夢l-4

「でも、この武器の本領はやっぱり戦術指揮ね。ニジエの守りは私が付くわ」


確かにその方がいいだろう。新堂本人が闘うより、3人を強化して貰った方が効率はいいはずだ。


「そうだな、でも今ガーゴイルが来た方角は南東だ。やっぱり今回の原因は海方面だよ」

「そのようね。早めにオアシスを見つけて、海に向かうルートをとりましょう」

「その前にまたエンチャントをかけ直します。そろそろ効果が切れますから」


 もう効果切れか。思ってる以上に砂漠は暑いんだな。エンチャント抜きなら今頃、干物になっていることだろう。ニジエにエンチャントをかけ直して貰うと、オアシスを目指して一路進む。新堂はたまにコンパスを見て進路を指示する。しかし、歩くだけでこんなに消耗するとは。ティルスに寄ってラクダでも借りてきた方が良かったかもしれない。


「もう少しでオアシスが見えるはずよ」


 もう少しってどのくらいだよと嘆きたくなるのを抑える。また尻尾が見える。大サソリか。


「おかしいですね。水を感じるんですが、また大サソリですか?」


 ん? 水を感じる? 確かに随分遠くの尻尾だ……いや、あれは尻尾じゃない。


「ニジエ、よく見てくれないか。なんだか嫌な予感がするんだ」

「わかりました。これは……えーっと蛇ですね。見るのは初めてですけど」


 なんだって。こんな遠くから見える程のデカい蛇なんて想定外だ。オアシスの守護者でも気取ってんのか。


「戦闘準備、陽菜はあの蛇を斬って。柊は頭を潰して」


 近づくにつれ尻尾と見間違えた部分が見えてくる。あれは蛇の頭だったのか。オアシスが見えるくらいまで近づくと、信じられない速さで地を這い、襲いかかって来る。だが、これだけ長ければどこでも斬り放題だろう。剣を振るう。だが、それは地を裂くが蛇にはかすりもしない。こちらの動きを読んでいるのか?


「陽菜、集中しなさい。雑になってるわよ」


 新堂はニジエのサポートの元、動いて躱している。読もうにも軌道が読めない。蛇ってこんなに動きが早いのか?


「ちぇすと!!」


 柊が地面を蹴る。大きな砂埃が舞う何考えてるんだこんな時に。


「陽! その砂埃がに穴が空いたら斬れ! 蛇は早くても必ず通り道が出来る!」


 なるほど、そのための砂埃か。柊のヤツ、さえてるな。舞い落ちる砂埃に穴が空いた。ここだ! 全力で剣を振るう。斬れた。4メートル程だが尻尾の部分だ。動きがガクンと遅くなった。これなら感じて斬るのに問題無さそうだ。向こうはUターンをしてこちらに戻って来る。すると俺の前で鎌首を持ち上げ、叫びながら威嚇する。


「キシャァァァ!」


 真っ向勝負をお望みか。いいだろう。俺は感じることに全神経を集中する。最初はフェイント、次で俺の頭を狙って丸のみ狙いか。読める、攻撃の軌道が全て俺を狙った一撃、目では追えない速度、だがそれはもうすでに感じた後だ。風圧が近づいて来た瞬間に合わせて斬る。重い物が砂の上に落ちる音がする。


「柊、念のため頭を潰しなさい」


 柊は落ちた頭を蹴り砕いた。光りが散る。大きな鱗がある。とりあえず【大蛇の鱗】とでも呼んでおくか。道具袋に入れると、ニジエが口走る。


「近くに命の反応はありません。ここからオアシスまで安全です」


念のため陣形を取りながらオアシスへと向かう。だが敵は現れなかった。オアシスにたどり着くとそこには澄みきった小さな湖とベタにヤシの木があった。


「ここなら、しばらく休めそうです」


 ニジエも安心していう。ここでお昼だ。太陽は真上だから、思ったより近かったんだな。ニジエはオアシスから水筒に水を入れている。いつ飲んだんだ?


「ニジエ、俺達、水飲んだっけ?」

「いえ、エンチャントや私のローブに使っていましたので」


 何もない所から水を生み出すのはやはりキツイらしい。確かに砂漠で水を作るってイメージしづらいかもしれない。俺達も水を飲み喉を潤す。新堂は地図とにらめっこだ。


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