第36話 帝国第一皇子
翌日は王都で1人、朝から食材と調味料の買い出しをした。大人数に連日振舞ったお陰で、ストックしている分が心許なくなってしまった為だ。補充と言わず、買えるだけ買っておくつもりだ。
現在、ミリス公国とお隣のアルカイル帝国の国境では、小さい争いが頻発しているらしい。近々、大きな動きがあるのではないか?と噂が広がっているようだ。つまり、越境に際して周辺の村や街での物資の補給がままならない可能性がある。かなりの散財となったが、あまり気にならなかった。使い切れない程の金はあるのだが、スフィアが助けた礼にと、大金をくれたからだ。
買い出しを終え、王城の厨房を借りて料理のストックをしつつ、王宮の料理人に指導を行っている。中でもスイーツに関しては、かなりの力の入れようだった。ここでも女性はスイーツに目がないらしい。
カイル王国で店を構えようと思っていたが、この分だとミリス公国になるのかな?
そんな生活を続けていたが、数日後に状況が変わった。アルカイル帝国から、突然の使者がやって来たらしい。どうも友好目的では無さそうで、シェリーがオレを呼びに来た。
「ルーク!?一緒に謁見の間まで来て!」
「シェリー?一体どうしたの?」
「帝国の第一皇子が・・・交渉に来たの。」
「交渉?」
「事実上の降伏勧告よ。」
「ふ~ん。でも、オレが行ってもね・・・口出しする訳にもいかないでしょ?」
「そ、それはそうだけど・・・。」
「ちなみに、帝国と戦争になったら勝てるの?」
「・・・おそらく勝てないでしょうね。帝国兵は50万人、我が国は15万人。戦力差は圧倒的よ。」
3倍強かよ。まぁ、軍略次第では敗北を避けられるかもしれないな。孔明、出番です!・・・いないけど。
とりあえず、何か出来る事があるかもしれないし、謁見の間に行ってみますか。
入室すると、見た目が気持ち悪い男がゲロゲロと鳴いていた。あ、比喩です。男の見た目が丸々太ったカエルに似ていたもので。
「スフィア女王陛下!さぁ、どうするつもりだ?我が国と全面戦争をするのか!?今降伏するのなら、貴女を私の側室に加えてやろう。毎晩いい声で鳴かせてやろうと言うのだ。私に感謝して欲しいものだ!はっはっはっ!!」
「何故私が貴方のような男の側室になどならなければいけないのですか!?」
「ほぅ?ならば、アルカイル帝国と全面戦争という事で構わないようだな?いいだろう。我々が勝った際には、貴女を私の性玩具にしてやろう。くっくっくっ。」
カエル如きが、オレの女をどうするって!?完璧にキレた。大人しく通過してやろうと思っていたが、気が変わった。
「おい、そこのカエル。」
「ん?カエルだと!?貴様、私をアルカイル帝国第一皇子と知っての暴言か!?」
「オレの女に手を出すヤツは、例え女神であろうと許さん!その戦争、オレが買ってやる!!」
「わはははは!貴様1人で何が出来る!?」
「そうだな・・・帝国を地図から消してやるよ。」
「くだらん!貴様など相手にしてられるか!!お前達、そいつを殺せ!」
「ルーク!!」
スフィアがオレの身を案じてくれているようだが、護衛2人程度は相手にもならない。抜刀し、護衛2人の首を刎ね、ついでに皇子の両腕を切り落とす。死なれたら困るので、回復魔法で傷口を塞ぐサービス付きだ。痛みを消すのはサービスに含まれません。
「なっ!?・・・・・え、え?・・・・・ぐわぁぁぁぁ!!」
腕が無い事に、やっと気付いたらしい。
「おい、カエル!良く聞け。オレの名はルーク=フォレスタニア。1週間後の日の出と同時に、国境から王都へ真っ直ぐ進行する。無関係な国民や奴隷は、進行方向から外れた街や村へ避難させておけ。残ってた場合は、躊躇なく皆殺しにする。わかったか?」
「き、貴様ぁぁぁ!オレ様にこんな事をしておいて、楽に死ねると思うなよ!!」
「わかったらさっさと帰れよ!!」
後方に控えていた帝国の使者へ向けて皇子を蹴り飛ばし、歯向かおうとしているもの達に殺気を放つ。全員ガタガタと震えていたが、殺気を消すと一目散に逃げて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。