第23話 男と女

「そんな世界だから重婚が認められているんだけど、平民にはあまり縁の無い話ね。だけど、ある程度の身分になると、生活に余裕があるから何人も妻を娶ったり、愛人や妾が沢山いたりするの。」

「そ、そうなんだ・・・。」

「逆に女性はどれだけ身分が高くても、複数の男性と関係を持つ事は無いの。これは、数少ない素敵な男性を占有しないようにするっていう、女性同士の暗黙のルールなのよ。見つかったら社会から追放されるでしょうね。」

「うわぁ・・・。」


女性は怖い生き物です。下手に関わらないのが一番だ。


「それで・・・ルークはランクS冒険者でしょ?貴族と同等だし、財産もかなりある。まだ若いからこれからどんどん稼ぐだろうし・・・性格も見た目も良い。見た目は良過ぎるんだけど。」

「え?後半が聞き取れなかったんだけど?」

「っ!?とにかく、そんな理由でルークは『か・く・じ・つ』に沢山の女性から迫られるわ。」


マジかよ・・・勘弁して欲しいんだけど・・・。愕然としているのが自分でもわかる。どうやって単独行動するか考えようとしたが、ティナの発言でオレの思考は完全に止まる。


「ですから、他の女性と関係を持つ前に、私達と・・・関係を持って頂きたいのです。」

「・・・・・・・・・・・・はぁぁぁぁぁ!?」

「何よ、嫌なの?」


ナディアから鋭い眼光を向けられるが、真っ赤になっているので怖いとは思わない。むしろ可愛い。


「嫌な訳ないだろ?いや・・・特に理由は無いんだけどさ、結婚するまでは我慢した方が良いのかな?って勝手に思ってたんだ。」

「我慢してたの?」

「あ、当たり前だろ?ティナもナディアも魅力的なんだし、我慢するの大変だったんだから・・・。」


「あ、ありがとうございます。」

「そ、そうかしら?べ、別に我慢とかしなくていいんだからね!?」


2人共、真っ赤になって俯いてしまった。ホントに可愛いなぁ。


「うん、そっか。わかったよ。これからは我慢せずに、思い切り愛情を表現するね。」


「っ!?(ルークの愛を思い切り受ける事が出来るなんて、耐え切れるでしょうか?)」

「っ!?(ルークと結婚してもらえるだけでも刺されそうなのに、思い切り愛されるなんて考えただけでも鼻血が・・・)」


「2人の言いたい事は理解出来たけど、オレが誘惑に負けるっていうのはちょっと・・・。」

「あ、それには理由があって・・・。」

「?」

「ルークの相手が私とティナだけだと、逆に危険なのよ。気持は嬉しいんだけどね。」

「危険?どういう事?」

「ルークって鏡見た事ある?自覚が無いって性質が悪いわ。」


やれやれみたいな表情するの、やめてもらっていいですか?ちょっと傷付くんですけど。


「ルークの場合、私達2人だけだと少な過ぎるのよ。」

「私は最低10人の妻を娶るべきだと考えていました。」

「10人!?幾らなんでも多過ぎでしょ!」

「いえ、100人でも問題ありません。」

「ひゃ・・・」

「流石に100人は多いからね・・・正室1人に、側室10人前後、あとは愛人と妾がルーク次第ってトコかしら。」


ま、マジかよ?身も心も保たねぇよ・・・。ハーレムなんて聞いてる分には羨ましいけど、自分が当事者ってなると針の筵じゃね?身の回りで常時『女の戦い』が巻き起こってるでしょ。


「誰彼構わずの節操無しは問題ですが、ルークの場合は心配無さそうですからね。」

「世の中の大抵がこんな考え方だから、あまり考え過ぎない事ね。ちゃんと私達を愛してくれれば問題無いわ。ルーク好みの女性がいたら、遠慮なく食べちゃって構わないから。全く手を出さないのも問題よ?変な噂がたっても困るでしょ?」


そんな事言われてもさ・・・オレ、この世界に馴染めるか不安になってきたよ。

まぁ、頑張りたくないけど頑張るよ。


「努力します・・・。」

「あはは、なんかごめんね?どうしてこのタイミングだったのかって言うと、多分隣国の女王に見つかったらそうなるからなんだけど・・・。」

「隣国の王って女王様なの?」

「はい。ミリス公国はスフィア女王陛下の治める国です。」

「結婚してないの?」

「そうね。あの人、理想が高過ぎるから生涯独身だと思ってたわ。だから、ルークが行くと、絶対に見つかって付き纏われるから。覚悟しておきなさい?」

「何でオレが行くとそうなるんだよ・・・。」


マジで行きたくねぇわ~。オレもティナ達と迂回しようかな?でも、2人はそれを承知でオレだけ行かせようとしたんだから、多分反対されて終わるよな。


「ルークはスフィア様のタイプですからね。国民から慕われているのですが、結婚する気配が無いせいで国民から心配されてまして・・・その・・・。」

「何?」

「国民全員が密告者だと思いなさいって事よ。入国した瞬間に城へ知らせが届いて、あっという間に召還されるから。」

「それってほとんど誘拐じゃない?」

「「あはははは。」」


なんだよこの世界は。これなら村から出ない方が・・・いや、それだとナディアとは出会えなかったか。なるようにしかならないんだろうな。


「何考えてるの?」

「村から出ないままの方が良かったかな?って。」

「ルーク、それは・・・」

「あぁ、ごめんごめん。大丈夫だよ。村から出なかったらナディアと出会えなかったんだし、後悔はしてないから。」

「き、急に何を言い出すのよ!?」


またしてもナディアの顔が赤くなる。そうでした、まずは素敵な婚約者達と男女の仲にならないとね。


騒がしながらも、3人の夜は更けていくのであった。

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