現実k
現実k-1
朝起きると、身体中の節々の痛みで目が覚めた。疲労感も感じる、なんだこれ? 時計代わりのスマホを見ると8時を超えていた。 ヤバい! 完全に寝坊した。アラームは鳴り終えた後のようだ。誰か起こしてくれてもいいのに。軋む身体を抑え急いで着替えリビングに降りると母さんが立っていた。
「あら、達哉、まだ学校行って無かったの? 最近早起きだったから、もう行ったのかと思ったわ」
「ごめん、朝食食べてる暇無いから、弁当だけ頂戴」
「そういえば、昨日、お弁当食べなかったでしょ。買い食いでもしたの?」
「いや、ちょっと体調悪くてさ。今日は大丈夫だから」
「そうなの? あんまり体調悪いなら、休んでもいいのよ」
「今は問題無いよ。じゃあ、行ってきます」
母さんから弁当をひったくると、走って駅に向かう。身体中が痛む。昨日は無理矢理だが早く寝た筈だ。なんでこんなに痛むんだ? 電車に乗るとドアの上に置かれた液晶画面に昨晩、9時頃に全国各地で同時に人が気絶する事件があり、かなりの数の交通事故も起きたそうだ。政府はこれを集団ヒステリーであり、一過性の症状であると判断としたとのことだ。そんな単純な事件じゃないのだが、もしかしたら、既に政府やマスコミもアーマゲドンオンラインに蝕まれている可能性がある。随分いい加減な陰謀論だが、笑えない状況だ。
「ちょっと、アンタ! 他の女見てたでしょ!」
大声が聞こえ、そちらを見るとカップルらしき2人が喧嘩していた。なんだろう。違和感を感じる。そうだカップルが多いのは変わらないが、あちこちで言い合いしているのだ。なんでこんなにみんな喧嘩してるんだ? 昨日まではみんな目も当てられないぐらいイチャイチャしてたのに。そんな光景を目に電車から降り、学校へと走った。
「陽菜、アンタも遅刻?」
不意に後ろから声をかけられる。新堂、お前も遅刻か。それにしては余裕あるな。歩いて登校とは。
「お前、急がないと。せめて1時間目の授業には途中からでも出ないと」
「ちょっとそれどころじゃないのよね……」
「何かあったのか?」
「まず身体の節々が痛くて、それに身体も重いし。なにより来栖から気になるメッセがきたわ。これ」
新堂がスマホを見せてくる。俺は立ち止まりスマホ見せて貰うと。来栖先輩から右腕がおかしいと一文があった。新堂は昼に学食に来るように返信していた。
「おかしいと思わない? 私もなんだか向こうの体調を引きずった感じなの。陽菜は?」
「実は俺もなんだ。確かにおかしいな。こんなこと初めてだ」
「ニュースもそうなのよ。あんなに大勢気絶者がでて、ただの集団ヒステリーですって? 普通もっと調査するでしょ。なのに、対処がやたらおざなりなのよ」
全く同じ意見だ。更に俺の意見を告げる。
「それと気になったのが昨日までやたらイチャついていたカップルが喧嘩してたんだ。これも気になる」
「いきなり? 分かったわ。休み時間に調査してくる」
「頼むよ、じゃあ、教室に急ごう」
その時、無情にも学校のチャイムが鳴る。ああ、1時間目は欠席だ。
新堂と一緒に教室に入ると悠紀夫が皮肉を込めた言葉を投げかけてきた。
「陽。香苗と仲良く重役出勤か?」
「只の寝坊だよ。たまたま一緒だっただけ」
「ホントかよ、お互い一緒の夜を過ごしてたんじゃないか? くぅ~羨ましい」
「何言ってんだ馬鹿。それより昨日お前、気絶しなかったか?」
「もちろんしたぞ。だがそれが何の問題がある? 封印解除では当然のことだろ」
もう悠紀夫はヤバい。あんなことを当然というなんて、もはやずれ過ぎている。何だか、やたらと視線を感じる。男子の目だ。また新堂との関係についてか? それにしてはやたら攻撃的というか、目がギラついている。俺が新堂と一緒に遅刻したことでまた、尾びれ背びれついた噂が流れているのか? また妙な質問攻めに遭わなければいいが。だがこちらを睨むだけで休憩時間は終わってしまった。それはともかく、とりあえず、授業時間は身体の回復に当てよう。不思議なことに眠いと感じないが、うずくまって机で寝たふりしてるだけでも随分違うはずだ。
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