夢h-4
「ニジエは感知お願い。フォーメーションはいつも通りに、柊はニジエを守って。中に入るぞ」
俺は慎重に扉を開ける蝶番が嫌な音をたてながら開く。すると中は、深紅のカーペットに綺麗な白の大理石で整っていた。まるで銀の塔を思い出す。荒れ果てた外とは大違いだ。気付くと目の前にニジエがいる振り返っても誰もいない。いつ前に出たんだ?
「こんなに綺麗なとこだったんですね。タツヤさん奥に行ってみましょう」
ニジエに手を引かれ奥へと進むと、そこにはキングサイズのベッドがあった。城に入ってすぐに寝室? なんだかおかしいが、そんな事より目の前のニジエが気になる。既にローブを脱いで、チュニックの首元を開いていた。
「おい、ニジエ、ここは安全かどうか解らないんだ。装備は外しちゃダメだよ」
「何言ってるんですか? こんなに綺麗な場所、安全に決まってるじゃないですか。タツヤさんもそんな重苦しい剣置きましょうよ。鎧だって必要ありませんから」
そう言ってニジエは俺の頬に手を触れる。暖かい。なんだか細かいことはどうでもよくなってくる。ニジエは更に胸元を開く。思っていたより大きいな、着痩せするタイプなんだろうか。
「女の子に恥をかかせる気ですか? タツヤさんも脱いで気持ちよくなりましょう。私初めてなんですから優しくしてくださいね」
理性にヒビが入る。手から剣が滑り落ち、急いでマントを外そうとする。すると頭から水をぶっかけられた。
「何してるんですか! しっかりして下さい!」
後ろから怒号が響く目の前の風景が変わっていく。荒れ果て蜘蛛の巣が張ったベッドの前に鼻が長く、細い尻尾に異様な爪が生えた醜い老婆がいた。
まさか幻覚か、急いで剣を拾い老婆に突き刺す。悲鳴と共に倒れ、光となって消える。なんだこのモンスターは。
「急いで下さい! 柊さんは隣の部屋です!」
ニジエに急かされ隣の部屋に入ると老婆と柊がキスをする寸前だった。急いで老婆を斬る。
「おい、陽! レベッカさんを斬るとはなんのつもりだ!」
「お前よく見ろよ。それがレベッカか?」
「え? あああ、ババア!」
ようやく気付いたようだ。柊の貞操は守られたようだ。見回すと城内は荒れ放題だ。何がおきてるんだ。
「2人共、【サキュバス】に魅了されてたんですよ。私も【インキュバス】に声をかけられましたけどこの杖のおかげで丸わかりでした」
多分、そのインキュバスはニジエの水の魔法で倒されたんだろう。この古城はサキュバスやインキュバスの巣ってとこか。
「2人共どんな幻覚みてたんですか? こんな場所で装備外そうとするなんて」
本当の事は言えない。ニジエに迫られてましたなんて、口が裂けても言える訳が無い。恐らく柊はレベッカに迫られる幻覚を見ていたんだろう。
「気にしないでくれ。それよりこの城は怪しいな」
「なんか誤魔化してませんか? 気になるんですけど……」
「余計なこと考えてる場合じゃないぞ。幻覚を見抜けるのはニジエだけなんだからな」
「それもそうですけど」
「細かい話は後だ。この城を探索しよう」
ちょっと強引だったかもしれないがこの際、一気に誤魔化してしまおう。あれは一時の気の迷いだ。しかしサキュバスって身近な人間に化けるのか。もっと色っぽい女性風だと思ってたが。
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