第51話 注意事項

「では、私が説明します。まずはルーク様、入学試験の首席合格者である貴方は特待生クラスとなります。ちなみに特待生クラスは17人ですが、全員が優秀ではあるのですが大抵が訳アリの方々です。」

「・・・訳アリですか?それと17人と中途半端な人数なのは何故です?」

「人数に関しては、4人1組となる授業がある為16人を予定していたのですが・・・やむを得ない事情によるものです。他のクラスと比較して人数が少ないのは、訳アリの方々を指導する関係上、これ以上の人数となると教師の対応に不備が出る恐れがあるからですね。」


4の倍数って事か。なら20人でも良くね?って思ったが、質問するより早く答えられてしまった。ユーナさんは優秀な人っぽいな。ただ、どうしても訳アリが気になるので、続く説明に集中する。


「訳アリについてですが・・・ルーク様には詳しく説明させて頂きます。クラスのメンバーですが、ルーク様、ラミス神国次期聖女様、ドラゴニア武国第七王女様、シルヴァニア王国第四王女様、スカーレット共和国第二王女様、クリミア商国第三王子様と第四王女様、ベルクト王国第二王子様、ユリウス公爵令嬢様、ヴァイス騎士王国第三王女様、アームルグ獣王国第八王女様、ライム魔導大国第二王女様、シシル海洋王国第五第六王女様、ローデンシア天空王国1名、ミーニッツ共和国の2名です。」

「ローデンシアとミーニッツの説明雑!?ってか、王族だらけじゃないですか!?」

「はい。王族率が異常ですね。ですから特待生クラスとなるのです。ローデンシア天空王国とミーニッツ共和国の者達に関しましては、各国からねじ込まれまして・・・。」

「それがやむを得ない事情ってヤツですか。・・・注意点?」


王族って事は、性格や態度に難がありそうだ。オレはひっそりと暮らしたいんだ。最後列の窓際で、授業中に外の景色を眺めながら過ごしたい。聞きたくないが、注意点は確認すべきだろうな。


「男性については、特にございません。女性に関しては、その・・・」

「何です?」

「大抵がお主目当てという事じゃよ。次期聖女と世界一の美女とやらは違うと思うがの?じゃがこの者達は、騒動の種じゃから特待生クラスに放り込んだ。」


答え難そうに視線を逸らした事務長に代わり、学園長が説明してくれた。あまりにも突然だった為、思わず声が出てしまった。


「あんた、おバカキャラじゃなかったの!?」

「ムキー!!誰がおバカじゃ!?私はこれでも学園長なのじゃ!一番賢いのじゃぞ!!」

「えぇぇぇぇ!?」

学園長の説明に、オレは驚愕してしまった。有名な絵画のような表情で叫んでいる事だろう。


「全く・・・貶されるのも良いのぉ・・・。いかんいかん、説明を続けるぞ?お主が注意すべき点は4つじゃ。まず、女は大抵がお主目的じゃから気を許さぬ事。ドラゴニア武国の王女とは絶対に戦わぬ事。ローデンシアとミーニッツの3人は素性がわからんから注意する事。最後に、次期聖女には最大限の警戒をする事。」

「理由は教えて貰えないんですか?」

「時期聖女については、私達にもわからんのじゃ。カレン様からの伝言じゃからの。ローデンシアは本来閉ざされた国じゃからな・・・入学希望者自体が初めてなのじゃ。ミーニッツはこの学園のある国じゃから、断り難かった!最後のドラゴニアの話は結構有名なんじゃが、あの国の王女は自分に勝った者を夫とする決まりなのじゃ。」


何処かで聞いた話だ。それにしても、カレンが警戒しろとは穏やかじゃないな。何に警戒すべきなのか、帰ったら聞いてみよう。武国の王女は、適当に負けておけば何とかなるだろ。


「もしやお主、ドラゴニアを甘く見ておらぬか?私の説明を聞いて、何とも思わなかったのか?」

「?王女は自分に勝った者と結婚する?これの何処が・・・・・ん?」


これって、一般的な表現だと『王女に勝った者は王女と結婚出来る』だろう。男性目線である。しかし今回は王女目線なのだ。王女にも決定権があるように思える。


「もしも、王女が勝負開始とともに『参った』と宣言したらどうじゃ?」

「あ!!・・・でもそれってアリなの?」

「あの国は実力主義じゃが、別に正々堂々である必要は無いんじゃよ。それよりも王女の方じゃ。負けた王女は、自分と結婚させる為なら何でもする。男は例外無く根負けするはずじゃ。じゃからお主は、絶対に勝負を受けてはならんのじゃ!」


目を見開いて立ち上がり、オレを指さしながら告げる学園長であるが、見た目が幼女なので迫力は無い。


「それってさぁ、オレが嫁に貰っても構わないって思ったら、別に勝ってもいいんだよね?」

「え?・・・・え?・・・・そ、そうじゃな。・・・気付かんかったぁぁぁ!!」


やっぱり只のおバカキャラだ。最後に、最も気になっている事を聞いてから立ち去ろうと思う。


「お暇する前に聞きたいんですけど、学園長と事務長は姉妹なんですよね?全然似てないですけど。」

「そうじゃ!私がお姉さんじゃな!!私のこの姿には理由があってのぅ・・・。あれは私が10歳頃の寒い日じゃった。」


シリアスな展開!?そんな深い話を聞きたい訳じゃなかったのよ?


「いつものように森の中を全裸で過ごしておったのじゃが、油断したのか病に罹ってしまい高熱にうなされたのじゃ。一命は取り留めたんじゃが、その時の後遺症のせいで肉体の成長が止まってしまったのじゃ!いやまぁ、正確には特殊な体質となってしまったのじゃがの。」


大した理由じゃなかった。いや、特殊な体質って何だ?


「学園長は魔力を高めると、成長した姿になるのですよ。」

「はい?一体何を言ってるんです?」

「見た方が早いじゃろ?行くぞ!うぬぬぬぬ・・・あっ!!」


急激に魔力が高まったかと思った次の瞬間、学園長の姿がユーナさんを凌ぐナイスバディへと変化した。そして、当然着ていた服が破れ飛んだ。ケン〇ロウ!?


「着替えるのを忘れておった!ユーナ、すまんが着替えを用意して貰えんか?」

「・・・・・少しは隠すとかしたらどうなの?」


想定外の出来事に、オレの美人耐性が仕事を忘れていたらしい。オレは暫く見惚れてしまってから学園長を注意した。全裸で仁王立ちはやめて欲しい。しかし・・・美しい種族って素晴らしいものですね!!


「隠したら襲って貰えぬではないか!」

「見せたら襲って貰える訳でもないだろ!!」

「そうかのぅ?お主、今見惚れておったのではないか?」


疑いの視線が痛いので慌てて否定するが、誰が聞いても動揺まるわかりの返答となる。


「な、何を馬鹿な事を言っているんだい?僕が君に見惚れるはずがないだろう?はっはっはっ!!」

「・・・相当動揺しておるようじゃの。そうか、権力者なんて変態ばかりじゃと思っておったが、どうやらお主は成長した姿の方が良さそうじゃの!これは本格的に治療方法を見つける必要があるか・・・。」


人を変態扱いしないで下さい。男は皆変態だと思ってるが、人に言われるのは嫌です。


「へんた、いえ、学園長、早く着替えて下さい。ルーク様は、私と一緒に会場へ向かいましょう。」

「ちょ、ちょっと待つのじゃ!私も一緒に行くぞ!!あ、こら!!」



ドタバタと騒がしくも、3人揃って入学式の行われる講堂へと向かうのであった。

オレも一緒でいいの!?

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