームなんて本当に意外ね」
「カナちゃんもやってみたらどうだ?」
「私はパス。やること多すぎて」
「貴様ら2人はどうだ?」
「すみません、やること多すぎます」
「押忍、俺も練習で手一杯っす」
なんだか柊は既に空手部に染まっているようだ。もっともサッカー部にいてもどうせモテないんだし、強くなれる分、空手部の方が良いだろう。
ステーキセットが運ばれ、肉の焼ける良い匂いに包まれると。さっきまでとは裏腹に急に腹が減ってきたが、不意に昨夜のことを思い出し、行儀よく食べる。以前は、ファミレスでは箸さえあれば何とかなったのに、少しずつでも学んでおきたいと思ったからだ。
「何よ、アンタ達、随分お上品な食べ方だこと」
「そういう所は香苗や本条も見習わないとな」
新堂はつまらなそうにパスタをつつき、本条先輩は鳥の照り焼きにかぶりついている。来栖先輩はうどんが来ると美味そうに啜り出した。
「しかし、鍛錬初日でこうも食えるとは貴様らやはり見込みがあるな。普通なら吐き気と痛みで食うどころでは無いのだがな」
本条先輩は次の料理を口にしながら言う。来栖先輩はニコニコしながら冷しゃぶを口にする。
「いいことじゃないか。2人共きっと強くなるよ」
中々嬉しいことを言ってくれる。これで虹江を守れるなと思ったところで、今日は虹江に会ってないことに気付く。別に約束している訳では無いが、流石に今日はもう帰ってるだろう。
その辺は夢で謝ればいいか。
気づけば料理を食べ終えていた。まだ食べられそうだが、母さんが夕飯の支度をしているだろうしこの辺にしておこう。本条先輩はどう見ても取り分けるタイプのシーザーサラダを1人で食べていた。
「もう食べ終わったのか? 何ならまだ頼んでいいぞ」
この人見かけによらず面倒見がいいのかもしれない。それを丁寧に断ると、来栖先輩はまだ2人は練習する気なんだよとフォローを入れる。デザートなのか本条先輩はプリン・ア・ラ・モードをかきこむと全員が食べ終わった。本条先輩が会計を済ませると。皆口々にお礼を言い、今日は解散となった。
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