Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

第26話 国王陛下

「そうじゃな・・・まず、フォレスタニアの名を持つ者は、ルーク以外にはカレン様しかおらん。この世界と同じ名は、許可無く名乗る事を許されておらんのじゃ。仕組みはわからんが、許可無く名乗った者は『例外なくその場で雷に撃たれて死んでおる』そうじゃ。これは王家にも、先祖代々語り継がれておる。ちなみに全ての国において、法律として全ての者に周知しておるよ。」

「では・・・私が偽物だった場合、名乗った時点で死んでいたという事ですか？」

「そうじゃな。だがルークは生きておる。つまり、少なくともルークはカレン様の家族という事じゃろうな。」

「陛下もカレン『様』と呼ばれるのですね。お知り合いですか？」

「いいや、2度お会いした事があるだけじゃ。1度目はワシが幼少の頃。2度目はルークがこの国に来た頃じゃな。相変わらずお美しい方じゃったよ。」

「「「相変わらず？」」」

オレだけでなく、ナディアと殿下も声を揃えて聞き返した。数十年経つのに、変化が無かったという事だろうか？

「そうじゃ。全くお変わりなかった。ワシも不思議に思いエレナ様に聞いてみたんじゃが・・・どうやらエレナ様が幼少の頃から全く変わっておらんそうじゃ。」

「「「は？」」」

「・・・母は600歳と少し、だったと思います。」

「「「「600歳！？」」」」

オレ達のユニゾンに、国王陛下も加わった。エルフすげぇわ。20台前半にしか見えねぇよ。

「エルフでも見た目は変化するものよ？それなのに、ルークの姉は変化無しってどういう事よ？一体何者なの？」

「ナディアも知らないの？ギルドマスターなら、会った事があるのかと思ってた。」

「本部のお偉いさんならそうかもしれないけど、支部長程度じゃ教えて貰えないわ。」

支部長程度って・・・支部長になれるだけでも大したもんだって聞いたよ？

「ワシもこれ以上は知らないのう。あとは・・・毎年世界会議で、カレン様の話が議題に上がるかの？どの辺におるとか、怒りを買わないようにといった確認程度じゃが。案外、二つ名通りに女神様かもしれんのう？ほっほっほっ。」

楽しそうに陛下は笑っているが、オレは正直笑えない。答えが出ないという事が、こんなに不安になるとは・・・。

「すまんが、ワシが知るのはその程度じゃ。力になれなくて申し訳ない。」

「いえいえ！とんでもないです。ありがとうございました。」

「他に聞きたい事が無ければ、ワシらはそろそろ戻るとしようかのう。」

「お待ち下さい。フィリップとアレクセイは、夕食に招待します。ルークの料理は凄ですから、食べないと後悔しますよ？」

「そうですかな？折角のティナ様のお誘いですし、お言葉に甘えますかの。」

ティナさんや、王族を呼び捨てにするのはどんな気分ですか？オレは今後が不安だよ。

とにかく陛下と殿下に晩御飯を振る舞い、かなり喜んで貰えた。デザートには特に驚いたようで、王妃様へのお土産も渡したら涙を流していた。「これで当分は叱られずに済む」って言ってたし。何したのさ？

突然の訪問には焦ったが、こうして無事に乗り切る事が出来た。明日から暫くは、ナディアのデザート無しにしよう。可哀想になって出しちゃうんだろうけどね。

その後は何事も無く過ぎ、いよいよ出発の日となった。皆で冒険者ギルドに向かい、ナディアのお別れを済ませたら、そのままの足で出発する。

カイル王国は良い国だった。いつか・・・この国に帰って来られるといいなぁ。