第21話 奴隷制度

ナディアの説明によると、帝国では帝国籍の人間以外の全ての種族は差別の対象らしい。しかも、他国から誘拐して来ては奴隷を増やしているそうだ。人間も含めて。

帝国領内に入る際にも、様々な手口を使っては犯罪奴隷に仕立て上げるらしい。無事に入国したければ、袖の下ってヤツが必要になるとか。無事に入国してからも問題は多いらしく、獣人のナディアやエルフのティナは避けたい国だそうだ。オレとしても、そんな国に2人を連れて行きたくはない。それなら遠回りしようと思っていると、ティナが驚く事を言い出した。

「私とナディアは迂回しますので、ルークは帝国を抜けて頂けませんか?」

「ちょ、何を言い出すのよ!?どうしてルークだけを、危険な国に向かわせるの?」

「帝国に行けば、優秀な奴隷・・・人材が手に入ります。ルークには奴隷を購入して欲しいのです。」


ティナの発言に、オレはかなりイラっとしてしまった。


「・・・オレが奴隷って制度が嫌いなの、ティナは知ってるよね?」

「それは知っています。」

「だったら・・・」

「だからこそ、奴隷を救う為にもルークに購入して欲しいのです。とは言っても、あまり大人数はやめて下さい。移動速度が落ちますから、それでは逆に危険です。」


救う為に奴隷を購入する、か。その発想は無かったな。オレが購入してすぐに開放すれば、奴隷を救えるもんな。名案じゃないか。移動速度だって、奴隷から解放すれば無関係でしょ。


「ちなみに、奴隷は購入しても・・・すぐには解放出来ませんよ?」

「何ですと!?いや、何故わかった!?」

「クスクス。ルークの考えそうな事ですから、何となくわかります。」


畜生、名案だと思ったのに。良くわからないので、ナディアに説明を求める視線を送ってみる。ナディアまで笑ってる。畜生!グレてやる!!


「あはは。そんな事考えてたの?いい?主人が変わった奴隷は、最低でも半年間解放出来ないようになってるのよ。」

「半年って、一体どうして?」

「主に犯罪奴隷の話だけど、過去に仲間が助けに来て解放される事件が頻発したらしいわ。そうなると足取りも追えないから、出入国でチェック出来るように考えられた仕組みみたいよ。」


半年あれば、国内に潜伏していても見付けられるって事だろうな。色々と考えられている。自分とは無縁の制度だからなのか、オレ程度のの想像は対策されているらしい。オレが唸っていると、ティナが注文をつけてきた。


「解放するのは女性、人数は出来れば3人まででお願いします。・・・あとは、ルーク好みの美人が望ましいですね」

「それって、何か意味はあるの?」

「それはルークではなく、我々の問題です。ナディアは美人ですから、周囲の視線を分散させる事が出来れば、ナディアの特徴も薄れるでしょう。それに、ルークが通学している間は私達のみとなります。ナディアに変な真似をしないよう、男性は避けたいですから。」


まぁ、男嫌いのティナさんですからね。本音は隠しておきたいって事かな。オレだって、男よりは女の方が良いに決まっている。


「まぁ、ティナがそう言うなら・・・。」

「ありがとうございます!」


ティナが嬉しそうにしているから、言われた通りにしよう。奥さんを喜ばせないとね。もう1人の奥さんは、何か考え込んでいるようだ。オレの視線に気付いたようだが、ティナはオレ達に構わず話を進める。


「それでは、今後の方針を決めてしまいましょうね。」


この後、オレ達はカイル王国を出てからのスケジュールを決めていった。

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