夢k-6
「まず、聞かせて。今、いくらあるの?」
「大体金貨20枚ってところだから、1人5枚くらいの分配かな」
「それは分配せずに陽菜の新しい武器につぎ込むことを提案するわ。今後のメインアタッカーだもの、来栖の剣、大事にして欲しいけどそれはまた別。感情よりも理屈を大切にして。今は少しでも安定した火力役が必要ね」
てっきり自分に分配しろというのかと思ったらそう来たか、確かに今後を考えたら鋼製の武器よりミスリル銀製の武器に買い換えるべきだろう。
「それより私、ソルティステーノに行くべきだと思います」
「魔術師の強化ね、それもアリだわ」
「違います。兄さんのことを聞きに行くんです。リュシエンヌさんは情報取集に長けてますし、同じ魔術師なら何か分かると思うんです。ただお金をいくら要求されるかわかりませんから……」
情報を買うか、今後を考えるならそういうことも必要になるだろう。
「そんな人いるのね。分かったわ。まず情報取集に向かいましょう。武器は腐らないけど情報は鮮度が命だからね」
なんだか新堂がリーダーのが向いてる気がする。とりあえずソルティステーノに向かおう。
「じゃあ、マスター、例の件よろしく」
「おう、なるべく早く手配してやるよ」
青銅の蹄を出てしばらくすると、新堂が聞く。
「例の件ってルンレストを出る話?」
「ああ、ガーゴイルは違う領地から出てきたから、早めに向かいたい。カ―チンガっていう南の街に向かおうと思う」
「なら、タラントは寄って欲しいじゃん、あっちのみんなが無事か確認したいじゃん」
「もちろん寄る。というか、そこまでは監視がついててもおかしくないと思った方が良いな」
次の目的地について話してると、ソルティステーノはすぐだ。今日も随分靄が濃い。誰とも会いたく無いってことか。
「こんなボロっちい店に何があるのよ」
そうか、新堂は幻覚感知の護符を持って無いんだ。
「大丈夫ですよ。今、本当の姿に戻しますから」
相変わらず何事も無いようにニジエは水を撒く。靄が晴れてきた。
「ちょっと、店が変わったわ。こんなこと出来る魔術師いるの? だったら今日戦列に加わって欲しかったわ」
そう言いたくもなるが、何せ高齢だ流石に無理だろう。店に入るとリュシエンヌ婆さん椅子に座って落ち着いていた。
「なんだい、アンタ達かい。アタシャ暗殺者でも来たのかと覚悟を決めてたのにね」
「そんな心配するほどのことがあったんですか?」
「ふん、風が知らせて来たのさ。そろそろお迎えが近いってね。もうアタシも充分生きた。せっかくだ。なんでも話してあげるよ」
「お城の魔術師にユウって名前の人いますか?」
「なんだい、自分の兄のことくらい知ってるだろう」
「いるんですね。何をしてるか分かりますか?」
「そこに行きついたか。得意な系統は封印解除と召喚、魔法陣のエキスパート。そして手段を選ばない人間だってことくらいしか分からないね。城にはここ1ヶ月くらい阻害の魔法が強くかけられてる。あの男が城に出入りするようになってからさ。疑うなって方がおかしいさね」
「でも城ならそういう魔法かかっててもおかしくないじゃん」
柊の指摘は当然だ、城なら秘匿情報もあるだろうし、隠ぺいしたいこともあるだろう。
「格闘士にしちゃいい勘してるね。でもアタシの本来の仕事は魔法具屋じゃないんだよ」
え? なんだそれ。初耳だぞ。
「考えてもごらん、普通の店なら風の結界なんて張る必要が無いだろ。能無し共が来てもそれに合わせた品を売ればいいだけだ。本来の仕事はこのルンレストの目と耳なんだ。それを代々の子爵様に伝えるのが仕事なんだよ。風の結界を抜けるような魔術師は、ある意味危険だからね。その指標程度なんだよ」
ようやく、この店がまともに商売してないのに咎められず、やっていけるのかが分かった。所謂、密偵の役目を担っていたのだ。
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