夢f-3

「柊、この壁の向こうにケルベロスがいる。ニジエは二重に水の壁を張ってるんだ」

「お前、本当に嫌われたんだな」

「今はそんなことどうでもいい。この壁、多分泳いでニジエのとこまでいけるはずなんだ。いくぞ」

「マジかよ。乾いてきたのにまた濡れるのか」


 意を決し2人して水の壁に入る。どうやら身体ごと入って問題無さそうだ厚みは2mってとこか多少の流れはあるがなんとか行ける。しかし入ってみるとやたら重いなこの水、圧縮されてんのか。

 なんとか顔が出せたもう少しで溺れるとこだった。地面に這いつくばりながらなんとか水の壁から抜け出す。鎧を着て無い柊は一足早く出ていたようだ。


「だから、ニジエさん、陽は嘘ついてんじゃなくて、本当にたかられてたんだって」


 柊は必至の説得を心みる。


「だったら、あんなに楽しそうな顔するわけ無いじゃないですか!」


 ニジエも言い返す。俺は振り絞って叫んだ。


「明日紹介する! あれは剣の師匠で授業料代わりなんだよ! 俺は証明できるんだ!」


 バシャン! 俺達が泳いできた水の壁が消える


「本当なんですか?」

「ああ、約束する!」


 どうやらニジエの誤解は解けたようだ。


「ニジエさん! 気を抜かないで! 前! 前! ケルベロスがまだ火を吐いてるから!」


 ケルベロス側の水の壁は随分薄くなっていたようだ。あれからずっと火を吐き続けているのだろうか。


「あ、来ないで!」


 ニジエが両手をかざす水の壁に厚みが戻ったようだ。これは根競べか? もしニジエが負けてしまえば3人まとめて灰になるだろう。気付くと水の壁がレンズ上に押されている。火の勢いに負けているのか? でもそれなら蒸発しそうなもんだが。


「あの、ニジエさん。もしかしてここ銅山の1番奥?」

「あんまり話しかけないで下さい。これ結構集中力がいるんです。ケルベロスの奥に壁が見えたからそうでしょう」


 確かに随分奥まで走ったからな。待てよ、というこは……


「ニジエ、今、この壁の向こうって水蒸気まみれになるのか?」

「それはそうで、しょう。水が蒸発してるんですから……」


 ニジエは苦しそうに呟く。ヤバい! こんなの意識してなかった。今、こちらに水蒸気が漏れていないということは向こうの圧力が増してるってことだ。


「ニジエ! 絶対解くな! 爆発させるぞ!」

「そんなこといったって……」


 水の壁は限界が近いのか大きく歪んでいる。直感だがヤバい気がする。


「ニジエ! 伏せながらその壁張れないか?」

「そんなの無理ですよ~! 今でも限界で!」


 その瞬間、轟音が鳴り響いた。揺れる坑道、弾けるように歪む水の壁、真っ白になる目の前、ついに圧力が限界を超えて爆発したのだ。辛うじてこちらの水の壁がもったのか全ての衝撃はケルベロス側に行ったようだ。これは勝ったか。

 しかし、弱った様子は見えるもののケルベロスはまだ立っている、あれで死なないとはやはり伝説の魔獣は違う。

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