夢e-5
「なら、受けてみようか。マスター、バルナウルの街までは徒歩かい?」
「いや、ギルド専用の馬車で行くことになる。今から出れば向こうの閉門には間に合うだろう。ただし乗り合い馬車と違って聖水なんて撒かないからモンスターが出たら自力で対処しないといかんがな」
なるほど、移動に1日はかかる計算か。最低でも3日はかかるだろう。ならば2000オーロは高くないくらいなのかもしれない。
「どう考えても3日はかかるぞこの依頼。ニジエは本当に大丈夫なのか?」
「多分平気ですよ。万が一兄さんにばれたら怒られてきます」
う~んここまで言われると断りづらいな。
「じゃあ、それぞれ必要な物を準備しよう。ニジエは30オーロ貸すからこれで準備して」
「え、でも……」
「さっきローブ買うのに全額使っちゃっただろ? 俺達にとってもニジエの魔法は命綱なんだ。断るなら、この遠征は無しにしよう」
「解りました。お金は入り次第返しますね」
「じゃあ、それぞれ準備を済ませてから青銅の蹄に集合しよう」
こうして一旦解散となった。柊にマモーラと水筒を買わせて、番犬のねぐら亭をチェックアウトすると、ほんの少しの荷物を道具袋に詰めて再び青銅の蹄でニジエを待つ。
「そう言えば陽はあの体操やった?」
「ああやったよ。柊は?」
「俺は体操と更に本条先輩に言われた筋トレ。これから空手部だから手技も覚えろって」
「まだマシだ。俺なんて新堂とマンツーマンで特訓しろって」
「マジか地獄じゃんそれ。前なら羨ましいシチュエーションだったけどあの見た目にあの性格は詐欺じゃん」
「そう言えば、本条先輩ってこっちの世界にいないのかな? いれば滅茶苦茶頼りになるんだけどな」
「あの人はこっちでも修行してるんじゃないかね」
その可能性は大いにありうる。山籠もりが似合いすぎるタイプだ。
「そう言えば悠紀夫とノリはこっちのこと知らなかったな」
「あいつらは夜、ゲームしてるんじゃん」
何かが引っかかる。何だろうかこれは。
「お待たせしました」
柊とお喋りしてる間に準備を済ませたのか。ニジエが来た。
「準備はいい?」
「はい。マンダリーノのジュースにドライフルーツも買ってきました」
どうやら準備は万端らしい。マスターに出発する旨を伝えると準備をしていたのか2通の書簡を渡して言う。
「この細い1通は門近くの馬車の停留所でウチのマークが付いた馬車の御者に渡せ。もう1通はバルナウルのギルドで渡すんだぞ。こっちはクルス達がいるから心配するな」
心配なんて不要すぎる布陣だ。早いとこバルナウルに向かうべく俺達は馬車の停留所に向かう。黄色い布地に青い蹄の旗のついた馬車を見つけると、くたびれたオッサンのような御者に細い書簡を渡すと中身を確認する。
「お前さんらが救援ね。まあ、あのマスターの言うことなら間違いないんだろう。オラは戦えないからモンスター出たらよろしくな」
「解った。だからバルナウルの閉門前に頼むよ」
「へ~い」
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