夢j-2

「こんな簡単に払えるなら楽勝じゃん」

「少しはアタシの若い頃の姿を褒めて貰いたいもんなんだがね。まぁ過ぎた時を嘆くのはやめておくかい。害意のある幻覚は武器で壊さなきゃダメだよ。アンタらの武器はミスリル銀製だから簡単さ。それにあくまで護符の効力は感知だ。靄が頭に触れたらアウトだからね」


 多方面に対策が出来るが幻覚自体を無力化出来る訳ではないのか。だが、これだけはっきり見えるなら余り問題はないだろう。お礼を言い、店を出ると、ニジエが振り返るように手を引くそこには巨大な緑の靄がかかったソルティステーノの店があった。


「こんな大規模な幻覚作れるんですね」

「あの婆さんが美女に変身したのもビビったけど、これには更にビビるじゃん」

「風の結界も幻覚の一種なんだな」


 改めてリュシエンヌさんの力量を確認させられる。これなら現役でも通じるんじゃないか? でも杖をついてるし体力が追いつかないのかもしれない。驚嘆している2人にニジエは言う。


「私、もしかしたら新しい魔法思いついたかもしれません」

「本当? どんな魔法?」

「ちょっと使ってみないと分からないんですけど、機会があったら試してみますね」


 こういう思い付きがニジエの強味なのかもしれない。正式に依頼を受ける為に青銅の蹄に向かうべくソルティステーノを後にする。今日は自分から依頼を申し出てみよう。扉を開けマスターに声をかける。


「マスター、古城調査の依頼をうけたいんだけどいいかな?」

「あそこの調査か。それなら一足先にクルス達が受けて行ったぞ」


 遅かったか。せっかく大金だして護符まで揃えたのに。


「まあ、小さくても城だからな。お前達も向かっても問題無いだろ。依頼はサキュバスの尾及びインキュバスの角、30本で9000オーロ。もし、モンスター発生の原因を突き止めて解決したら、6000オーロのボーナスがつく。ここんとこ最大の依頼だな」


 総額で15000オーロ! 1人5000オーロなんて夢のような額だ。これをこなせば名実ともに一流冒険者と言えるだろう。


「その依頼受けた! 2人もいいよな?」


 柊とニジエを見渡す。


「俺は構わないぜ。額も最高じゃん」

「私も異存ありません。未知の物に挑戦してこそ冒険者ですよね」


 2人も乗り気のようだ。今回はケルベロスのような規格外の化け物もでないだろうし、俺達も着実に強くなっている。楽勝とまではいかないだろうが、この依頼はこなせる自信がある。最大の問題は来栖先輩たちとバッティングしてしまったことだが、こちらにはこちらの強味がある。競争も悪くない。


「じゃあ、一刻も早く準備を済ませよう。来栖先輩達に負けないぞ」


 それぞれ手分けして準備を済ませる。俺は水とマモーラぐらいだが、ニジエはマンダリーノのジュースを絞ってもらっているようだ。柊も俺と同じ程度の準備だから簡単なものだ。ニジエは市場に行くといい店を出る。多分ドライフルーツを買いに行ったんだろう。

 予想通りニジエはすぐ戻ってきた。


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