第47話 王達との会食と

クリミア商国にある世界政府本部。その内部にある議事堂では、現在世界政府の緊急会議が執り行われている。議題は勿論『アルカイル帝国の壊滅と新帝国の設立』である。


何故クリミア商国に世界政府本部が置かれているのか聞いてみた所、『商人とは中立が基本だから』との事であった。儲かる方に傾きそうであるが、口にすると目をつけられそうなので控えた。


その会議の場に、ルークはいない。目立ちたくないのと、国家運営はスフィアが行っていると印象付けるのが狙いである。会議というよりも、壊滅と新国家設立までの流れを説明していると言った方が正しい。長くなるので割愛するが、基本的には清聴ムードだった。だが、新国家の名称を告げた途端、議会は紛糾したそうだ。


口で説明しても埒が明かないと判断したスフィアはオレとカレンを引き連れ、現在は議事堂の中央にいる。ちなみに、世界政府本部には転移魔方陣が置かれている。今回のような緊急時に、迅速に招集する為との事だった。


スフィアの横に、少し不機嫌なオレ、相当不機嫌なカレンが立っている。お陰で議事堂内は静かなものだ。黙っていても時間の無駄なので、オレとカレンが口を開く。


「皆さんお久しぶりですね?この私を呼びつけるとは、素晴らしい度胸を持っていると感心してしまいます。」

「カレン、少し冷静にね?えぇと、私はルーク=フォレスタニア。この度、新帝国の皇帝となった者です。政治については婚約者のスフィアに一任しておりますので、彼女が申し上げた内容が全てです。抗議や苦情についてはスフィアに、荒事に関しては私か婚約者のカレンがお引き受けしますので、いつでもお越し下さい。・・・・・自国が滅びても構わなければ、だがな?」


誰も声を発しなかったのでオレとカレンは王城へと戻り、途中だった夕飯の支度を済ませる。料理の最中に呼ばないで欲しい。暫くするとスフィアが戻って来た。後ろに数人引き連れて・・・。


「ただいま、ルーク!お陰でフォレスタニア帝国で決まったわよ!あ、それとルークにお客様。」


「久しいのぅ、ルーク。いや、ルーク皇帝陛下、かの?」

「お久しぶりです、フィリップ国王陛下!」


ニヤリと笑みを浮かべながら手を差し伸べて来たカイル王国国王陛下と握手を交わす。それ以外にも数名いるが、先に相手の方から自己紹介があった。


「初めましてルーク陛下。私はクリミア商国の国王、ラトムズ=メイウェザーと申します。何卒ごひいきに。」

「わらわはベルクト王国女王、アナスタシア=アルヴァンス=ベルクトじゃ。よろしく頼むぞ?」

「私はスカーレット共和国国王、ブライ=ファロン=スカーレットと申します。皇帝陛下におかれましては、ご機嫌麗しく存じます!」

「は、初めまして。フォレスタニア帝国皇帝、ルーク=フォレスタニアです。若輩の身ではありますが、何卒よろしくお願い致します。」


各国の王が何の用だ!?っていうか、スカーレット共和国の国王、腰低すぎじゃね!?思わずオレまで口調が変わっちまったよ。


「皆、お主に興味があると言ってのぅ、スフィア殿に頼んで連れて来て貰ったのじゃ。急に押し掛けてすまんのぅ。」

「フィリップ陛下、私は構いませんよ。折角ですので、皆さんもご一緒に夕食を召し上がりませんか?」


全員が嬉しそうに頷いたので、急いで支度を済ませる。その後、歓談しながら夕食を終え、クリミアとベルクトの王達は業務が残っていると早々に帰って行った。この場には、オレ、スフィア、フィリップ陛下、ブライ陛下が残っている。


「今日は本当にすまなかったのぅ。実はブライ陛下がお主に話があるそうでな?ワシはお主に話を聞いてもらおうと思って残ったのじゃ。クリミアとベルクトの2人も帰った事じゃし、ワシも戻るとするかのぅ。すまんが、何とか力になってやってはくれんか?この通りじゃ。」

「頭をお上げ下さい、陛下!私に出来る事であれば協力しますので!!」

「そうか?ありがたい。では、ワシは戻るとするぞ。ブライ陛下、あとはお主次第じゃ。」

「フィリップ陛下、ありがとうございました!!」


フィリップ陛下を見送り、ブライ陛下と共に、小さな会議室へと移動する。あまり遅くなってはマズイだろうと、オレから話を聞き出す事にした。


「それで、お話とは何でしょう?」

「はい。実は・・・いえ、その前に、我が国の事はご存知でしょうか?」

「すみません、正直に申し上げると、最近住んでいた辺境の村を出たものでして・・・地理や他国の情勢には疎いんですよ。」

「そうでしたか。では、その辺から説明させて頂きます。我がスカーレット共和国は、ここから北西に位置する、山間の小国になります。資源や名産も少なく、他国に多くの者を嫁がせて援助して貰いながら今に至ります。美人が多いのが救いでした。」

「それは・・・今まで良く保ちましたね・・・。それで、何か問題でも?」


昔、田舎の親戚から聞いた、外国の嫁を貰った家は、嫁の実家への仕送りが大変だと聞いた事がある。それと同じ事だろうな。少し呆れてしまった。


「そうですよね・・・。実は、第二王女のリノアなんですが、世界一の美女と呼ばれておりまして・・・これまで援助してくれていた国が、リノアを寄越さなければ援助を打ち切ると言い出したのです。これから冬を迎えるに当たり、援助無しでは国民の安全が約束出来ませんので・・・。」

「はぁ・・・それは酷い。」

「えぇ。とりあえず、リノアはシリウス国際学園に通うので、卒業までは無理だと断っているのです。」


何だか雲行きが怪しくなって来た。ここは1つ、先手を打とう。


「それは災難ですね。私には美人の婚約者が沢山おりますので、そういった事を言う者の気持ちは理解出来ませんよ。はははっ!」

「っ!?」


ブライ陛下、この世の終わりみたいな顔をしないで貰えません?可哀想なので、少し助けてあげよう。


「私は女性達に対して、出来るならば愛する人と結ばれて欲しいと思っています。他国の方針に口出しするつもりはありませんが、今回の話はリノア王女殿下が気の毒に思えましたので、ブライ陛下のお力になっても構いませんよ?もちろん嫁はいりません。」

「ほ、本当ですか!?」

「はい。ですが、無償という訳にもいきませんので、何か名産となりそうな物の開発に携わらせて頂きたいです。ですが、私も学園に通う事になっていますので、少し先の話になってしまうと思います。勿論、それまでの間も援助はさせて頂きますのでご安心下さい。」

「・・・ありがとうございます!!」

その後、具体的な話はスフィアとしてもらい、終わったのは深夜となってしまった。


「それでは、ブライ陛下。何かありましたら、気軽に言って下さい。あ、女性を要求するような輩の援助は断って頂いて構いませんよ?」

「スフィア陛下、ありがとうございます!!ルーク陛下も、本当に助かりました!」

「いえいえ。それではブライ陛下、名産の開発でお邪魔出来る日を楽しみにしています。」


何度も頭を下げるブライ陛下を見送り、スフィアがオレにご褒美を要求してくる。


「ルーク?私、凄く頑張ったと思わない?あぁ、疲れたなぁ!」

「そうですね~。頑張りましたね~。はいはい、わかりましたよ。」


こうして深夜、スフィアの願いを叶える為に頑張りましたとさ。

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