現実d-4
またA定食を食べていた柊があっと大声を出す。
「そう言えば神崎って虹江さんと同じ名字じゃん」
余計なこと言いやがって。ノリに兄妹とばれたら紹介しろとうるさく言われるのが目に見えている。ここも誤魔化すしかあるまい。
「神崎ってそんなに珍しい名字でもないし、偶然だろ」
「まあ、そうか。でも最近色んな人に会ってたから色々気になるじゃん」
B定食を食べ終わった悠紀夫が口を挟む。
「しかし、ファン募金か、俺もちょっと入れてみたいけど懐が寂しいからな」
「昨日やたらと菓子や飲み物買いこんでたからな、バイトでもしたらどうだ?」
「う~んなんだか最近やたらと腹が減るんだよな。成長期だからかね」
ラーメンのスープを飲み干すとノリがまたしても話に入ってくる。
「それ解るわ。俺も昼飯これじゃあ足りないんだよな。なんでだろ?」
ノリはともかく悠紀夫は食が細かったはずだ。俺は毎日、母さんの作った弁当で足りてるが、急に食欲なんて増すものなのだろうか?
「柊はどうなんだ?」
「俺? いつも通りだよ。運動部だしもっと食わなきゃと思うんだけど」
柊は平常運転のようだしかし、なんだか不自然な感じがする。
結局、チャイムが鳴り、お開きとなった。悠紀夫とノリは今日も早めに帰るらしい。やはりパソコンの大画面でプレイする方がいいのだとか。俺には丁度いい。これから決闘しますなんて言えば騒ぎ立てに来るに決まっているからだ。
放課後になると俺はとなりのクラスの柊と共に演劇部の練習場に向かった。体育館に入る時専用の運動靴に履き替えて。
演劇部の練習場にはまだ誰も来ていなかった。準備があるからだろう。来栖先輩は剣道部のエースだし、サボるのは大変だろう。しかし取り決めなら守らなければならない。
しばらくすると制服姿の竹刀を2本持った新堂と大きなバッグをもった来栖先輩、そして腰に黒帯を巻いた老け顔に坊主頭の空手着姿をした先輩らしき大柄の男性が現れた。なんだか猛烈に嫌な予感がする。
「おまたせ、抜けるのにちょっと手間取ってさ。別に宮本武蔵を気取った訳じゃないんだよ」
「どうせ私が勝つんだから同じことでしょ」
「遅れたのは気にしませんがそちらの方は?」
俺は気になって尋ねてみる、1人だけ空手着なんて明らかに浮いている。
「ああ、こっちは俺の幼なじみで空手部の本条 勝(ほんじょう まさる)、柊君には彼にコーチ頼もうと思ってさ。家が空手の道場やってるし腕は確かだよ」
……。いつの間にか柊も巻き込まれる流れになっていた。
「押忍!! 貴様が柊か! 来栖に話は聞いたぞ。短期間で強くなりたいらしいな。言っておくがウチの流派は実戦式だ。死ぬ気で励めよ! まずは挨拶せんか!」
野太く力強い声が響く。柊、大変な目に会うな。まあこれはこれでアリだろ。柊が強くなればパーティーも強くなるしな。
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