第18話 ナディア邸
ナディアさんが落ち着いてから、3人で今後の事を話し合った。とりあえずは、ナディアさんがオレ達と行動を共にする為に、ギルドマスターを辞める必要があるらしい。引き継ぎに一ヶ月掛かるそうなので、オレとティナはファーニスで冒険者活動をする事にした。
と言っても、特に依頼を受けるつもりは無い。白金貨が100枚もあるので、無理して金を稼ぐ必要が無いのだ。しかし、魔物の討伐は行う。これは食材の確保が目的である。超肉食のティナさんが満足出来るだけの食糧確保となると、それなりに本腰を入れて魔物を討伐する必要がある。
ちなみに宿は引き払った。王都に滞在中は、ナディアさんの家を使って良いと言われたので、お言葉に甘える事とした。婚約したんだから、一緒に住んでも構わないだろうと押し切られた格好だ。今は3人揃ってナディアさんの家に向かう為、貴族街を歩いている。
「着いたわ。大した家じゃなくて悪いけど、王都にいる間はゆっくりしてちょうだい。」
「・・・デカっ!豪邸じゃないですか!!」
「そう?この辺じゃ小さい方よ。」
この辺って、そりゃ貴族街ですからね。貴族の邸宅と比較しちゃいけないでしょ。
「そんな事よりも・・・ルーク?いい加減、もっと砕けた言葉で話してもらえない?」
「え?そんな事言われても、ナディアさんは年上ですから・・・。」
「ナディアよ。『さん』はやめて。それに、せん・・・ティナだって年上じゃない。」
「それは、元々家族だし・・・。」
「あら?私も家族になるのよね?だったら構わないでしょ?」
「それはまぁ・・・、わかったよ、ナディア。」
「そうそう。その調子で頼むわね。」
嬉しそうに微笑むナディアに、思わず見惚れてしまう。こんなに美人に負けず劣らずの婚約者がもう1人いるなんて、後ろから刺されないか心配になる。
「さて、ここで立ち話もアレだし、さっさと中に入りましょ?」
「あ、はい。」
建物に入ると、趣味の良い美術品が飾られている。ギルドマスターって儲かるんですね。
しかし、この豪邸に独り暮らしなんだろうか?掃除とか大変そうなんだけど。
「念の為に聞くけど、この家を1人で掃除してるの?」
「えぇ、そうよ。時間ならたっぷりあるから問題無い・・・わ。くっ!」
そう答えながら、空しそうな表情をしている。どうやら自爆したようだ。可哀想なので話題を変えよう。
「えっと、もうすぐ晩御飯の時間だけど何処か食べに行く?それとも作る?」
「食べに行くに決まってるでしょ。その方が美味しいし。そもそも、私は料理なんて出来ないわよ?」
「そうなの?ちょっと意外かも。」
「自分で作っても1人で食べる事になるんだから、どうせなら食べに行った方が人が多くて楽しいじゃない。」
それ、『食べに』って言うより『飲みに』行ってるよね?前世で、独りで居酒屋に通ってた友人と同じ事言ってるし。見ず知らずの人と語り合うのが楽しいとも言ってたな。晩酌しなかったオレには理解出来ない世界だ。そんな昔の事を懐かしんでいるとティナが口を開いた。
「でしたら、折角台所がある事ですし、私はルークの手料理が食べたいです。」
「そういえば、ルークに胃袋を捕まえられたんだっけ?どうせなら私も食べてみたいわね。」
「そう?だったら台所を借りようかな。調理器具とか食材はある?」
「ある訳ないじゃない。」
「・・・だよねぇ。調理器具は持ってるけど、食材と調味料が無いか。よし!買いに行ってくるよ。2人はどうする?」
「私達は少し話したい事があるので、すみませんが留守番させて頂きます。」
「わかった。じゃあ、行ってきます。」
何を作ろうかな?食材を見ながら決めればいいか。やべっ、楽しくなってきたかも。
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