第7話 鍛冶

連日の地獄とも呼ぶべき戦闘訓練。しかし、毎日という訳ではない。適度な休息も必要との事で、3日訓練すると、1日休みがやって来る。ボロボロになった身体を労わり、ゴロゴロして過ごす事も考えた。だが前世の記憶があるせいか、無駄に時間だけが過ぎて行くという状態は我慢がならなかった。


しかしながら、村の外に出るのは許されていない。そうなると家の中にいるか、村を徘徊するしかないのだが、俺は後者を選択した。小さな村なのだ、村人とは仲良くしなければならない。都会ならば無理に人と関わる必要も無いのだろうが、毎日顔を合わせるのだから損は無いはず。


そんな訳で、とりあえず村の中を散策していると、『カンカン』という金属音が聴こえてきた。鍛治の音かもしれないので見に行ってみよう。


村はずれの建物に辿り着くと、ドワーフの爺さんが出て来た。オレが呼んだとか、気配を察知されたとかではない。後で聞いたら、単なる気分転換だったらしい。


「おう。ルークじゃねえか。こんな所でどうした?」

「こんにちは、ランドルフさん。何の音か気になって来てみたんだよ。」

「そうか。狩猟用の武器を作っておったのさ。・・・見てみるか?」

「うん!見てみたい。」

「そうかそうか。じゃあ中に入ってな。少し休んだら行くからよ」


ランドルフ爺さんが武器を作ってたのか。とにかく中に入ってみよう。


工房と思われる建物の中に入り、その光景に圧倒される。壁や机の上には、ありとあらゆる武器、防具が並べられていた。暫く呆然としていると、ランドルフ爺さんが戻って来た。


「吃驚したか?村の連中が使うモンは、全部ワシが作っとるんじゃよ。武器、防具や魔道具までの全部よ。」


前世で剣術を嗜んだ者として、これらの武器が業物である事が容易に理解出来た。名刀と呼ばれた刀を沢山見てきたが、ここに並んでいる物はどれも劣っていない。


「ランドルフさんは腕利きの職人さんだったんだね。どれも名剣と呼べる代物だよ。」

「なんじゃ、ルーク。只のガキには思えんと感じておったが、やっぱり只のガキじゃなかったか。」


ランドルフさんは笑って指摘した。そうか、オレはまだ5歳だった…。それよりも、ランドルフ爺さんが気になる事を言っていた。聞いておかないとな。


「ところで、さっき魔道具って言ったよね?それって何?」

「ん?あぁ、魔石を利用する道具の事じゃな。魔石を嵌め込んで魔法や回路を組み込むと、色んな効果を生み出せる道具になるんじゃよ。」


コレ、作り方とか習っておくべき案件だよね?電気の無い世界で、不自由無く料理をするには、魔道具を活用しないといけないはずだ。何とか頼んでみよう。


「面白そうだね!時々見に来てもいいかな?作ってみたいし。」

「何じゃ、興味があるのか?…ルークになら教えても構わんか。いつでも来るといい。まぁ、作ってみるのは、自分で素材を集められるようになってからじゃな。」


こんな田舎なんだから、素材は無駄に出来ないよな…。残念だが、作り方だけでも先に覚えておこう。人生、いつ何が起こるかわからないからな。


ランドルフ爺さんに宜しくと答えて、作業を見学する事となった。

こうしてオレは村を出るまでの長期間、時間の許す限り鍛治と魔道具作製について学んでいく。

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