―――夢i
夢i-1
剣の柄に頭をぶつけて目が覚める。そう言えばグリゴリさん対策に枕元に置きっぱなしだったっけ。装備ではなく、青のブルゾンに着替える。今日は冒険者家業は休みだ。最低限の護身に必要なダガーナイフを身につける、待ち合わせの青銅の蹄に向かう。丁度柊も起てきたのか、先に向かうと伝え、宿を出る。ニジエはきっとおしゃれに時間がかかるだろう。のんびり待たせてもらおう。ただ、こちらにはデートガイドのような物は無い。さて、どう楽しませたものか。
「マスター、ここらで女の子と楽しめそうなとこある?」
「おっ、ニジエとデートか。そうだな。今日なら昼頃から大通りで色々出し物やってると思うぞ」
この世界の出し物か。ちょっと興味があるな。いつの間にか柊が隣にいた。
「出し物か中々面白そうじゃん」
「あれ? お前ついてくる気か?」
「当たり前じゃん。俺だけ置いてきぼりかよ」
参ったな、せっかくニジエとデート出来ると思ったのに。
「ユウタはお邪魔虫みたいだな。よし、丁度暇な奴を呼んでやろう」
嫌な予感がする。
「おい、レベッカ! ユウタが暇してるそうだ。ダンスパーティーまで相手してやれよ」
やっぱりか。しかし、なんでレベッカがいるんだ?
「おお~。ディマンソで暇してたから丁度よかったよ~」
ディマンソ……つまり日曜日か。学校がない訳だ。
「今日はレベッカの代わりに臨時のウェイトレス雇ったからな。しっかり遊んできな」
柊は青白い顔をしながら口をパクパクさせている。 諦めろ。これがお前の運命だ。
「せっかくだからオシャレしてくるね~待ってて~」
そう言うとレベッカは奥に引っ込んでいった。
「陽、俺今日もたかられるのかな?」
「間違いないな。でも、1000オーロはある訳だし、ちょっとくらい別にいいじゃん」
「それでも足りるか心配なんだよ!」
ドレスの時の一件ですっかり尻に敷かれてるな。傍から見れば悪くないカップルなんだが。
「マスターはユウタとレベッカの仲、応援してるの?」
「レベッカも遊びたい盛りだし、ユウタも悪い奴じゃ無さそうだからな。これを機に少しはあの子も落ち着いたらいいんだがな」
マスターは放任主義のようだ。だからこそあの性格に育ったのかもしれないが。しかし女の子のオシャレって時間かかるな。何か飲んで待つか。マスターにアップルジュースを2つ頼むと男同士での打ち合わせを始めた。
「柊はレベッカと一緒か、だと土地勘なんかは心配無さそうだな」
「陽はニジエさんとだろ? 大丈夫なのか?」
「いっそダブルデートにするか? 少し残念だけど失敗は少ないかも」
「俺も賛成、話が続かなかった時とか何とかなりそうじゃん」
「こっちの風習もよく分かってないし、レベッカなら慣れてるだろうしな」
「もし、ニジエさんが不満そうなら、その時は別れて行動とかもありじゃん」
男同士、2人共デートの経験は無いのでぎこちなさは否めない。
「夜はダンスパーティーもあるからな。今日は闘う日よりキツそうじゃん」
柊が漏らす。確かに剣をふるうよりデートの方が大変な気がしてきた。あれだけ浮かれてたのに、現実は厳しい。夢だけど……
しばらくすると来栖先輩一行が入って来た。今日は古城の調査に行くのかな? 来栖先輩に声をかけてみる。
「おはようございます。今日は例の古城に行くんですか?」
「いや、かなり消耗品が必要みたいだから、その資金稼ぎに行こうと思ってね。香苗も慎重に行動してくれるらしいからさ。そっちは休みかい? デートかな」
ズバリと聞いてくる、何かアドバイスを貰えないだろうか。
「来栖先輩はデートとかってどうしてます?」
「さあ? したことないから分かんないな」
まさか来栖先輩がデートしたことないなんて。多分、新堂の仕業だろうが。新堂は来栖先輩の陰からニタニタこちらを見ている。コイツわかってやってるな。
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