夢l-7
後ろから一筋の水が飛ぶ、狙いはマーメイドだ。しかしそれを守るように、波が邪魔をする。その瞬間、新堂の決断は早かった。
「一時撤退、態勢を立て直すわよ」
そうするしかないだろう。こちらには決定打が無い。いたずらに消耗するだけじゃ意味が無い。俺と柊は可能な限り素早く陸に上がる。向こうは歌声からガーゴイルを生み出したい放題だ。どう考えても分が悪い。
「ニジエ、部分的でいい。海水を操れないか?」
「ダメです。海ですから引っ張りあいになっちゃいます」
これが新堂の危惧していたことか。海水も水だと思っていたが、ニジエの認識では別物なのだろう。
「ダメね、総員、オアシスまで引くわよ」
新堂の指揮は的確だ。ガーゴイル程度なら相手にしながら引くことが出来る。なんとか砂丘の上にあがると、マーメイドはこちらを嘲笑していた。次はその首を落としてやる。ニジエはエンチャントをかけている。幸い海水で濡れている為、比較的簡単にエンチャントはすんだが、何か違和感がある。なんだろう? いや、今は細かいことを考えてる場合じゃない。オアシスまで逃げれば聖水の結界も張れるだろう。とりあえずそこまで逃げよう。新堂は正確にオアシスまでの道のりを覚えているのか、先頭に立って真っ直ぐ進む。今回ニジエを守るのは俺の役目だ。殿は柊に任せた。
ほうぼうの体でオアシスに着く頃には追撃の手がやんでいた。
「今回は仕方ないわ。まさかシーサーペントまで出てくるなんて予想してなかったもの」
「確かにあれは斬り落とせないな。胴も首も太すぎる」
「あと、あのヌメリ、あれ多分攻撃が通らない原因じゃん」
「ごめんなさい、私が足手まといで・・・・・・」
ニジエのせいじゃないだろう。今回は予想外の事が多すぎた。
「うわ、服が塩でパリパリじゃん。ちょっと水に浸かるわ」
「ちょっと待って下さい、私、海水にエンチャントかけちゃったんですか?」
「そりゃそうじゃん。海水でずぶ濡れなとこにエンチャントかけたんだから」
そうか、違和感の正体はこれか、海から切り離せたなら、ニジエの魔法も通じるのだ。
「もしかしたら、新しい魔法が出来るかもしれません。私1人じゃ難しいんですが」
「思い付きでもいいから言って見なさいよ」
「タツヤさんと柊さんに海を一時的に分断してもらえれば、瞬間的に蒸発させられるかもしれないんです」
中々厳しい条件だ。だがもう一手欲しい。
「例えば、水筒の水を使って水の足場を作る事は出来ないかな?」
「それくらいなら、水を固くすればできそうですね。試してみましょうか」
するとニジエはオアシスに向き、詠唱する。
「水よ、私達の足場になって」
オアシスにお盆のような盛り上がりが出来上がる。
「この上に乗ってみてください」
言われたとおり乗ってみる。水のお盆は想像よりもしっかりした足場だった。しかし、範囲狭すぎないか?
「心配しないで、そのまま水の上を歩いてみて下さい」
歩いてみると、水のお盆は伸びて次の足場を作る。これなら落ちる心配は無さそうだ。新堂がハッとするように気付く。
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