夢j-10
「じゃあ、ニジエと2人で行ってくるよ」
「せっかくなら、仲良くしてらっしゃい。帰りが遅くなっても心配しないであげるから」
本当に新堂は余計なことばかり言う奴だ。俺がニジエに変な手出しするもんか。
「大丈夫ですよ。迷子になんてなりませんから」
ニジエはニジエで心配されてる方向を間違えてる。とにかくソルティステーノには2人で向かおう。あの婆さんに人数分有料だと言われたら嫌だしな。朝行った道を迷わず進む。大して時間はかからず、ソルティステーノが見つかる。しかし様子が明らかに変だ。緑の靄がやたらと濃い。今は誰とも会いたく無いのか? こんなに結界を厚くしてるなんて。
「ちょっと強引ですけど、結界破っちゃいましょ」
そう言うとニジエは杖の先から水を放出させる。なんでこんなに固執するんだ?靄が晴れ、店内に入ると、リュシエンヌ婆さんは不機嫌そうに言った。
「アンタ達かい、護符は役にたったんだろう。なら用は無い筈だよ。結界を見ての通り、アタシャ今誰とも会いたく無いんでね」
「それはどうしてですか? これじゃあ今日はお客さんほとんど来れませんよ」
「言ったろう、誰とも会いたく無いって。強引なお嬢ちゃん。風がざわめいてるのさ、凶兆を知らせにね」
「私はある魔法陣のことを知りたいんです。聞いたらすぐ帰りますから」
リュシエンヌ婆さんは嫌々、紙とインク壺を持って来た。マスターの前でやったようにインクに魔法陣を書かせ、それを見せる。すると突然目つきが変わった。驚くというより、ひどく怯えるように。
「お嬢ちゃん、コレはどこで見つけたんだい?」
「チュレアの森の古城の地下でサキュバスクィーンが守ってました。これはなんなんですか?」
リュシエンヌ婆さんはゴクリと吐息を飲む、手が震えている。
「2人共絶対口外しないと誓えるかい?」
「そんなにヤバいもんなんかですか?」
「魔術師以外が口出しするんじゃないよ。アタシャお嬢ちゃんと話してるのさ」
俺は蚊帳の外というわけか。
「わかりました。でも既にマスターには報告済みです。それ以外には誰にも言ってませんし、元の魔法陣も壊してきました」
「元を壊したのは正解だね。コリンの坊主に話すのは仕方ないか。それで2人共誓えるのかい? 絶対口外しないって」
「私は誓います」
「俺も誓います」
ここまでしなくてはならない程のものなのだろうか? いやこの怯えようは尋常じゃない。間違いなくヤバい物なのだろう。
「これは7大魔王【アスモデウス】の召喚魔法陣さ。未完成の部分があるが、間違いないね。アタシも長いこと生きてきたが、実物を見るのは初めてさ。このシジルはアスモデウスを示している」
7大魔王! サキュバスクィーンに苦戦していた身からすれば魔王なんて荷が勝ち過ぎてる相手だ。召喚される前でよかった。
「欲を言えば封印をしてもらいたかったがね。流石にまだお嬢ちゃんじゃ無理だろう。壊してきただけマシさね」
「魔王っていうくらいですから危険なんですよね」
「当たり前さ。下手したらルンレストが滅ぶかもしれないよ。あれだけ離れていてもね。本当に召喚されずに良かった」
確かに召喚されなくていいのかもしれないが、それは吉報であって凶兆ではない気がする。
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