第256話 閑話 目玉は焼きません4

ルビアを見送り、その場で待つ事数時間。直に夜明けといった時間帯になって、ようやく最初の帰還者が姿を見せる。いや、回答者と表現した方が適切かもしれない。


「お帰り。」

「あぁ、ルーク。ただいま戻りました。」

「疲れました〜!」

「加護が無ければ数分と保ちませんでしたね・・・。」

「エリド村が近いからな。それで成果は?」


疲れ果てた様子のスフィア、セラ、シェリーに苦笑しつつ、オレは卵がどうだったのかを確認する。


「コカトリスの巣を発見したのですが・・・」

「私達だと近付くのも一苦労で・・・」

「5つしか確保出来ませんでした。」

「そっか。まぁ、上出来なんじゃないか?」


流石は常識人グループ。多分オレと出会うまではコカトリスの卵を食していたんだろう。危うく褒めそうになったが、勝手に飛び出して行った事を考慮して辛口評価にしておく。


夜通し走り回ったせいか、その場でへたり込む3人。飲み物を渡して労い、オレは次なる回答者を待つ事にした。



遅れる事十数分。予想通り、戻って来たのはエミリア、クレア、リノアの3人。この3人も常識人なので、特に不安は感じない。


「お疲れさん。」

「あ、ルーク様!」

「やりましたよ!」

「大量です!!」


満面の笑みでアイテムボックスから今回の成果を取り出す3人。確かに大量なのだが、オレは目の前の光景に思わずツッコむ。


「ちっさ!!」


ハチドリよりも一回り小ぶりな卵。何コレ!?卵の子供!?とか思ってたら、意外と博学なクレアが答えてくれた。


「これはハッチと呼ばれる鳥の卵です!」

「ハッチ?」


詳しく聞くと、一応魔物との事。体長3センチ程の鳥で、2〜3ミリの卵を数個産む習性があるとか。温めるのは1個のみで、残りは囮なんだとさ。巣から離れた場所へバラバラに産み落とすから、拾うのに時間が掛かるらしい。


「殻ごと食わない限り、食用には適さないと思うんだけど・・・食べられるの?」

「「「え?」」」

「え?」

「「「・・・わかりません。」」」

「わか、え?・・・えぇ!?」


これでもか!って程の説明だったから、てっきりクレアは知ってるんだと思ってたのに。追求してみた所、卵と言ったらコカトリス。ここまではちゃんと知ってたらしい。だったらコカトリスを探すと思うのに、想像の斜め上を行くのがオレの嫁。


コカトリスは無理だから、とりあえず違う鳥の卵を探そうってなったらしい。でもリノア達がどうにか出来る鳥は此処にいない。で、考えた末、確実に集められるハッチの卵を集めたのだそうだ。


「食えない事も無さそうだけど、調理の手間を考えるとなぁ・・・。ギリギリ正解ってところかな?」

「「「ほっ。」」」


無駄にならなかったとわかり、胸を撫で下ろす3人。しかし罰は与えなければならない。


「けどまぁ、調理の際には3人に殻を割って貰うよ。」

「「「えぇぇぇ!?」」」


ミニチュアサイズの卵を100個割れば1人分にはなるだろう。料理人はオレだろうって?嫌だよ、面倒くさい。そもそも男の指で出来る作業じゃない。



落ち込むリノア達を尻目に、オレは残るメンバーについて考える。ルビアはニワトリ以外、絶対に手を出さないと言っていた。だからルビアは除外しよう。


ドキドキさせてくれるのはフィーナ、ナディア、ティナの3名。行動が全く読めないのがリリエル、ユーナ、カレンだろう。即ち、ここからが本番である。



オレが気を引き締めた時、タイミング良く戻って来た人物の姿が目に入る。


「次はユーナか。獲って来たのは何の卵なんだ?」

「ジャイアントスパイダーの卵です!」

「「「「「ひぃっ!?」」」」」

「プチプチして、食感が楽しめるんですよ?」

「「「「「きゃぁぁぁ!!」」」」」

「・・・・・。」


考えなくもなかったのだが、虫はやめて下さい!嫁さん達がプチパニックなので、このやり取りは割愛。ある種の修羅場だった、とだけ言っておく。学園長の妹と言うより、秘境出身なのが原因だろう。ちなみに親はカニの味らしい。普通の感覚なら、食べようとは思わないな。



気を取り直して、お次はリリエル。全員アイテムボックスに収納しているので、取り出すまではわからない。はずなんだが・・・


「リリエル、は・・・随分と濡れてるみたいだけど?」

「濡れてると言うより、何だかベトベトしていませんか?」

「回収するのに手間取っちゃった!」


そう言って取り出された卵は、透明な粘液に包まれていた。卵自体も透明で、中心に黒い球体がある。


「これ・・・カエルの卵じゃねぇか!」

「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」」」」」

「ゼリーみたいで美味しそうでしょ?」

「捨てて来なさい!!」


完全なパニックなので、こちらも当然割愛。代わりに料理人としての知識を披露すると、カエルの卵は加熱すると全部透明になるらしい。美味いという話も聞いた事はあるが、試した事は無い。


爬虫類はダメと言ったが、両生類はノーマークでした。



残るは比較的まともそうな2人と、やらかしてくれそうな2人。痛む胃を抑えつつ、ふと思った事を呟いた。


「しかし見事に被らないな。けど、そろそろネタ切れだろ?」

「「「「「ネタじゃないから!」」」」」


森の奥で打ち合わせでもしてるんじゃないかと思っていたが、みんなに叱られてしまった。プンスカしているみんなの機嫌をとっていると、フィーナとナディアが揃って帰還した。


「あら?ルークじゃない。」

「来てたのね。」

「・・・あまりにも心配でな。」


オレの言葉に、フィーナとナディアが嬉しそうな笑みを浮かべる。違うよ?何の卵を持ち帰るか心配したんだからね?・・・言えないけど。



さて。この2人は一体どんな卵を持って来たのだろうか?結果如何によっては、嫁さん達全員を労う事も考えるとしよう。え?ティナとカレンが残ってるって?あの2人が最後に残った時点で、完全にネタ要員じゃないか・・・。





ーーーーーーーーーー あとがき ーーーーーーーーーー

投稿の度に完結処理するのが面倒なので、このまま連載中にしておきます。どうせあと1話だし・・・。


次話はあとがきなんて無いので、ここで告知を。次回の投稿を以て、カクヨム、アルファポリス、小説家になろうでの投稿を完全に終了します。さらには年内いっぱいを目処に、公開中の話を削除するつもりです。どの程度かは未定ですが、半分は確実に非公開となるでしょう。


何度も言いますが、本気でPV数やランキングに一喜一憂する日々に疲れました。散々したので、もうブログの紹介もしません。ただこれからは、のんびり5年くらい掛けて完結まで持って行けたらなぁ・・・と考えております。


とにかくこれまで応援して下さった方々、本当にありがとうございました。最後の1話は日曜日になると思いますが、それまで気長にお待ち下さい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る