現実i-5
「今日は良いお買い物ができました。達哉さんと香苗さんのおかげですね。兄さんは私の服にはあんまり関心無いみたいですから」
「関心が無い訳では無いんだがね。あまり流行の服なんかは分からないんだよ」
「まだ時間はありますよね。今度は達哉さんがよく行く場所に遊びにいきたいです」
俺のよく行くとこか。参ったな。
「ゲームセンターくらいしかないよ。多分、虹江が行ってもうるさいだけの場所だから行かない方がいいと思うな」
「ゲームセンター!! 私知ってます。ぬいぐるみを取る遊びがあるとこですよね」
随分偏った知識だな。俺はほぼ格闘ゲームばかりやりに行ってるんだが、ゲームの画面は虹江には見えないだろうし。しかし、意外な提案をしたのは優さんだった。
「なら、これからゲームセンターに行ってみよう。クレーンキャッチャーで景品を取って虹江にプレゼントしようか」
ここで新堂は妙な事を言い出した。
「なら、優さんと陽菜で勝負したら? 交互にゲームをして、取れた方が虹江にプレゼントするのはどう?」
なんでそんな事する必要があるんだ? 面白そうな勝負ではあるが。
「私は構わないよ。分野違いとはいえゲームでは負ける気がしないのでね」
「俺もいいですよ。結構得意ですから」
こうして俺と優さんの勝負が始まった。ゲームセンターはこちらが決め、なんの景品が欲しいかは虹江に聞いてみよう。少しあるくと独特の喧噪が聞こえて来た、が、ここはスルー。クレーンキャッチャーはこの先のドアーズというゲームセンターが充実しているのだ。見つけると近づき自動ドアが開く。けたたましい音の波が押し寄せる。虹江は平気だろうか?
「凄い音なんですね。これ全部ゲームの音なんですか?」
「そうだよ。気分悪くなったりしない?」
「大丈夫です。可愛いぬいぐるみ取ってくださいね」
「安心なさい、それは私が選んであげるから」
新堂に選ばせるのか、不安だな。最近のクレーンキャッチャーは美少女物のフィギュアが増えて、ぬいぐるみを取るタイプが減った気がする。しばらく新堂が吟味している間、優さんは虹江につきっきりだ。
「これよ。これならいいんじゃない?」
新堂が選んだのは【天晴れ! ハム安君!】というデフォルメされたジャンガリアンハムスターにちょんまげが付いてる、丸っこいぬいぐるみで、大きさは虹江が抱きしめるのに丁度良さそうだ。
「虹江、ハムスターにちょんまげ付いてるぬいぐるみだけど、こんなのでいいのかな?」
「香苗さんが選んでくれたんなら、それがいいです。可愛いに決まってます」
「ならこれにしようか、達哉くんもいいかな?」
ワンゲーム200円、スリーゲーム500円か
「俺は構いませんよ、ちょっと両替してきます」
「私も行こう、これなら3回交代ずつでいいかな?」
「そうですね。その方が安くできますし」
俺は五千円札を五百円玉10枚に変える。流石にそこまでもつれないとは思うが、念のためだ。
「随分両替するんだね。今日は日曜だし設定がシビアだからかな」
「それもあるんですけど、両替に離れちゃうと感覚が途切れちゃうんで」
「成程、なら私も多めに両替しておくかな」
優さんも同じく五千円札を全て両替する。虹江たちのいる筐体前に来ると勝負スタートだ。まずこちらから仕掛ける。
「お店はこちらで選んだんでフェアにお先にどうぞ」
フェアなんて嘘だ。この手のゲームは後の方が絶対有利なのだ。先にアームの動きや癖が見えるし、何よりこのタイプは金をつぎ込む程、アームの挟む力が増すからだ。
「そうかね、ではお先に」
優さんは五百円を滑り込ませアームの横と奥行きを確認しアームが止まる。後は下に降りて挟みこむように動くだけだが、この挟む力が曲者なのだ。パッと見ガッチリキャッチしてるようで簡単に滑り落ちてしまう。ここのアームはかなり力が弱いようだ。これは苦戦するだろうな。あっという間に3回が終わる。優さんは少しぬいぐるみを傾けて終わってしまった。
「成程、これは中々難しいね」
涼しい顔をして感想をのべる。苦戦の予感、出来れば店員に位置を変えてもらうのはしたくない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます