Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

第14話 ギルドマスター

受付嬢が走り去り、オレ達はカウンターの前で途方に暮れていた。他の受付嬢達も、何事かとこちらを伺っている。目立つような事は避けたいんだけどなぁ。

「くすくすっ。やはり騒ぎになりましたね。」

「ティナ、笑い事じゃないよね？」

「まぁ、心配しなくても大丈夫ですよ。ギルドマスターを呼びに行っただけでしょうから。」

ギルドマスターを呼びにって…それって大丈夫なのか？でもまぁ、なるようにしかならないか…。そんな会話を交わしていると、先程走り去った受付嬢が、狐の獣人と思しきナイスバディな美女を連れて戻って来た。白い毛だから白狐になるのかな？

「ギルドマスター、こちらの方です！」

「…貴方が登録希望の？随分と若いのね。私は王都ファーニスのギルドマスターでナディアって言うのよ。」

そう言えば、受付嬢の名前も知らないな。オレも名乗ってないし。とりあえず、この美女がギルドマスターでナディアさんか。むさ苦しいオッさんじゃないから、ちゃんと覚えた。おっと、自己紹介しておかないとな。

「初めまして、ナディアさん。オレはルークと言います。こちらが…」

「あなた、戦姫じゃない！10年以上も噂を聞かなかったから、死んだなんて噂も出ていたのに。今まで何処にいたの！？」

「戦姫だと！？」

「本物かよ！？」

「ギルマスがそう呼んでるんだから本物なんだろ？」

「マジかよ…すげぇ美人だから声かけようと思ってたのに。」

「やめとけって！今まで戦姫に手を出そうとして返り討ちにあった男は、数え切れないんだぞ。しかも、男に興味を抱いた事は、一度も無いって話だ。」

「じゃあ、一緒にいる男は誰だ？」

「知らねぇよ。」

物凄く興奮してるけどナディアさん、ティナを見て戦姫と呼んだな。これって所謂『異名』ってヤツか？それより周囲にいた冒険者の野郎共が、ティナについて何か言ってるな。しかもオレに飛び火してきやがった。これはアレだ。無視だ。

「ナディア、お久しぶりですね。壊し屋ナディアが今はギルドマスターですか…月日の流れは早いものですね。」

「ちょ、その呼び方はやめてよ！いつの話をしてるの！！」

「アレはルークが産まれるよりも前ですから、かれこれ…」

ティナが女性の触れてはいけない部分に触れようとしているので、ここはナディアさんを助けておこう。

「ティナ。他の人に迷惑が掛かるから、昔話は今度にしない？」

「え？あぁ…それもそうですね。ごめんなさい、ルーク。」

「いや、オレは大丈夫だよ。」

とりあえず話題を変える事は出来たから、あとはこの騒ぎを何とか出来れば…なんて考ていたが、事の発端はオレだという事に気がついた。

「そう言えば戦姫、こっちの…ルークと言ったかしら？一体どんな関係？弟子でもとったの？」

「いいえ。ルークはもうじき私の旦那様となる人です。」

「旦那様？もうじき？…貴女、何処かの貴族に仕えてるの？」

「？………あぁ。旦那様違いですね。」

「は？旦那様違いって、まさか…。」

「えぇ。夫の方です。」

そう言ってティナは、頬を赤らめて俯いてしまった。可愛い過ぎる。抱きしめたい衝動に駆られるが、人前なので我慢する。

「「「「「「「「えぇぇぇぇぇ！」」」」」」」」

ギルドでは、オレとティナ以外の絶叫が響いた。