第46話 国家運営会議

漸くミリス公国からの人員が到着し、現在の城内は慌ただしいものとなっている。婚約者達も全員集合し、オレ達は今後の方針を決めるべく、会議の真っ最中だ。


「今後の国家運営に関してですが・・・」

「運営に関しては、スフィアを始めとしたミリス公国の方々にお任せします。」

「え?いや、それは・・・良いのですか?」


進行役のアルト宰相が戸惑いながらも聞き返して来る。


「はい。オレは国家運営の経験も知識も皆無です。ならば、勝手知ったるミリス公国の方々にお任せするのが最善と考えます。」

「・・・正直、そうして頂けると助かります。」


でしょうね。オレとしても、正直面倒なのはパスしたい。ただし、スフィアはオレが皇帝という形をとると言って譲らなかったので、トップらしく注文はつける。


「人材不足だと思いますので、国民から募集して頂きたいです。当然、試験や面接をして採用するようお願いします。コネでの採用は禁止ですが、推薦は構いません。それと、貴族等の権力者からの圧力が掛けられた場合は、オレに報告して下さい。処罰しますので。」

「それは、平民からも雇用するという事でしょうか?」

「平民からも、というよりは、平民からの雇用を重点的にお願いします。威張り散らすだけの権力者など、害としかなりませんので。実力や努力次第で昇給や昇進出来るような仕組みを作って下さい。」

「それは・・・新しい試みですね。」


地球じゃ普通だと思うけどね?まぁ、貴族社会だから仕方無いのかもしれない。貴族を無くす事も考えたが、この世界では上手くいかない可能性が高いので断念した。


「ただし、真っ当な貴族には相応の役職を与えて下さい。国の不利益となりそうな貴族は、排除して頂いて構いません。嫌なら国から出て行ってもらいます。オレからの要望は以上です。というわけで、王としての業務は全てスフィアに一任します。」

「本当に良いのですか?」


アルトさん以下公国の方々には信じられない内容だったようだが、これがオレの常識である。このまま押し通そう。


「構いませんよ。あと、全ての街や村の代表と貴族を集めて説明会を開いて下さい。内容としては、種族差別の撤廃、平民の役人雇用、税制改正、犯罪・・・特に性犯罪の厳罰化を重点的に説明して頂ければ幸いです。」

「かしこまりました。それと、ルーク様は奴隷制度に難色を示しているとお聞きしたのですが・・・?」


アルトさんが恐る恐るといった感じで訪ねて来る。オレとしては奴隷制度は好きになれない。だが、皆から「自ら奴隷となる事を望む者もいる」と教えられ、これまで通りとする事にした。はっきり言って、良くわからん。


「えぇ、個人的には奴隷制度は嫌いですね。ですが、それは個人が決めるような問題ではないと思います。ですので、オレからは何も・・・いえ、犯罪奴隷に関わった者ついては死罪として下さい。関わった者は1人の例外無く、です。国外に逃亡しても、オレが徹底的に追跡します。もし匿うような者がいれば、その者も同罪です。国が関わるようなら、その国は滅ぼします。」

「それは・・・国内外に通達するのでしょうか?抗議が届くのではありませんか?」

「もちろん国外にもです。犯罪を取り締まろうとしているのですから、抗議が届く事は無いと思いますよ?異を唱えるようならば、自らが関わっていると言っているようなものですからね。」

「それもそうですね。では、ご命令通りに。以上を新帝国・・・国名はいかが致しますか?」

「「「「「「「「「「あ!!」」」」」」」」」」


会議の最後に、全員が新しい国名を決めていなかった事に気付いた。そうだよね、今まで通りじゃ駄目かなぁ?


「ルーク帝国、というのはどうでしょうか?」

「ティナ、それってオレへの嫌がらせだよね?」

「ミリス帝国・・・強そうですね・・・。」

「スフィア、それは君の願望だよね?」

「今まで通りでいいんじゃないの?」

「ナディア、それ賛成!」


これで2票獲得。あと一声で押し通せる気がする。


「流石に今まで通りという訳には参りませんよ・・・。」

「中身は全く別の国ですからね・・・。」

セラとシェリーに反対された。これはもう、文字通りの神頼みだ。お願い、カレン様!!オラの望みを叶えて下さい!


「実質的に、スフィアが治める国ですからね・・・ヴァルキュリアというのは如何です?フォレスタニアでも構いませんけど・・・。」

「「「「「「「「「「おぉ!!」」」」」」」」」」


フォレスタニアは世界の名前だから、流石にやめておこうよ?ヴァルキュリアはカッコイイよね。でも、良い意味と悪い意味があった気がする。昔の記憶だから、全く覚えてないけど。


「ヴァルキュリアで良いんじゃない?」

「「「「「「「「「「フォレスタニア帝国で!」」」」」」」」」」

「・・・・・マジ?」

「はい。」


スフィアから反対されてしまった。でもさぁ、各国から反対されないかなぁ?


「私とルークがいますから、問題無いと思いますよ?各国には、異論があるようでしたら私が直接伺いますとお伝え下さい。」

「「「「「「「「「「うわぁ・・・」」」」」」」」」」


それって脅迫だよね?まぁ、結婚したら皆の名前もフォレスタニアになるんだから、国名になるのは当然なのか。


「それではフォレスタニア帝国に決まりのようですので、我々はこれより業務を開始致します。皆様、お疲れ様でした。」


アルトさんの挨拶により、最初の会議は終了した。皆さん、頑張って下さいね?オレはのんびりさせて貰いますよ。

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