第12話 王都ファーニス
出立から5日、オレ達は王都ファーニスへと到着した。
最初に立ち寄った村で聞いたが、街道を15日程歩くと着くとの事だった。
ティナは野営に慣れている様子だった為、別に15日掛かっても問題は無かった。
食料以外は…。ティナさん、貴女食べ過ぎです。
魔物や獣を狩って食料にしても良かったのだが、調味料も調理道具も無い。そんな状態での食事となれば、焼くか生で食べるしかないのだ。15日×3食を肉のみというのは、いくら若い体であってもキツイ。
なので、ティナと相談して真っ直ぐ進んで来た。魔物の蔓延る山を、資金と食料調達を兼ねて…。お陰で、見た事も無い魔物と数多く遭遇した。デカイ狼とか熊とかドラゴンなんかも。
この世界では魔物の体内にある魔石を魔道具に利用する為、それなりの高値で取引されているそうだ。腐る程いるゴブリン等は安値との事だったが、それでも数が揃えばそれなりの値段になるはず。そう思って、遭遇した魔物は例外無く狩った。素材になりそうな部位や解体の仕方は、ティナが説明してくれた。解体する手際は良いのに、料理は残念というのは不思議だった。でも、そんな事は言わない。誰にでも欠点はあるのだ。それに、オレとティナは夫婦となる予定である。お互いに補い、支え合ってこそ良い夫婦と言えるだろう。そう思おう。
そうして現在、正確には王都に入る為に並んでいる。入る際には身分の確認と、金を払わなければならないらしい。やり方がセコイし面倒くさいが、不承不承従うしかないだろう。別に争いを好む訳でもないのだから。
そんな事を考えていると、兵士に声を掛けられた。
「1人銅貨1枚となります。それと、身分証も提出して下さい。」
「はい、どうぞ。それと、彼は身分証を持っていないのですが…。」
そう、オレは身分証なんて物を持っていない。ティナは一体何を渡したのだろうか?
「そうですか。それではこちらの魔道具に手を触れて下さい。これは、犯罪歴を調べる為の物ですので、身体に害はありません。魔道具での確認が済みましたら、この用紙に必要事項を書いて下さい。それと、仮の滞在許可証を発行しますので、銀貨1枚頂きます。何処かで身分証明となる物を発行して貰って、1週間以内に提出しに来て下さい。期日を過ぎますと、発見次第追放となりますので注意して下さいね。」
犯罪歴を調べる魔道具なんて物が存在するのか。便利なものだ。それよりも、身分証明となる物?話について行けないので、魔道具に触れてから銀貨1枚を渡し、必要事項を記入しようとすると、ティナの身分証を見た兵士が驚きの声をあげる。
「ラ、ランクS!?あ…失礼しました。」
ランク?じゃぁ、さっき渡したのは冒険者ギルドのカードって事か。戸籍なんて仕組みも無さそうだし、冒険者ならギルドが身分を保証してくれるって事なんだろうな。あとでティナに聞くとして、まずは必要事項を記入する。
「はい、もう行って良いですよ。改めまして、ようこそ王都ファーニスへ。」
「ありがとうございます。」
オレは対応してくれた兵士達に礼を告げ、ティナとともに街へと入る。まずは宿と食事の確保に向かうのだが、道中でさっきの事について聞いてみる。
「さっきのは冒険者ギルドのカード?身分証になるの?」
「えぇ、そうですよ。個人の特定等が簡単だから、という事のようですね。」
「冒険者じゃない人は?」
「ギルドは冒険者だけではありません。商人や職人にもギルドはあるんです。誰しも何らかの仕事をしますから、自然と何処かのギルドに所属する事となります。」
「じゃあ、オレも明日登録してこようかな。」
「色々と説明も必要でしょうから、明日冒険者ギルドへ行くまでに説明しますね。」
「お願いします。じゃあ、まずは食事と宿の確保だけど…。」
「宿にも食堂は有りますので、まとめて済ませた方が楽ですね。」
「どんな宿にする?」
「あまり安い宿は色々と危険ですから、それなりの宿の方が良いでしょうね。」
「それなら最初はティナに任せるよ。」
「でしたら、昔利用した宿にしましょう。」
冒険者として活躍してきたティナの方が知識はあるのだから、オレは黙って頷きティナの後を付いて行く。こうして宿で食事を摂ったあと、部屋で冒険者に関する説明を聞くのだった。
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