夢i-2

「そんなことより依頼よ。魅了回復ポーション山ほど必要なんだから」


 新堂は俺の言うことをちゃんと聞いてるようだ。来栖先輩は9000オーロの依頼を受けるとすぐ行ってしまった。しまった。新堂にデートのコツとか聞けばよかったな。多分有料になるが……

 ジョッキが空になるころ、レベッカがこちらに来た。いつもの三つ編みでなく、ストレートヘアにバレッタをつけている。服も以前、柊に買わせた若草色のエプロンドレスだ。


「おまたせ~、似合うでしょ~。これユウヤからのプレゼントなんだよ~」


 確かに似合ってる。柊は見惚れてた。


「おい、柊、なんとか言えよ」

「あっレベッカさん。良く似合ってますよ」

「ありがと~、後はニジエが来れば出発だね~」


 いつもより時間がかかるな。やはり服を選んでるのだろうか。


「レベッカ、すまんが俺達はルンレストにはあんまり詳しくないんだ。どっかいいとこあるかな?」

「今日は大通りで色々出し物があるからね~それを一通り見て、お昼食べたら。服を取にいかないと~。もう仕立て終わってるだろうからね~」


 そう言えば礼服を頼んでたんだっけ。お昼食べた後じゃ早い気もするが。ドレスに着替えるのにも時間がかかるんだろう。化粧なんかにも時間がかかりそうだ。そんなことを話してると、淡いオレンジ色のチュニックに長いスカート姿のニジエが入って来た。服は地味だが、ニジエが着てると花が咲いたように見える。


「お待たせしました。どの服着ていこうか迷っちゃって」

「とっても似合うよ。そう言えば、レベッカや柊と話したんだけど、今日は4人で回ろうと思ってさ」

「2人じゃないんですね……そうですね。レベッカさんに案内してもらった方が楽しめそうですもんね」


 ニジエは2人じゃないことがちょっと残念なようだ。これは今度穴埋めしよう。

 4人揃ったところで出発だ。レベッカが先頭に立ち、あれこれ紹介していく。まずはジャグリングからか。ボウリングのポールのようなクラブを6本お手玉のように巧みに操り、最後に広げた両腕に全て立たせて乗せる。思わず拍手をしてしまう。目の前に置かれた帽子に銀貨を投げ入れる。お次は子犬のダンスだ。バイオリンに合わせて4匹の子犬が回っては立ち上がる。ニジエは気に入ったのか目を輝かせて見入っている。確かに可愛いな。最後に4匹の子犬が塔を作り子犬のダンスが終わった。ニジエはひと際大きな拍手を送り、5枚もの銀貨を帽子に投げ入れる。多すぎじゃないかと思ったが、本人が気に入ったのならそれでいいのだろう。

 次の出し物を探しているとレベッカが声をあげる。


「あ、あれ食べたい~!」


 近づいてみると丸いワッフルのような焼き菓子が露店で焼かれていた。看板には【ブテーロ・クーコ】と書かれている。試しに4つ買い、1人1つ食べてみるとサックリとした歯触りに、バターが香りその後、ふわっとした生地の感覚が続く。これは確かに美味い。


「私、これなら5個くらい食べちゃえます!」


 ニジエも大絶賛だ。だが周りをみると様々な露店が並んでいる。せっかくだし、他の店も食べてみようと提案する。皆異議は無いようだ。

 パイにダンプリング、ジュースに蕩けるキャンディ。何だかこのままじゃ昼食が入らなくなりそうだ。

 ひと際大きな人だかりを見つけ行ってみようと提案したがレベッカに却下された。何故か聞いてみると、


「あれはネズミ虐めのギャンブルだよ。私、残酷なの見たくないな~」


 なるほど、そんなものまであるのか。何かで聞いたことがある。確か制限時間内に犬が何匹のネズミを殺せるか賭けるんだっけ。確かに悪趣味な見世物だな。しかし、意外に人気があるようだな。もしかしたら思った以上に娯楽は少ないのかもしれない。


「一通り回ったし、ご飯にいこ~。美味しいお店あるんだよ~」


 まだ食べるのか。歩きながらだから、意外に腹はすいている。レベッカのおススメならいい店だろう。


「私、あんまり食べられないかもしれません」


 ニジエは小食だし無理もない。


「大丈夫、大皿で頼んでシェアすれば、ユウヤとタツヤが食べてくれるよ」


 そう言って小奇麗な食堂に入る。レベッカが3品程注文し、出てきたのはサラダにチーズペンネ、ソースで煮た肉の塊だったが、大皿と言うには一回り小さかった。

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