第42話 神
「ルーク!ご無事で何よりです!!本当に心配したんですよ?」
「心配掛けてごめん、ティナ。」
「しかし、まさか帝国に1人で戦争吹っ掛けて、しかも勝っちゃうなんてね。それに・・・奥さんだけじゃなく、愛人まで増やして。」
「それは・・・ごめん、ナディア。」
「冗談よ!私達の予想より少なくて安心したわ。」
「えっ!?」
変な予想するのはやめて下さい。フラグになったらどうすんのさ?
再会の挨拶もそこそこに、全員で自己紹介をすませる。これだけ美人揃いの状況にも関わらず、カレンの存在感は圧倒的で、スフィア、セラ、シェリーは緊張気味だった。
「こちらの方が、世界会議で何度も議題に上がった『女神』・・・。」
「き、綺麗な方ですね・・・。」
「本物の女神様って言われても、信じちゃいます・・・。」
「あら?私は本物の女神ですよ?」
「「「「「「は?」」」」」」
シェリーの呟きに、カレンが不穏な事を言い返した。
「ですから、私は正真正銘本物の女神です。只の人間が、何百年も生きられるはずがありませんよ?」
「「「「「えぇぇぇぇぇぇ!!」」」」」」
まさかの女神様降臨キター!じゃなくて、あれ?オレが長命種ってひょっとして・・・。
「じゃあ、オレは?」
「ルークも神族になりますね。血の繋がりはありませんので、安心して下さい。」
「え?本当の姉弟じゃないの?ならオレの両親は?」
「ルークにも両親はいますが、この世界にはいません。この世界、フォレスタニアは・・・神に見捨てられた世界なのです。」
「見捨てられた?」
「では、そこから説明していきましょう。昔はこの世界にも、数柱・・・数人の神々が暮らしていました。我々はこの世界の住人を見守り、時には力を授けました。ですが、この世界の住人達は与えられた力に溺れ、自分達を守護する神を崇めなくなり、神の教えを忘れ去った結果、いつしか住人同士で争うようになったのです。これに愛想を尽かせた神々は、徐々に他の世界へと移り住むようになりました。そして現在に至ります。そんな中でも私は、この世界の住人達を見捨てる事が出来ず、1人残る道を選んだのです。そんな私を不憫に思ったのがルークのご両親です。大変お世話になった方々でして、せめて愛し愛される事くらいは経験させてあげたいと、私の婚約者としてルークを預けて下さったのです。」
「つまり、部下が言う事を聞かなくなって喧嘩し始めたから引っ越した?」
「まぁ、その表現は嫌ですが・・・その認識で合っています。」
「で、カレンが1人きりで結婚もせずに残業してるのが不憫だから、自分の息子を婿に出した?」
「間違ってはいないのですが・・・ルークは私に恨みでもあるのですか?」
恨みというか、今まで散々怯えて暮らして来たからね。少しは仕返しでもしないと気が済まない。ただ、カレンを怒らせると後が怖いので程々にしておく。
「恨みなんてあるはずないでしょ!?そんな事より、オレはカレンより弱いと思うけど・・・それでも婚約者なの?カレンより弱い者とは結婚しないって聞いたけど・・・。」
「それはルークがまだ覚醒していないせいですから、私よりも弱くて当然です。それに、私が自分より弱い者としか結婚しないというのは、求婚を断る為の方便です。」
「・・・覚醒?」
ひょっとして、怒ったらスーパー何とか人に・・・このくだり、前にもやった気がする。アホな事を考えてしまったが、カレンは気付かずに説明を続ける。
「私の力、今はほとんど感じられませんよね?それは神気、神の力を使いこなしていないからです。」
「確かにカレンからは魔力を感じられないんだよね。」
「私には眠っているルークの力が感じ取れますよ?それは私よりも強い力です。ルークのご両親は私よりも遥か格上の存在ですから、当然の結果なのですが・・・。」
「オレの両親?それって・・・」
「それは何時か、ルークとご両親が再会する時まで、私だけの秘密にしておきます。」
悪戯っ娘のような笑顔を浮かべるカレンに見惚れてしまう。恥ずかしくて周囲を見回すと、どうやら全員が見惚れているようだった。
「少し脱線してしまいましたね。え~と・・・そうでした。ルークを預かったまでは良かったのですが、一緒に暮らすと姉弟の関係になってしまいそうでしたので、エレナとアスコットに育てて頂きました。私の心配は杞憂だったようですけど・・・。」
カレンの視線の先にはティナが居る。ティナ程の素敵な女性なら、血の繋がりが無いと判明した時点で恋愛対象になるのは当然だろう。
「それより、成人したばかりだと言うのに婚約者が4人とは・・・将来が少し心配になりますね。」
「4人?」
「ルーク?私も貴女の婚約者ですからね!?拒否権はありません!」
「あ、はい!ごめんなさい!!」
カレンがムッとしたので、すかさずジャンピング土下座を披露する。オレ、この世界に生まれ変わって女性に頭が上がらなくなった気がする。
「しっかりして下さいね!?」
「口を挟んで申し訳ありません。カレン様も婚約者という事は、当然正妻はカレン様という事になるのでしょうか?」
暫くの間、カレンに説教されると覚悟していたが、スフィアが話題を反らしてくれた。グッジョブです!
「いいえ。私はそういった立場や権力とは距離を置きたいと考えています。ですから、皆さんと同じ側室という扱いでお願いします。」
「そうですか・・・そうなると、正妻がいないのに側室だけが増えるのも問題ですね。」
「とりあえず今は全員婚約者って事で、この件は先延ばしにしない?」
スフィアの問題提起に、ナディアが棚上げを提案する。オレは全員正妻でも構わないのだが、口を挟むべきではないだろう。火に油を注ぐ必要は無い。
「この世界のしがらみは、皆さんにお任せしますね。私は今まで通り、世界の様子を見て回ります。あ、夜はルークの元へ戻って来ますから、心配しないで下さいね。あまり愛人が増えるのは好ましくありませんから、しっかり目を光らせなければなりません。」
「いや、これ以上は増えないでしょ・・・。」
「いいえ、ルークは女性から確実に言い寄られます。」
「何で言い切れるの!?」
ホントにやめて欲しい。これ以上、頭の上がらない相手を増やしたくはない。
「それは、ルークが神族だからですよ?優秀な相手との子孫を残すというのは、この世の理、生物の本能です。頂点に立つルークの元に女性が集まるのは当然でしょう?」
カレンさん、人を『Gホイホイ』みたいに言うのはやめてくれませんか?傷付きます。1人暮らしの学生時代、夜な夜な繰り広げられた数々の死闘を思い出してしまったじゃないか。
一通りの説明が終わったようなので、オレはスフィア達をミリス公国へ送り届け、カレンがティナとナディアを学園都市へ送り届けるのに付いて行った。いつでも転移出来るようにしたかった為だ。全員を帰したのは、今の王城は人手不足により不便という結論に至った為である。現在、王都には1人も住んでいないのだから。ミリス公国からの応援が到着したら、避難していた旧王都民を受け入れる予定になっている。
流石に城を放置する訳にもいかなかった為、オレ1人で戻って来た。夕食を作っていると、いつの間にかカレンが戻っていたので、これからカレンと2人きりの夕食である。
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