現実c-3
「見たことは無いと思うけど、アーマゲドンオンラインってゲーム知らない?」
自分で質問していて間抜けなことだが、目が見えないのに知る訳が無いだろうと思ったが、予想に反して虹江は答えた。
「聞いたことはありますよ。兄さんが遂に完成したって言ってましたから」
なんだと? アーマゲドンオンラインは虹江のお兄さんが作ったのか?
「そこなんだけど、詳しく聞かせて貰えないかな?」
「構いませんけどたいして詳しいことは解りませんよ。先月の中頃に兄さんが『遂に完成した。全ての封印が解ければ、これでありとあらゆる悩みが解決する』って大声で知らせに来たくらいですね。後は7つの封印がどうとかちょっと興奮気味に話してたくらいで、私は半分も理解出来ませんでしたが」
「実は昨日、夜の1時に2つめの封印が解かれたらしいんだ。夢の世界の時間だと昼食の後くらいに」
「ゲームが夢の世界と何か関係あると思ってるんですか? なんだか兄さんみたいにオカルトかぶれなんですね」
虹江のお兄さんはオカルトかぶれなのか……。しかしそれならなんでゲームなんて作ったんだろう?
「虹江のお兄さんってどんな人なのかな。聞いてもいい?」
「いいですよ。と言っても、普通の人ですよ。二年ほど前に両親が亡くなってから、プログラマーのお仕事を在宅でしつつ、生まれつき目の見えない私の世話をしてくれているんです。昔からオカルトのお話をよくしてくれましたが、パソコン関係のお仕事を始めたと聞いた時はびっくりしました。名前は優しいって書いて優(ゆう)って言うんです。ピッタリでしょ」
どうやら、虹江はお兄さんを誇りに思っているようだ。お兄さんを語りながら小振りな胸を張っている。いかん、俺は一体どこを見てるんだ。
「あの、どこを見てるか見えてますから……」
やっぱりばれてた! そりゃそうだ俺のことは見えてるんだから。
「やっぱり小さいですか?」
唐突な質問にしどろもどろになってしまい変な返答になってしまい、俺は、
「いや、俺は小さめの方が好みというか、虹江にはピッタリというか、良いとおもうんだ」
なんてバカな答えだ。昨日、柊に女性に免疫が無いなんて言ってたが、俺も同様なのだと感じてしまう。小さいの気にしてるんだろうか?
「そうですか……。私はもう少し大きいほうが良かったです」
「いや、虹江は色白だしスレンダーだから、そのままの方が断然いいって」
胸の大きさを気にしてる子にこのフォローはあってるのだろうか? こんな時なんて言えばいいのか学校で教えてもらってない! まあ教わる訳ないのだが。随分話がずれてしまった。目を逸らすと見知った顔が目に入る。
「陽じゃないか、どうしてこんな所にってお前! その子、彼女か!」
悠紀夫だ。なんて面倒な奴に見つかってしまったのだろう。話をされる前にそらさねば。
「なんだよ。お前、今日は休みだから1日中ゲームやってんのかと思ったぞ」
「これからゲームにどっぷりハマる為に食いモンや飲みモンの買い出しに来てたんだよ。しかし思わぬ場面に出会ったな」
こちらも完全に予想外だ。買い出しくらい近くのコンビニで済ませればいいものを。悠紀夫の両手にはスナック菓子とペットボトルのジュースでいっぱいになったビニール袋が下げられている。勝手に空いた席にドカッとすわると、相変わらずのマシンガントークがくりだされる。
「事情は不明だがこんな真冬の雪山のような白く美しい女性に恋するなんて、美女や壮大な山は遠くから眺めている方が幸せだと語り合ったじゃないか。枯れ木と女は上り詰めたら命懸け! お前は遭難しすぎだぞ!」
虹江を見ながら俺を貶めているのか、虹江を褒めているのかわからない言葉を投げかける。長い付き合いだがコイツの失礼さは昔から変わらない。虹江は慌てるように答える。
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