第30話 女性騎士団との野営

現在、ミリス公国の王都ミリスへと向かう馬車の中にいる。自分の足で走った方が速いのだが、馬車の中は楽だ。言い直そう、楽ではあるが、非常に居辛い。何しろ、女性騎士達の質問攻めにあっているのだ。しかも全員が入れないせいで、入れ代わり立ち代わりである。


女性と仲良くなるのは良いが、節操無しだと思われそうで気が引ける。魔物が出ても、騎士団の人達で処理してしまうので、逃げる事も出来ない。強い魔物が群れで出て来ない限り、オレの出番は無さそうだ。あ、これってフラグってヤツかな?


「冒険者が魔物と戦わないのは問題だと思うんですよ。少し位はオレにも協力させて貰えません?」

「いえいえ、大切なルーク様にもしもの事があってはいけません。大人しくしていて下さい。あ!大切なというのは陛下にとってという意味であって、他に深い意味はありませんよ!?・・・私にとっても大切ですけど。」


最後が聞き取れなかったが、気にしたら負けだ。聞き流そう。っていうか、騎士団員の実力はランクC~Bの冒険者といったところだろう。セラさんでAかな?ランクAの魔物なら、全員が連携すれば勝てそうだ。ただ、ランクAの魔物が群れで襲って来るのも珍しくないのだから、油断は禁物。


その後も特に問題無く、今は野営の準備を進めている。オレは前世から場所・体勢問わず1秒で寝る事が出来る。親友から「お前の特技は寝る事だ」と言われた程、睡眠に関しては不安要素が無い。なので、テント類はティナ達に渡してしまった。なので、野営の準備と言っても、大きいローブを取り出して終了である。


見ているのも暇なので、騎士団の様子を見て回っていると、夕食担当の所で止まってしまった。簡単なスープと干し肉、硬いパンを準備しているだけなのだ。


「すみません、夕食はソレですか?」

「え?そうですけど・・・?」


オレには耐えられそうにないな。ティナとナディアに料理を持たせたのは本当に正解だった。ちなみにオレの分は、食材しか用意していない。不安だったので、料理は全て渡した。オレなら自分で作ればいいし。


「オレが料理しても構いませんか?」

「え?特に食材もありませんよ?それに、騎士団には料理の出来る者もいませんし・・・。」

「食材なら持ってますし、調理はオレ1人で大丈夫です。それで、いいですか?」

「そういう事なら、はい・・・。」


訝しげに首を傾げられたが、許可を貰ったので気にせず作ろう。人数も多いし、時間もあまり無さそうなので、今回は簡単な物で勘弁してもらおうかな。食材と自作の調理用魔道具をアイテムボックスから取り出すと、女性騎士は驚いている。


「すごい・・・調理用の魔道具が・・・アイテムボックス!?初めて見た・・・。」

「そうなんですか?あ、時間も無さそうだし、良かったら肉と野菜を串に刺して焼いてもらえます?えっと・・・すみません、お名前をお聞きしても?」

「は、はい!私はシェリーと言います!!えっと、焼くってどこで?」

「よろしくお願いしますね?シェリーさん。焼くのはこの薪の周りで・・・ファイア!」


魔法って便利だよなぁ。あれ?シェリーさんが吃驚してる。


「ルーク様は魔法が使えるのですか!?」

「えぇ。・・・え?使えないんですか?」

「人族は魔法を使える者が多くないんですよ?使える者は魔法使いになりますから、格闘はからっきしです。ルーク様は腰に剣?を挿してますから、てっきり使えないものだと・・・」

「オレは剣も魔法も使えますよ?あ、この剣は『刀』と呼んでます。」

「そうなんですかぁ、凄いですね!」


目がキラキラと輝いている。感動してます!って表情だな。なんか照れるので、話題を逸らす為にも調理を進めてもらおうか。


「すみませんが、こちらで串焼きをお願いしますね?」

「っ!?はい、かしこまりました!」


シェリーさんと仲良く調理を終え、夕食にありつく。出された料理に、騎士団の皆は驚いているようだ。干し肉よりマシだよね?


「これは・・・ルーク様が?」

「はい。お口に合うかわかりませんが、冷めないうちに食べましょう。」


全員が「野営でまともな料理が食べられるなんて」と感激していたが、もう細かい事は気にしない。オレは人生を楽しみたいのだ。


料理を食べた全員が幸せそうに微笑んでいるのを見るのは、料理人冥利に尽きる。明日の朝は何を作ろうかな?久々に、特製のモーニングでも振舞おう。消費した分の材料は、王都に着いたら補充すればいいだろう。


全員が満足したようで、オレは後片付けをしてから大きな木の下へと移動しようとしたが、後ろから呼び止められてしまった。


「ルーク様、どちらへ行かれるのですか?」

「シェリーさん?向こうの大きな木の下で休もうかと思いまして。」

「外でお休みになるのですか!?」

「えぇ。何処でも寝られるものですから。」

「そんな・・・いけません!もしよろしければ、我々のテントを使って下さい!!」

「いや、シェリーさん、それだとシェリーさんはどうするんです?」

「それは・・・ご一緒します!!」

「はぁ!?それは流石にダメでし「それは名案ですね!」ってセラさん?」


シェリーさんの爆弾発言を拒否しようとしていたら、セラさんまで乗っかってきた。ライオンの檻に自分から入っていくシマウマはいませんよ?


「大切なお客様を1人だけ、外で休ませるわけには参りません。我々のテントでお休み下さい。『どうしても外で』と仰るのでしたら、我々も外でご一緒します!」

「いや、それはダメですよ。女性を外で休ませる訳には・・・」

「でしたらテントで決まりですね!?副団長、行きますよ!」

「はい!!さぁルーク様、参りましょうか!」


両腕を固められ、連行されてしまう。2人は鎧を脱いでいる為、腕に柔らかな感触が・・・。お2人共、素晴らしい物をお持ちですね。って、シェリーさん副団長だったの!?

そうこうしてる間に、オレはテントに寝かされてしまった。両脇をしっかりと固められて。


「このテントは戦闘時の会議でも使用出来るように、魔法での防音対策が成されていますから、私達の声が漏れる心配はありませんのでご安心下さい!」

「非常時以外は誰も入って来ませんから問題無いですしね。」


「いやいや、そんな事は聞いてないし、そもそも何をするつもりなんです?」

「そんな事、女の口からは・・・初めてなので、優しくして下さいね?」

「私も経験がありませんので、満足して頂けるか不安ですが・・・よろしくお願いします!」


ライオ、いや、美女2人に迫られて、オレが拒絶出来たかどうかは言わないでおこう。そもそも、無理ゲーじゃね?

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