第58話 エミリア
エミリアに部屋へと招き入れられ、とりあえずソファーに座った。何故かエミリアはオレの上に座った。この娘、積極的過ぎやしませんか?
「ちょっと近過ぎるんじゃないかな?」
「あら?嫌ですか?リノアさん程ではありませんけど、私もそれなりのものだと思いますよ?」
「それは・・・否定出来ないかな・・・。」
またしてもオレの首に両手を回し、今度は立派なメロン、いや、スイカを押し付けて来る。この世界の要人には美人が多すぎるだろ!しか~し、だがしかし!最近美人耐性さんのレベルが上がったのか、オレは平然としている。ように見えるだろ?ただのやせ我慢さ!息子のジョンは、今にも飛び出しそうだぜ!!
「あら?うふふ。そんなに我慢しなくて構いませんよ?この部屋は防音が施されていますし、私を訪ねて来る人もいませんから。・・・ね?」
「そ、それよりもエミリアさんの目的を教えて貰えないかなっ!?」
マズイ、声が裏返ってしまった!美人耐性さん、頑張って!目的を聞き出すまでの辛抱ですよ!!
「つれないですね・・・あ、まだ飲み物も出していませんでしたね!?紅茶でよろしいですか?」
「え?はい・・・。」
助かったぁ!オレの意思に反して、ジョンが襲い掛かる所だった。うっ!ちょっと涎を垂らしてるな!?全く、困った奴だ。
出来る限りアホな事を考え、オレはエミリアから意識を逸らす。今思えばこれが良くなかったんだよ~!もっとエミリアの行動に注意していればあんな事には・・・。
「はい、どうぞ。冷めないうちに召し上がって下さいね?お代わりもありますから、遠慮せずグイっと!あ、私も飲みましょうか?ごくごく、ふぅ。ほら、いっちゃって下さい!」
「そ、そう?じゃあ、頂きます。」
ちょっと不思議な味がしたものの、汗をかいた為に喉が渇いていたので、お代わりを貰って飲み干す。さぁ、いよいよ本題に入って貰おうじゃないか。もうオレの膝の上に座られるのにも慣れましたよ。
「私の目的は、神を探す事です。リノアさんのあまりの美しさに、女神様ではないかと探っていたのですが・・・リノアさんからは匂いがしませんでした。」
「神を探す?いや、匂いって何?」
「我々聖女には、神の匂いを嗅ぎ分ける能力があるのです。仕組みはわかりませんが、匂いを嗅げば、神かどうかがわかると伝えられています。」
「それはまた・・・・・何の為に?」
「勿論!神を探し出す為に決まっています!」
神を探し出す能力ねぇ・・・神を殺して力を奪うとか?そんな話は聞いた事ないけど。
「見つけてどうするの?何かに利用するつもり?」
「神を見つけて、私を召し上がって頂きます!!」
「・・・・・あ?」
「我々聖女は神に仕え、誠心誠意ご奉仕する存在です!身の回りから夜のお世話まで!!崇高なる神に満足して頂き、私も満足出来るなんて、最高じゃありませんか!おっと、涎が・・・。」
「神の奥さんになりたいって事?」
「違います!愛人、いえ、性・・・肉奴隷にして頂きたいのです!」
「あ、あぁ、そうなの・・・・・オレ、もう帰るね?」
これはカレンが関わりたくなかったのも頷ける。女性同士じゃ・・・ねぇ?しかも学園長と同じ香りがする。一刻も早く、この場を立ち去るべきだ。しかし、エミリアにガッシリと捕まえられる。
「ルーク様からは神の匂いがします。この匂いを嗅いだ時から、耐えられなくなって・・・」
「そ、そうなの?それは・・・誰か別の人にお願いしたら?オレにはその気がな・・・あれ?」
「ようやく効いてきましたね?どうですか?」
「体が熱くなって・・・・・紅茶に何を入れた!?」
「我々聖女に受け継がれる、神と聖女にのみ効果を発揮する特製の媚薬です。私も熱くなってきました。さぁ、寝室はこちらです。あっ!そんな!!こんな所で!あぁ~ん!!」
薬の効果が切れるまでジョンの暴走は続き、日付が変わる少し前。急いで着替えたオレは、生活魔法を唱えてから慌てて城へ転移した。違う部屋に転移すれば、皆に気付かれる心配も無いだろう。
なんて考え、オレの嫁さん達はお見通しさ!違う部屋で待ち構えてましたよ?現在、自発的かつ無言で正座しております。
「ルーク?今まで次期聖女様と何をしていたのですか?」
「す、スフィアさん?エミリアからは事情を聴いて・・・」
「服も着ずに?」
「え?服ならちゃんと着て・・・まさか!?」
ナディアの言葉に、人生3つ目の坂と向かい合ったオレは、残像を残したのではないかと思う程のスピードで振り返る。そう、オレの後ろには、生まれたままの姿で座っているエミリアがいたのだ。
「ど、どどど、どうして!?ままま、まさか、付いて来ちゃったの!?」
「『付いて来ちゃったの!?』じゃありません!!」
「ぷぷっ!今の似てるぅ!ちょーウケるー!!」
「ルークは黙ってて!さぁ、次期聖女様、説明して頂けますよね?」
スフィアによるオレの物真似の完成度が高く、思わず茶化してしまった為に叱られてしまいました。その後、エミリアの口から今回の顛末を聞き、納得した奥様方からは許して頂けましたが、暫くの間はご機嫌とりに必死でしたよ。
エミリアに関しては、オレの愛人になるといって譲らなかったそうで、皆は諦めて認めたそうです。今後、身の回りの世話もすると言って張り切っているらしいので、身の危険を感じます。
でも、スイカだよ?オレはメロンよりもスイカが好きだな。
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