第193話 フラグ処理?
最高神の目論見を予想し、それに乗せられながらも自分達に出来る事をして行こうと決めたオレ達。まずは誰が何をするのか話し合う必要がある。
「じゃあ役割分担だけど・・・オレとカレンはライムから近い順に各国の街や村を回る、でいいんだよな?」
「えぇ。代われる者などいませんから。」
オレの意見にスフィアが同意してくれた。と言うよりも、同意せざるを得ないと言うべきか。
「なら次は各国の王達に説明する者だが・・・スフィアは決まりだろ?あとは護衛役か。」
「前回と一緒でいいんじゃない?」
「ルークとカレンの代わりはどうするの?」
態々選び直す必要は無いと告げるフィーナだったが、オレとカレンは不参加である。それを思い出したナディアが口を挟む。
「ルークの代わりはルビアさんでしょうね。カレンさんの代わりは・・・ナディアでしょうか?」
「う〜ん、私は竜王達と一緒に国の守りに就きたいのよね。」
「確かにそれも大事ですね。そうなるとセラかシェリーのどちらか「私が参りましょう!」」
「「「「「っ!?」」」」」
他国にばかりもかまけていられない。そう告げるナディアの意見に納得するスフィア。ならばと、如何にも護衛っぽいセラかシェリーに頼もうとした。しかしそれを遮るように響いたセリフに、全員が息を呑む。
いち早く声の主に気付いたカレンが声を上げる。
「バババ、ヴァニラ様!?」
「お久しぶりですね、カレン?」
「は、はい!ご無沙汰しております!!」
突如として目の前に姿を現した女性。カレンは目にも止まらぬ速さで彼女の前に移動し、そのままひれ伏す。土下座に見えるのはオレだけだろうか?
「ふふふっ。失礼しました。ついいつものクセが出てしまいましたね。お立ち下さい、カレン皇太子妃殿下。」
「こ、皇太子妃!?」
初めて呼ばれたのだろう。カレンが酷く動揺している。というか、オレは皇太子じゃないと思うのだが。まぁ皇妃は違うし、妥当なのはカレン妃って所だろう。そしてヴァニラと呼ばれた女性は、全てを理解した上で言っている。語呂というか響きが気に入らなかったんだと思う。
転移して来たし、オレの正体を知ってるから神なのは間違いない。カレンの態度から察するに、上司か何かって感じだろうな。でも、そんなのはオレの知ったこっちゃない。とりあえず文句は言わせて貰う。
「お前が誰だか知らないが、断りも無く他所様の家に無断で上がり込むのはどういう了見だ?」
「ルーク!?このお方は「知らん!」なっ!?」
カレンが酷く驚いているが、いい加減うんざりしている。久々に頭にきた。
「百歩譲って家族は許す。だがそうでないなら所詮は他人。他人が勝手に家に上がり込んだら、誰だって頭に来るだろ?ましてや初対面なんだ。」
「ですがヴァニラ様はアーク様の補佐を務めるお方。王族を除けば最も上位の存在なのですよ?」
「クドい!今はそれどころじゃないってわかるだろ!?アンタも何時までここに居るつもりだ!さっさと出てけ!!」
「「は、はい!」」
別にカレンを追い出すつもりじゃなかったが、釣られて一緒に出て行ってしまった。まぁ、細かい事は気にしないでおこう。
「ルーク・・・何もあそこまで言わなくても・・・」
「ティナ、例えばの話。夜オレと2人きりの時に誰かが目の前に現れたらどうだ?」
「・・・ミンチにします。」
わかりやすい例を挙げたら納得してくれたようだ。オレよりティナの方が酷い気もするのだが、この際黙っていよう。
「じゃあ、護衛役はセラ・・・いや、ここらでクレアに任せてみるのもいいかもな。」
「えっ!?私?」
「なるほど。ライム魔導大国が面しているのはヴァイス騎士王国ですから、王女であるクレアさんが同行すれば話も通し易いでしょうね。」
ライム魔導大国は大陸北部に位置し、北と東は海に面している。南には山脈があって、魔物達も簡単には超えられないだろう。唯一面しているのが西側にあるヴァイス騎士王国であり、必然的に魔物が向かうのはヴァイスとなる。
「優先順位としては初めにクレアの祖国ヴァイス、次が・・・」
「ヴァイスの西に位置するラミス神国です。エミリアさんの祖国ですね。」
地理に疎くてすんません。スフィアに説明して貰っちゃったよ。この際だから全部お願いしようかな。
「大まかな国の位置関係を教えて貰ってもいいかな?」
「全く・・・。ラミスの西にシルヴァニア王国、そのさらに西がリノアさんの祖国スカーレット王国です。シルヴァニア、ラミスの南がシリウス学園のあるミーニッツ共和国。さらに南へ進むとこの国。ミーニッツと帝国の東がベルクト王国。その南がクリミア商国です。」
「帝国西部から南に下ると元ミリス公国、カイル王国ね。カイルから南西に進むとドワーフ国があるのは知ってるでしょ?」
一息で説明し切れなかったスフィアの後を引き継ぎ、ルビアが説明してくれた。
「あぁ、ありがとう。確かベルクトの西がルビアとナディアの祖国だったよな?」
「そうね。」
「セラとシェリーが行ってたドラゴニア武国ってのは?」
「お2人の祖国、アームルグ獣王国の南です。」
セラとシェリーに視線を向けながら訪ねると、しっかりしているセラが答えてくれた。今更ながら、これで国の位置関係は理解出来た。って、あれ?他にも国があったと思うけど・・・。
「昔何かの本で読んだ記憶があるけど、エルフ族の国もあるんだよね?妖精族は?」
「それに関してはハッキリした場所がわかっておりません。」
「どういう事?」
「私の国の西側に険しい山脈が走ってるんだけど、その先に広大な樹海が広がってるらしいのよ。その何処かにあるんじゃないかって言われてるんだけど・・・」
ルビアの説明を聞く限り、隣国はアームルグ獣王国という事だろう。だが、その隣国のお姫様が知らないとなると、ちょっと怪しい噂って事だよな?
「カレンに連れて行って貰った中には無かったな。ティナは知らないの?」
「私は此方側で産まれたそうですので・・・」
困ったように両親へと視線を向けるティナ。そう言えば父さんと母さんの生まれ故郷って聞いた事が無かったな。
「出来れば話したくなかったんだが・・・」
「そうも言ってられないわね。」
「エルフ族の秘密って事か。別に無理して話す必要は無いと思うけど?」
「いやいや、同族の危機でもあるんだぞ?隠してたらいつの間にか滅びてました、じゃシャレになんねぇだろ。」
父さんはそう言うが、2人を見てると何とかなりそうな気がするんだよな。
「それに秘密は秘密なんだけど、絶対に教えてはならない決まりでもないの。」
「どういう事?」
「教えた所で、無事に辿り着ける保証も無いのよ。エルフ族の国がある森ね、魔物の強さはエリド村周辺と同等よ?」
あぁ、それは迂闊に言えないな。美男美女揃いのエルフ族が住まう国。その場所を知れば、何としてでも辿り着こうと考える馬鹿が現れる。無駄に死人を出すよりも、隠しておいた方が良さそうだ。
「言っとくけど、誰がエルフの国に行こうがオレ達は構わないぞ?」
「そうなの?なら父さんは何を心配してるんだ?」
「ルークとティナ、あとは本部ちょ・・・フィーナ様の心配をしてるんだよ。」
「・・・・・。」
「「?」」
オレとティナは訳がわからず首を傾げた。もう1人名前の挙がったフィーナは、頬をピクピクさせている。って言うかフィーナ様?
「ひょっとして話してないの!?」
「言う訳ないでしょ!もう関係無いんだもの!!」
「関係アリまくりだろ!?」
フィーナと父さん母さんが口論を始めてしまった。この展開はヤバイ気がする。このフラグ、早めに回収すべきかへし折るべきか・・・。
「静かに!!喧嘩するなら出て行って貰う。わかった?」
「「「・・・はい。」」」
「念の為聞くけど、フィーナっていいトコのお嬢さん?」
「違う「えぇ(あぁ)!」ちょっと!」
「はい、黙って!」
2対1。多数決で母さん達の勝ちだ。これは確定だな。となれば、どうするかも自ずと決まりである。
「フィーナについては落ち着いてから聞く事にする。今は絶対言わないように!」
「「「「「はぁ!?」」」」」
嫁さん達まで驚きの声を上げる。物凄く気になっているのだろう。だが、今は余計な問題を増やさないで欲しい。だから聞かない。フラグは回収も折る事もせず、埋めてやる事にした。いつか掘り起こされるだろうが、落ち着いてからだったら受け入れようじゃないか。
「厄介事の匂いしかしません。断固拒否します。」
「ちょっとルーク!そんな子供みたいな「母さん!!」・・・何かしら?」
義理とは言え親子の関係。当然母の立場は息子より上だ。だからこそオレの態度が気に食わないのだろう。この手は使いたくなかったが、この際やむを得まい。
「フォレスタニア帝国皇帝として、この場にいる全員に命じる。今後許可無くフィーナの家柄について語る事を禁止する!もし口にする者がいた場合、それに関して起きた問題は全てその者に解決して貰うからそのつもりで!!」
「「くっ!」」
流石に国のトップには逆らえないのだろう。2人が悔しそうに黙り込んだ。ズルいと思われるだろうがこの非常時。貰えるモノは何でも貰う!・・・違った。それはオレのポリシーだ。何だっけ?あぁ、使えるモノは何でも使う!!
「ルーク・・・ありがとう。」
「ごめん、今回はフィーナの為じゃない。そこまでの余裕が無いだけだ。だから話したくなっても言っちゃダメだから。」
流石にフラグを回収したくないから、なんて事は言えない。話したくない事は聞かないのがオレだが、今回ばかりは話したい事も聞かない。
母さん達も余程責任を取りたくないのだろう。ついうっかり口にする事も無かった。オレとしては、ポロッと口にしてくれた方が有り難いんだけど。
こうして若干話が逸れる事もあったが、オレ達は何とか朝までに話し合いを終える事が出来た。あまり時間も無いが、嫁さん達には仮眠をとって貰い、オレは1人ヴァイス騎士王国へと向かったのである。
何か忘れてるような気がしたのだが、深く考える事もなく。
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