夢g-3
馬車はさっきのような緩やかな走りをやめ、倍近い速度で走る。こっちも凄い振動だ。ニジエは一揺れごとに身体が浮いている。キツイだろうが仕方ない。ここは我慢してもらおう。遠くにルンレストの城壁が見えてきた。おかしいのは城壁が黒くうごめいているように見えることだ。あれ全部モンスターか?
「もう少し近づいたら止めてくれ! ルンレストがモンスターに攻められてる!」
御者は驚くと馬車の速度を緩める。急停車は馬を痛めかねないようだ。少し近づくとハッキリ解る。ウェアウルフとオーガだこんな数処理しきれるのか? モンスター達は門に殺到している。門は閉じられ侵入を許さないようにしているが、オーガの丸太で殴られるのは破城槌を打ち込まれるのと変わらないだろう。門に近づくと複数の冒険者達といつもの門番の兵士が奮戦している。門前はさながら大混戦だ。
「浩二さん、耐えて、来栖! オーガの首を狙って」
喧噪の中良くとおる声が響き渡る。新堂だ。どうやら来栖先輩のパーティーは近い。俺もあらん限りの声で叫ぶ。
「新堂! 助けに来たぞ!」
ポニーテールが揺れこちらと目が合う。どうやら間に合ったようだ。
「陽菜と柊はウェアウルフを中心に相手して。ニジエは浩二さんに治癒魔法かけた後、門に水の防壁を。後ろは他のパーティーが相手してるから前の敵に集中して」
いいながらウェアウルフの首を切り落とす。俺達も負けてられない。ニジエを守りつつ来栖先輩のパーティーと合流する。ニジエは言われた通りに治癒の後、門に水の壁を張った。俺達はウェアウルフの相手だ。昨日のケルベロス戦で肝が据わったのかもう怖いとは思わない。
「柊、前に出過ぎないで。浩二さんとペアだと思って。陽菜は来栖と一緒にオーガにかかって。こいつら撤退を始めたわ。あと一歩よ」
しゃくだが新堂の指揮は的確だった。俺はオーガの手首を切り落とす。同時に来栖先輩は首元を突く。辺り一面血を吹きだしては光り、消える。モンスターの死体が残らないのは幸いだ。これなら足元の心配をしなくていい。いや、余計なことは考えずとにかく斬ろう。俺に出来るのはそれだけだ。身体が軽い。これが新堂の能力か。
「シュート!」
柊が叫びながら蹴る。ウェアウルフが一撃で真っ二つになる。もしかしてあの掛け声もなにか能力と関係あるのかもしれない。来栖先輩の長大な剣がオーガを縦に真っ二つに割る。あれはあの武器ならではの技だろう。俺はオーガの武器を減らすしかない。丸太を持つ手を切り落とせば脅威は格段に減るのだ。
「敵、撤退。深追いしないで。来栖、陽菜、柊は残党狩りを。浩二さんはニジエの元に」
ニジエを守るのは俺がやりたいとこだが、仕方がない。鈴木先輩のが防御は固いだろう。モンスター達はチュレアの森方面に散り散りに逃げている。後はオーガ3匹にウェアウルフ5匹といったところか。これなら勝てる。根拠はないが、この高揚感がそうさせるのだ。
「来栖、オーガを2匹陽菜とペアで片づけて。ニジエは魔法でオーガを1匹倒したらウェアウルフに水をぶつけて。柊は囲まれないように確実にウェアウルフを1匹ずつしとめて」
後ろからレーザーのように線が走る。昨日の魔法をもう物にしたのか。詠唱はよく聞こえないが、頼りになる援護だ。1匹のオーガの頭が爆ぜる。これで後2匹。
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