第50話 学園長

どうすべきか対応に苦慮していると、真剣な表情になった眼鏡女子が口を開く。


「学園長、そろそろ入学式が始まります。それと貴方、今晩私の部屋に来て下さい。夜の個人授業をしましょう。」

「行かねぇよ!?って言うか、コレが学園長なの!?」

「・・・コレとはちょっと酷くないかのぉ?」


ここはきっと、変態学園だ。オレの手には負えん。もしくは、からかわれてるのかもしれない。次なる1手を決めかねていると眼鏡女子が幼女を解放し、何処から用意したのか目にも止まらぬ早業で服を着せた。


「さて、改めて自己紹介じゃ。私が学園長のローナ=ハイアット=シリウス。ダークエルフ族で741歳、独身。スリーサイズは上から「聞いとらんわぁ!」・・・照れ屋さん?。」


コイツは害だ。学生に対して危な過ぎる。ここで秘密裏に抹殺しようと考えていると、眼鏡女子が自己紹介する。


「私はこの学園の事務長を務めるユーナ=ハイアット=シリウス。同じくダークエルフ族で528歳、独身。スリーサイズは89、5「何で止めんのじゃ!?」・・・夜の個人授業でお教えしますね?」


止めなかった理由?スタイル抜群の美女だからですけど、何か?というか、そろそろ入学式だと言っていたが良いのだろうか?


「私はルークと申します。ユーナさんは教師ではないようですので、個人授業はお断りします。それよりも、入学式はよろしいのですか?」

「少しくらい遅れても問題無いのじゃ!私が行かねば始まらんからの。それよりも、お主がルークか・・・。カレン様の言う通りじゃのぉ。」


ユーナさんは床に四つん這いになり俯いている。ひょっとして本気だったの!?それから、何がカレンの言う通りなのかは聞くまい。掘り下げると調子に乗るだろう。何より、今すぐにでも立ち去りたいのだ。スフィアから頼まれた『おつかい』を済ませてしまおう。


「こちらがフォレスタニア帝国からの寄付金になります。それでは、失礼します!」


ローナさんに寄付金の入った革袋を私、後ろを向いて出口へと歩き出す。

「お待ち下さい!」

「・・・何でしょう、ユーナさん?」

「私も縛っては頂けないのですか?」

「ツッコむトコそこなの!?この流れは真剣な話をする場面だよね!?」

「大事な事ですので。・・・それよりも、ルーク様にお話しすべき事がありますのでソファーにお掛け頂けませんか?」

「はぁ・・・わかりました。」


1人掛けのソファーが2つずつ向かい合って並んでいるので、出入り口側のソファーに座ると学園長はオレの正面にあるソファーに座った。事務長はオレの・・・膝の上に座った。


「事務長?」

「何でしょう?」

「ソファーはまだ空いてますよ?」

「見ればわかりますよ?」


事務長は、言ってる言葉の意味がわからないといった様子で首を傾げる。大丈夫、オレも事務長の行動の意味がわからないから。相手にしたら時間が足りなくなりそうなので、無視して話を進める事にした。


「で、話とは何でしょうか?」

「はい。・・・どうかお願いです!私をお嫁に貰って下さい!!」

「はぁ!?・・・一応、理由を聞いても?」

「私は、姉・・・理事長とは違い、この学園に人生を捧げる気は毛頭ありません。ですが、姉がほんの少し特殊な性癖を持っているというだけで、恋愛とは無縁なのです。さらには、ダークエルフ族の王族という立場もあり、相手にも相応の身分が求められます。半ば結婚を諦めかけていたのですが・・・そこへルーク様が現れました!」


ほんの少しじゃないよね?何もかもが規格外だよね?それにこれは、オレが皇帝になったと知っている反応だろう。流石は世界政府直下の学園という事か。情報が速い。


「何じゃと!?お主は我らに相応しい身分なのか!?」


はい、違ったぁ!関心したオレが馬鹿でしたぁ!!この学園長、事務長の姉で確定みたいだけど、絶対に馬鹿だ。


「ティナ達から聞いてないんですか?」

「細かい事は全てユーナに任せておる!」

「・・・それなら学園長は、どうして全裸でオレを待ち構えていたのですか?」

「美少年じゃと聞いたからじゃな!目の前に裸の美少女がおったら、襲ってくれると思うじゃろ?」


ダメだ、完全におバカの発想だよ。救いを求める意味を込めて、事務長に視線を向ける。


「詳細はスフィア殿下からお聞きしております。勿論、皆様からの許可も頂いております。」

「へ?・・・・・婚約者達と話し合ってからで良いですか?」

「本当ですか!?ありがとうございます!!」


スフィアさんも超美人だ。嬉しそうに微笑んでいる顔に心臓を射止められそうになる。だが、今のオレには美人耐性がある。もう簡単には落ちない。とりあえず入学式に出席したいので、そろそろ話しを切り上げる事にした。


「お話は以上ですか?そろそろ入学式に向かいたいのですが?」

「いや、まだ私の話が終わっておらん。もう少し待つのじゃ。」


おバカ、もとい学園長が真剣な表情に変わる。あまりの変化に、オレは唾を飲み込んだ。


「私の話というのはのぅ・・・ユーナ、頼むのじゃ!」

「あんたの話じゃないのかよ!?」


ダメだ、オレにはおバカ耐性は無い。完全に心が折れたよ。事務長さん、オレ達に構わず話を進めて下さい。

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