第9話 デート
残されたオレと姉は、オレの部屋へと移動し、今後の事について話し合う事にした。
しかし気不味い。初めてのお見合いってこんな感じなんだろうか?いや、もう婚約者なんだから、お見合いとかってレベルの話じゃないな。新婚初夜?このままベッドに押し倒して・・・イカン。妄想が止まらない。ここは真面目な話をしなければ危険だ。オレの下半身が。
「今後の事って、姉さ…じゃないな。ティナは何か考えてる?」
「ルーク、私の事を名前で呼んでくれるんですか?」
「そりゃまぁ、結婚するのに姉さんって呼んでたら変に思う人もいるでしょ?」
「そうですね。でも嬉しいです。こんなに幸せな気持ちになるなんて、想像もしていませんでした。」
「オレの何処がいいの?」
「全部…でしょうか。外見も私が良く読む物語の主人公の様ですし、優しいですし。何より、私よりも強くなってしまいましたからね。」
「姉さんよりもって…そんなの当然でしょ?男なんだし。」
「いえ、私はこれでもランクSの冒険者なんですよ。」
「は?…S?それって下から何番目?」
「?冒険者に関する説明を受けてないのですか?」
キョトンとした表情で首を傾げるティナの可愛らしい仕草に、思わず見惚れてしまった。イカン、会話に集中しなければ。
「うん。」
「そうですか…。折角なので、この機会に説明しますね。まず、ランクは下からF、E、Dの順となり、Aの上がSになります。」
「じゃあ、ティナは一番上のランクって事?」
「いいえ。その上にSSがあり、一番上はSSSになります。ランクSSは通称『ダブル』、SSSが『トリプル』と呼ばれています。
ちなみに、私のランクSは『シングル』となりますね。」
「シングル…なんだか☆みたいだね。」
「え?星?」
「ゴメン、何でもない。」
つい前世の記憶が。一つ星とか三つ星なんて表現は無いみたいだ。
「噂では、シングルは50人前後、ダブルは10人前後、トリプルは0人と言われています。ちなみに父と母はダブルです。」
「はい?あの2人がダブル?じゃあ、この家って世界最強じゃない?」
「そうですね。ルークは潜在能力的にもダブル以上でしょうから、その表現は適切でしょうね。」
姉さんや、サラッと凄い事を言いましたよ?オレってそんなに強くなってたの?
「オレはそんなに強くないんじゃない?姉さんと勝負した事も無いし。父さんや母さんと訓練してるだけだよ?」
「その訓練を続けられる時点で、私以上なんですよ。私には無理ですから。母相手に半日も魔法を放つ程の魔力はありませんから、その後に半日も操作する魔力は無いんです。ルークの潜在能力は、ダブルのそれをも凌駕している可能性があります。」
なんてこった。当然だと思ってた修行は、無理難題だったぜ(笑)
「話を戻すけど、今後はどうするの?ティナも冒険者に戻る?」
「私はルークに付いて行きます。ですからルーク次第ですね。」
笑顔で人生を丸投げされてしまった。まぁ、無理して養う必要が無いと考えると気が楽なのかな。ランクS冒険者なら、生活には困らないだろうし。
「オレは…料理屋を開きたいと思ってる。その為にも、冒険者になって準備資金や道具を集めながら、料理の具材に関する知識を集めるつもりだよ。」
「素敵な夢だと思います。それなら私も、素材集めで協力出来ますね。」
「そうだね。何年かは世界を回らないといけないだろうけど。」
ティナの目が輝いた気がする。実は、ティナは美食家であり大食家でもある。体の何処に入るのか不思議な程に良く食べる。
前世でも雑誌の取材やテレビ番組の企画で、フードファイターを相手にする機会があったが、ティナも負けていない。
そんなティナの胃袋を、オレは捕まえてしまったらしい。母が不在の時は、オレが料理担当だった。え?父?一体誰の父親だと思っているんだい?ははっ…ティナが料理出来ないのは父親に似たんだろうな。
「来年以降の予定については理解しました。それまでの期間は、冒険者として必要な知識や経験を積む必要がありますね。では、村の外で実際に教えますので、早速行きましょう。」
「い、いきなり外に行くの?本で予習とか、家でする事もあるんじゃないの?」
「それはいつでも出来ますよ。明るいうちに、色々な木の実や植物も採取しておいた方が良いでしょう?」
木の実や植物?…ティナの考えている事がわかった気がする。実は塩や砂糖は貴重品であり、村の周辺では入手出来ない。調味料と言えば、香草や木の実となる。つまり、オレに調味料となりそうな物を見せ、料理のレパートリーを増やそうという魂胆なのだ。オレにとっては必要な事なので、あえて何も言うまい。
「じゃあ、行こうか。宜しくね、ティナ。」
「えぇ、こちらこそ宜しくお願いしますね。」
こうしてティナと2人、魔物が蔓延る村周辺での、殺伐としたデートへと向かうのであった。
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