第35話 転移魔法
「この国の民である以上、立場は私が上になります。そして私は、まだ女王を続けなければなりません。勿論、セラとシェリーにも力を貸して貰いたい。ですが、王女が愛人では周囲が許さないでしょうから、側室として迎え入れて頂きます。そして、セラとシェリーが私と同じ立場であるのは問題です。故に、2人には愛人で我慢して頂くしかないのです。」
な、なるほど・・・ってなるかぁ!アホかぁ!!でも、2人はオレとは違う考えのようだ。
「私達は構いません。」
「ですが・・・お願いがあります。」
「お願い?オレに出来る事ですか?」
「はい。もしも子供が産まれたら、ルーク様の子供であると認知して頂きたいのです。」
「私達はどういう扱いでも構いません。ですが、子供には幸せになって欲しいんです。」
この世界の女性って、本当に素敵な人が多いと思う。手を出した以上は責任持ちます。
「オレは、セラさんもシェリーさんも大切にします。子供が産まれたら、ちゃんとオレとの子供だと認知もします。責任もとれないのに、手を出したりしませんよ?」
「「ありがとうございます!!」」
2人共本当に嬉しそうだ。頑張る理由が増えました。・・・あれ?スフィアが側室になるって認めた事になるんじゃね、これ?
「良かったわ!これで一安心ね!!それで・・・肝心の、毒見の結果はどうだったのかしら?」
「はぁ!?ちょっと、何聞いてんの!?」
「それはもう・・・最高でした。きゃっ!」
「陛下にも是非味わって頂きたいです!」
「ちょっと!2人共、何言ってんの!?」
「それは楽しみね・・・。今日明日は私に譲って頂戴!?その後は、順番にしましょう?」
「「ははっ!!」」
何なの、この主従は?オレを無視して進め過ぎでしょ!?
その夜はヤケクソだったのと、スフィアが2人以上の素晴らしさだった事もあり、ハッスルしたとかしないとか。翌日も王城の豪華な部屋にテンションが上がり、さらにハッスルしたとかしないとか。ダメだこりゃ!
その後は、約束通り日替わりでお相手させて頂きましたが、詳しい話は割愛します。
王城到着の翌日。オレは何と、転移魔方陣の前にいる。幼い頃、母に『存在しない』と教わった転移魔法である。実は、失われた古代魔法の中に存在したのだ。母も知らなかったのか、ワケあって嘘をついたのか。今度会ったら聞いてみようと思う。
とにかく今は転移魔法だ。王城の地下に、その転移魔方陣があった。国家機密らしいが、聞いてもいないのに教えてくれた。何でも、一度行った場所であれば、転移可能との事だ。ただし、転移先に魔方陣が無い為、一方通行との事。便利なのか不便なのか判断に困るが、調べていて判明した事がある。何と、古代魔法が読めるのだ。勉強した覚えはないが、何故か読めた。理解も出来た。理解出来るという事は・・・魔法として発動出来たのである。
これには、オレよりもスフィアが喜んでいた。学園を卒業するまでは、ほとんど会えないと思っていたのだ。頻繁に会う事が出来るとわかると、踊りだしそうな程だった。27歳との事だが、無邪気な笑顔を見ていると同年代ではないかと錯覚を起こす。
国家機密の転移魔方陣を見せてくれたのは、スフィアが本気でオレと人生を共にする覚悟なんだと受け取った。ならば、こちらも相応の何かを返さなくてはならない。ならばと思い、スフィア、セラ、シェリーの3人と向かい合う。
「オレから大事な話があります。オレに関する事です。」
3人は緊張した面持ちで頷く。
「実は、オレには姉がいるそうです。姉の名はカレン。オレが産まれた時に会った事があるそうですが、オレは当然覚えていません。今何処にいるのかわかりませんし、探している訳でもないです。いや、むしろ接触を避けています。」
「カレン様、ですか?お姉様なのにどうして・・・」
シェリーさんには理解出来ずにいるようだ。まぁ、普通はそうだよね。
「正確には、オレの名前はルーク=フォレスタニア。姉の名はカレン=フォレスタニア。」
「「フォレスタニア!?」」
「女神の・・・弟!?」
セラさんとシェリーさんは『フォレスタニアを名乗った事』に、スフィアは『姉の名』に驚いたようだ。
「姉は少々苛烈な性格をしているようで、婚約者達に危険が及ばぬよう、目立つ行動を避けていたのです。」
「苛烈、ですか?陛下は『女神』とおっしゃいましたが・・・?」
「カレン=フォレスタニア、通称『戦女神』。過去に単独で幾つもの国を滅ぼした、世界最強の名よ。」
「初めて聞きましたけど・・・。」
セラさんとシェリーさんは、『女神』の二つ名を知らないようだ。スフィアは世界会議に出席してるから知ってるみたいだな。ともかくオレは、過去の伝聞から現在に至るまでの経緯の全てを3人に話した。
「そう・・・婚約を発表してはならないのね・・・。」
「ごめん。姉の問題が片付くまでは我慢してくれるかな?」
「それは構わないんだけど、ルークは学園に通うでしょう?『女神』の件で、思うように動けないんじゃない?」
「う~ん・・・そもそも、もっと強くならないと勝てない気がするんだよね。」
「「「あれ以上!?」」」
3人共驚いているが、相手は数百年間世界最強の座に君臨している。遠目でも構わないから、自分の目で確かめてみたい。
「しかし、ルークもおそらく長命種。そうなると、私達も不老長寿の方法を探すべきですね。」
「ごめん、オレも探してみるよ。話は変わるけど、セラさんとシェリーさんはどうするの?今まで通り、近衛騎士団を続けるの?」
「あぁ、2人には女王直属の護衛に回ってもらうわ。ルークが来た時に、任務で会えないと可哀想でしょ?」
やはりスフィアは優しいな。出来る限り力になってあげよう。
「あの・・・出来れば我々に対する言葉使いも・・・」
「・・・女王陛下と同じにして頂けませんか?」
セラさんとシェリーさんからの提案だが、これはオレも賛成だ。今更他人行儀な応対を続ける意味は無い。
「わかった。じゃあ、セラとシェリーもね?」
「はい!」
「は、はい!」
側室とか愛人じゃなく、全員正妻で構わないと思うんだけどな・・・。
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