夢h-2

「アンタ達は南西の入口から南方面に奥を中心に調査して。こっちは北の入口から西を調べてみるから」

「新堂が奥を譲るとは意外だな」

「悔しいけどウチには幻惑を見破れる魔術師がいないからね。そっちのが探索に向くでしょ」


 それもそうか。今回もニジエに苦労かけそうだ。話が決まる頃、来栖先輩と鈴木先輩が一緒に入って来た。チャンスだ鈴木先輩に聞いてみよう。


「おはようございます、鈴木先輩、唐突ですがお話があって」

「なんだ? 引き抜きなら受けないぞ」

「違います。アーマゲドンオンラインってゲーム知りませんか?」

「ああ、あれか。ウチの部員もみんなハマってるよ。俺はやったことないけど」

「そうでしたか。ついでに明日、学食で話せませんか?」

「別に構わないよ。何かの調べモンか?」

「ちょっとしたことです。それではまた。ありがとうございます」


案外、あっさり話が進んだな。新堂は自分を挟まなかったせいか少しむくれてる。


「明日の学食には新堂も来てくれよ」


 一応フォローを入れておく。


「当たり前でしょ。てか、今後ほとぼりが冷めるまで一緒に過ごさなきゃいけないんだからね」


 ああ、そうか、こいつとは恋人ごっこをしなければいけないのだ。やや気が重くなる。察っして来栖先輩が話してくれる。


「ごめんね、本当に、香苗も悪い奴じゃないからさ、たかられたら、俺に言ってくれればある程度なんとかするからさ」


 来栖先輩は本当に優しいな。モテるのも解る気がする。


「そう言えば来栖先輩は誰かと付き合わないんですか?」

「俺の恋人は剣かな。これはって所に行きつくまでは彼女はいいかな」


 ストイックな人だな。そう考えると本条先輩は意外だ。


「そう言えば本条の奴、香苗にフラれたんだって? アイツが空手以外にそんなことを考えてたなんて意外だな」

「本当ですよ。挙句に俺まで巻き込まれそうになるし」

「もし何かされそうになったら、その時は俺がアイツを何とかするよ。約束するから心配しないでくれ」


 心の底から安心できる言葉だ。男前とはこのことだろう。これでギルドハウスでやるべきことは済んだ。待たせていた柊とニジエに声をかけるとチュレアの森に向かおう。

 道中、何回もモンスターにであったが、弱すぎて強くなってるのかがあまり解らない。強いていうなら、柊の蹴りはモンスターが弾けるようになったことか。あれが新武器の力か柊の技量かは解らないが。


「なんか調子いいじゃん。これ新しい武器のおかげかな」


 多分それだけではないだろう。武器は扱う技量も必要なのだ。俺はなんとか背中から抜く練習にゴブリンやコボルトを練習してた。まだ抜くのにタイムラグがある。チュレアの森に入ったら抜いたままにしておくのが良さそうだ。

 鬱蒼とした森に入ると湿り気のある独特の空気を感じる。ニジエは杖のレンズを覗きながら進む。


「ニジエ、何してるの?」

「このレンズ覗くと水の流れが見えるんです。あ、あっちになにかいますね。あの大きさはウェアウルフですかね」


 どうやら感知魔法も付与されてるようだ。あの意地悪婆さんにしては良い物売ってくれたな。ニジエの指さす方に忍び寄る。そこには既に臨戦態勢のウェアウルフが立っていた。昼なのに何故? 疑問は後だ。とりあえず倒すか。間合いに入り、剣を振るうと骨の感触を断つ独特の感触が無い。これが新しい剣の力か。技量さえ上がれば更に上に辿りつけるのだろう。直刀なのにファルシオンより振りやすいのは竹刀での練習の賜物か。もう1匹、ウェアウルフがいたが、既に柊が仕留めていた。こんなに楽になるものなのか。すると地響きが聞こえる。オーガが近づいてきたようだ。3人で臨戦態勢に入る。


「ニジエ、纏わり付く水、軽くでいいからお願い」

「解りました。水よあの敵に纏わり付いて」


 ニジエの杖の先からテニスボール大の水の玉がオーガの丸太を持つ手に撃ち出される。これで体当たりにさえ注意すればいい。柊が左脇腹に蹴りを入れる。オーガの一部が爆ぜる。バランスを崩した所で懐に潜り込み、首筋に剣先を滑らせる。あっけなくオーガは崩れ落ちた。光り、オーガの角に変わる。俺達、こんなに強くなってたのか。

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