現実j-4
「みんな、このキャラの上の文字読めるか?」
3人が差し出したスマホの画面を凝視する。
「なにこれ? 模様?」
「こんなの文字じゃねーじゃん」
「勉強は苦手なんだけどな、文字だとしても見たことないね」
やはり3人も認識してないようだ。悠紀夫が追いかけて来る。
「おい、陽! 人のスマホ持ってくなよな」
「ああ、すまない、もし面白そうならみんなでやってみようかって話になってな」
「それなら仕方ないか。で、みんなどう?」
みんな頼む誤魔化してくれ。
「俺は現実で剣降りたいからやめておくよ」
「私もパス。可愛い系なら考えるわ」
「俺も空手部忙しくてゲームしてるヒマ無いじゃん」
よかった、通じてくれたか。
「そりゃ残念、陽は?」
「俺? 俺は……その色々忙しくてさ」
「私の彼氏に不気味なモンすすめないでよ」
ナイスだ新堂、フォロー上手いな。
「なんだ、いちゃついて。てっきり来栖先輩と三角関係でピリピリしてるのかと思ったよ。みんなでスマホ確認し合ってるしさ」
「ああ、これただお互いの壁紙見せあってただけ。意味は特にないよ」
「そっか、じゃあスマホ返してくれよ」
悠紀夫にスマホを返すともと居た席に戻っていった。また2人で話が盛り上がっているようだ。俺は冷静になると途端に不気味な感覚に襲われる。
「みんな、このゲーム間違ってもプレイしちゃダメだ。多分何か認識がずれる」
「私の予想通りなら夢の世界にも行けなくなると思うわよ。死ぬって過程が不要になるんだもの」
4人で息をのむ。母さんの弁当は残念ながら喉を通らない。俺は話す。
「それともう一つ気になる事があるんだ。今日の夜9時に嫉妬の封印解除イベントがあるらしい、ライブイベントはスマホでも動画でみれるから、みんな確認しよう」
全員うなずく、ここまで現実離れしてくるともはや魔法が実在すると言われたほうが気が楽になるだろう。ダメだ狂気に飲まれてはならない。
「後、気になる人はいる?」
「俺は剣道部の部員からそれとなく聞いてみるよ」
「確か本条先輩はアーマゲドンオンラインやってたじゃん。俺はそれとなく聞いてみるしかないじゃん」
「私は放課後アンタと一緒だから、小休憩の間に女子に聞いてみるわ」
あまり人付き合いの無い自分が悲しいが、それでアーマゲドンオンラインをやらずに済んだのかもしれない。ボッチの孤独に耐えられずプレイしていたかもしれないから、柊がいて心から良かったと思う。
「じゃあ、そろそろ昼休み終わるから、もし変な文字を見てもなんとか誤魔化すこと。部活組は終わったらいつものファミレスで合流しよう」
みんながうなずく。母さんの弁当をしまうと、新堂に空になった弁当箱を渡し4人で学食を出た。教室に着くと新堂の周りに人だかりが出来る。どうやらスマホを見せてもらっていることから、アーマゲドンオンラインの情報を探っているようだ。こちらは1人だが、今は有難い。思案にふける時間が作れる。優さんは何をしようとしているのだろう。そもそもアーマゲドンオンラインは神崎家の生活費工面の為に作ったのではないのかもしれな。ならその理由は? そういえば本人がさりげなく進めていたな。あれも気になる。鈴木先輩が生きてた時は嬉しかったが、帰って大きな謎を抱えてしまった。それも今夜ある程度明らかになるだろう。今夜のライブイベントに備え、今は休もう。ノートはどうせ新堂にうつさせてもらえばいい。とにかく休もう。俺は教科書を立て壁をつくるとうずくまって寝ることにした。
後ろからいきなりはたかれる。多分新堂か。
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