第33話 女王の野営1
予想外の出来事に女性達は驚愕し、あまりの恐怖に硬直してしまったようだ。
ワイバーン達は息を大きく吸い込み始めているので、ブレスを吐くつもりだろう。今からでは回避も無理っぽいので、ブレスに耐えられる強度の防御魔法を展開する。
「アイスウォール!全員そこを動くな!!」
「え!?あ、る、ルーク様!!」
「セラさん、お願いですから、全員その場を動かないようにお願いしますね?」
セラさんだけが正気に戻ったので、ブレスが迫る中、ウィンクしながら優しく微笑みかけてお願いする。スマイルは0円です!
眼前のブレスを刀で切り裂き、魔法を放つ為に集中する。
「偉そうに見下ろしてないで降りて来てもらおうか?ウィンドカッター!」
片翼を切り落とせば落ちるだろうが、魔法の訓練を兼ねて両翼を切り落とす。放つ魔法の数が増えると制御が難しくなる。ジャグリングと同じ感じ?
数匹狙いが外れたり、少し傷をつけた程度だったので、オレの腕もまだまだである。
全てのワイバーンが落下したせいで、振動が大きかった。そこまで考えていなかったので、次回はその辺も考慮出来るようにしよう。反省終わり!あとは首を刎ねるだけなので、さっさと終わらせてしまおう。
「す、凄い!ワイバーンの翼を易々と切り裂く魔法を使えるなんて!!」
「あっという間に、あれだけの数の首を刎ねてしまうだなんて・・・。」
「す、素敵!」
「遊びでもいいから抱かれたい・・・」
「夜這いに行って、既成事実を・・・」
若干変な事を言われているような気がしたが、相手したら危険だ。襲われてしまう。兎に角目を合わせないよう、倒したワイバーンをアイテムボックスに収納する。色々と騒ぎになり、宥めて説明を終える頃にはお昼を大分過ぎてしまっていた。
昼食を摂る間もなく街道まで移動し、現在は夕飯の準備中である。昨日よりも時間がある為、お昼を抜いた分、多めに料理を作っている。他の団員達に怪しまれている為、シェリーさんと2人きりではない。
野営での暖かい料理にもほとんどの団員達は慣れた様子で、大騒ぎする事はなかった。女王陛下と護衛の2人は終始騒いでいたが。その後、昨日は無かったデザートを出したところ、今度は全員が大騒ぎしていた。美味しそうに食べて貰えるのは、本当に嬉しい。ちなみに、作ったのはバウムクーヘン。キャンプでも作れるので、野営向きだろう。
皆で楽しく夕飯を済ませ、後片付けを終えて騎士団の皆と談笑していると、女王陛下が近付いて来た。
「お話したい事があるのですが、よろしいでしょうか?」
「えぇ、構いませんよ。」
「・・・・・場所を変えて頂きたいのですが?」
「ここでは話せない内容ですか?」
「女王が人前で簡単に頭を下げる訳にもまいりませんので・・・。」
それもそうか。例え周囲がわかっていたとしても、実際に見せるようなものでもないだろう。
「気が利かなくてすみません。では、行きましょうか。」
「ありがとうございます。それでは着いて来て下さい。」
女王陛下の後を歩いて行くと、大きなテントが見えて来た。ま、まさか、流石に昨日のような展開にはならないよね?
中に入ると、セラさんとシェリーさんが正座していた。寧ろこれって、もっとマズイ事態になるんじゃ・・・。とりあえず、セラさんの隣に正座してみる。叱られた訳ではない。・・・まだ。
「さて、此度は我々の危機を救って頂き、ありがとうございました。」
「へ、陛下、頭をお上げ下さい!当然の事をしたまでですから!!」
本当に頭を下げるとは思わなかった。密室に連れ込む為の口実なんじゃないかと思った自分が情けない!評価を改めよう。女王陛下は素晴らしい方だ。
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