夢k-13
「さてと、最後に見張り役を立てないといけないんだけど、どうしようかしら。私達は学校があるけど、交代でやらないと」
「ニジエさんに頼んだらいいじゃん」
「それは絶対ダメ、ニジエには現実でお兄さんと接触してもらう必要があるし、ここからは砂漠らしいから、水の魔術師は生命線になるもの」
「あの、一晩くらいなら何とかなるかもしれません」
「どうやって?」
「今、撒いた聖水にエンチャントをかけるんです。触媒に出来たら、モンスターが嫌がる効果から、モンスターが逃げ出す効果に強化できます」
意外な提案だが悪くない。多少のリスクは伴うがニジエが出来ると言うならそれは可能なのだろう。
「そうね、ここに来た時点で多少の危険は承知だから、その案で行きましょう」
新堂が覚悟を決めたようだ。何故か腰から剣を抜くと号令を放つ。
「ニジエ、エンチャントをかけなさい」
そうか、戦術士の支援を利用するのか、それなら更に効果があがる。
「はい、聖なる水よ、私達を守って」
聖水撒いた部分がほのかに光る。暖かく守られる感触、今、間違いなくこの部屋は安全だ。
「みんな寝苦しいと思うが装備は着用して寝よう。万が一のこともあり得るからな。それじゃあ、また現実で会おう」
なんとかリーダーらしく最後を締めくくると、みんながシートの上に横たわるのを確認して俺は外に出る。
「陽、どこ行くん? もう寝ようじゃん」
「いや、便所。すぐ帰るから寝てろよ」
俺は外に出てみんなのいる建物から離れ、宙に向かって叫ぶ。
「出て来い! グリゴリ! これがお前の望んだ結果か!」
虚しく俺の声だけがこだまする。今日は聞きたい事が山ほどあるのだが現れないようだ。仕方ない、今日はもう寝よう。聞きたいことがある時には出てこないとは、ふざけた奴だ。
宿に戻ると、ニジエの寝息と柊のいびきが響く、急に新堂から、声をかけられる。
「誰よグレゴリーって、仲のいい知り合い?」
聞こえてたのか。また誤魔化すか。
「ああ、今日死んだ冒険者で仲良かった奴」
「ふうん、嘘ね。よく考えたら私、アンタのことほとんど知らないわ。好きな食べ物くらい教えなさいよ」
「あんま好き嫌いはないけど、エビフライとか好きかな」
「明日は無理だけど、いずれお弁当に入れてあげるから。もう寝ましょう」
「そうだな、おやすみ」
横たわると、長い一日だったと痛感する。しかし、鎧着たまま寝るもんじゃないな。睡魔よ早く来ておくれ。今なら抱きしめて寝てやるから。そんなこと考えてると、身体が浮かんでるように感じる。目覚めの時か今日の情報は明日整理しよう。そう考えると急に身体の浮く速度が加速する。さあ、現実に戻ろう。打開策はきっとある……そう信じて……
―――思えば遠くに来たもんだ。どこまで闘えば終わりが見えるのだろう―――
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